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04 私の剣の実力


 訓練場に無事辿りついた美月麗羽はお尻の事は一旦忘れて目の前の人物に集中する。訓練場について早々にひとりの兵士と向き合う形で木剣を手渡された。


 剣など扱ったこともない美月麗羽だ。神様からもらったスキルはネットショップ系のスキルであり戦闘には何の期待もできない。

 いくら勇者補正のステータスがあったとしても異世界に来たばかりの美月麗羽が経験値を獲得しているわけもなく、レベル1の状態で兵士相手に上手くやり合えるとは思っていなかった。

 しかし持ち前の頭脳と運動神経で相手からできるだけ多く剣の扱い方を学びとるつもりで集中していたのである。


 兵士からは攻撃するつもりはないようで、美月麗羽に打ち込んでくるように言って来た。それならと、美月麗羽は両手で強く握りしめ上段から剣を振り下ろす。


「ずっと力を入れるのではなく、剣が当たる瞬間にグッと力をいれて」


 兵士は指導を得意としているのか、美月麗羽が欲しい情報を逐次提示していく。


「大振りは速く腕を動かしているつもりでも剣速は遅く隙が大きい。もっと脇を締めて体を捩じって腰で振るう感覚で」


 美月麗羽は流石勇者と言ったところか、剣を一振りするごとに剣速は徐々に早くなり、体の動かし方が洗練されていく。


「その場に棒立ちにならずに足を使って」


 初めは剣の振るい方だけに意識を奪われていたが訓練場は奥行きもある。美月麗羽は空間認識を改めた事で視野が一気に広がったのを感じた。


「1撃で倒せない相手は、相手から無理な態勢を引き出して重心を崩して隙を作る」


 美月麗羽の良いところはその真面目さにあるだろう。柔軟に意見を取り入れそして否定することなく実際に試してみる。

 

 上段からもう一度剣を振り下ろし、兵士はそれを受け止める。美月麗羽は剣をうけられるとすぐさま力の向きを変え剣を滑らせて、兵士の顔に向かって突きを放つ。


 兵士は間一髪のところで頭を大きく傾けて突きを躱すが、重心を大きく傾けた隙を美月麗羽は見逃さなかった。力強く地面を踏ん張り兵士の剣を巻き込むように払う。


 兵士の剣は手からはじき出されるように宙を舞った。


「そこまで!」


 美月麗羽はいつの間にか呼吸を止めてしまっていた事に気付き、大きく深呼吸して体から力を抜いた。


「いやはや、素晴らしい才能です。みるみる動きが洗練される様子に度肝をぬかれました」


「あなたの的確なアドバイスのおかげです。ありがとうございました」


「お褒め頂き光栄です」


 美月麗羽自身もイメージ通りに動く体に感心していた。


(まるで羽が生えたみたいに体が軽い)


「ふぉふぉふぉ! さすが勇者さま。素晴らしいの一言!」


(どうやら王様の評価もちゃんと得られたみたいね)


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