07 こんな世界もう嫌だ
「......もうヤダこの世界」
美月麗羽は生まれて初めて人生に絶望していた。魔法が使える世界に転移した時1番楽しみにしていた事は何だったかと問われたら、迷うことなく魔法を使う事だった。
しかし、今はもう魔法を使いたくない。
人間は魔法を使う為に魔素を体に取り込み、丹田にて魔力に変換して、作り出した魔力をお尻に蓄える。
そして、お尻に蓄えた魔力を魔法として発現させるためには排出口という特別な器官が必要なのだと言う。
ドラゴンはその排出器官が口にあり、ドラゴンが放つ魔法はブレス。人間が放つ魔法はオナラという。
......どうしてそうなった。
人間の生態系がそう言った関係上、お尻には鎧がつけれないらしい。うるさいヨ、マジで魔法使うなクソが。と美月麗羽の心は腐り始めていた。
それどころが普通の布でもダメらしく、お尻の部分には特殊な繊維で編み込まれた装備が必要になるらしい。そしてその装備ハッキリ言って黒い全身タイツなのである。
律儀にも王様たちは美月麗羽の全身タイツもすでに仕立て終え、勇者の装備品として1級品が支給されていた。
美月麗羽はその体ピッタリの全身タイツを目にしたショックで人生に絶望を感じていたのである。
それもそのはず、現在進行形の思春期の美月麗羽にとって、身に着けるものとは自分を表すものと言っても過言ではないのだ。
艶のある手入れされた黒髪も、メガネも、乱れのない衣服の着こなしもそのすべてが美月麗羽を形作る。
今は少しでもキレイに見せたい年頃なのに、全身黒タイツを着るなどプライドがそれを許さない。
「異世界なんて要らない、日本に帰りたい......日本に帰りたいよ」
美月麗羽は日本という言葉に1つの希望を思い出す。神様からもらったスキルだ。スキルは日本にあるモノをここに召喚できるというスキルらしい。
実際には召喚というのは日本からモノを転位させるものではなく、日本にあるモノの情報をコピーしてこの世界で魔力で具現化するものだという。
詳しい原理や仕組みはわからないが、そういうモノだと使い方さえわかっていれば良い。スマホだって中身がどうなっているのか全く分からないが使う事だけならできる。そういう事である。
美月麗羽が考えたのは魔法のない地球では、魔法が使えない代わりの攻撃手段が多くある事である。銃なんて扱ったことはないがその破壊力は魔法に引けを取るものではない。
希望を見出して目の前が明るくなった美月麗羽はさっそくスキルを発動する。スキルの名前は美月麗羽が提案した通り『ネットショップ』となっていた。




