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第五話 最初の依頼とエルの裏の顔

少し恥ずかしい思いをしたが、このままでは話が進まないので、早速依頼を探すことにする。

俺たちの冒険者ランクはFなので、Fランク向けの依頼書が張り出されているクエストボードの前に立つ。

「ふ〜む、結構な数の依頼があるな。」

「それはまあ、依頼が少なかったらランクが上がらないどころか仕事がないわけだしね。」

エルとそんな会話をしながらも、俺は初依頼にうってつけな依頼書を探す。

様々な依頼書があるが、とりあえず候補に挙げた依頼はこんな感じだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


《ケアール草10本の採取》

依頼主:錬金術師ギルド

受注条件:なし

報酬:1500グリム

昇格点数:1点

《依頼主からのコメント》

下級ポーションの材料であるケアール草の補充のために、冒険者の方々にケアール草の採取をお願いしたい。

新鮮なケアール草が必要なため、街中で市販しているような鮮度の落ちたのケアール草は納品しないようお願いする。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


《ゴブリン3体の討伐》

依頼主:冒険者ギルド

受注条件:なし

報酬:3000グリム

昇格点数:3点

《依頼主からのコメント》

繁殖力の強いゴブリンの異常増殖を防ぐため、少しずつではありますが、ゴブリンの討伐のご協力をお願い致します。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


(まあ、最初の依頼には定番って感じの依頼だな。というか、討伐依頼の報酬高いな。やっぱり危険度が高いからなのか?まあ、とりあえずエルと相談してみるか。)

まさにテンプレというべき依頼を候補に選んだ俺はエルとどちらを受けるか相談することにする。


「エル、俺が候補に挙げたやつだけど、ケアール草の採取かゴブリン3体の討伐、どちらを受ける?」

「僕ならケアール草の採取を選ぶかな。魔物と戦う必要はないから危険度は低いし、万が一遭遇したとしても逃げればいいし。(ボソッ)まあ、そんなときにコーイチが良い囮になってくれそうだし…………」

「ん、最後になんか言っt「別に何でもないよ?」お、おう………まあ、そう言うなら薬草採取のほうを受注してみるか。ゴブリン討伐はそのあとにしよう。」

エルが最後になんか言ったような気がするが、そんな細かいことを気にしてても何も始まらない。

俺はクエストボードから『ケアール草10本の採取』の依頼書を引っ剥がし、受付へ持って行く。


「すみません、この依頼を受注したいのですが……」

「はい、確認いたします。……『ケアール草10本の採取』ですね、承りました。それでは、この依頼について説明させていただきます。」

依頼書を確認した受付嬢さんが、今回の採取依頼の詳しい説明をする。


「この依頼で納品するケアール草はこの近くだと、この街の西の方角にあるセレシア大森林に生育しています。そして、ケアール草の見た目なんですが……」

受付嬢さんは机の引き出しから何やらファイルのような物を取り出し、白い花を咲き、長い葉を伸ばした植物の写真が載ったページを開いた。

「このように、白い花と長い葉が特徴的な植物なので、それほど見つけるのは難しくありません。」

「なるほど、これだけ特徴があればすぐに見つかりそうだな………」

俺はファイルのページに貼り付けられたケアール草の写真を見て、ケアール草の姿形をしっかり記憶しておく。


「ただ、ケアール草の生育地は比較的危険度が低いエリアではあるのですが、ゴブリンやレッサーフォレストスパイダーがたまに出没するので油断をしないでくださいね。」

「わかりました。」

受付嬢さんから注意点を教えてもらった俺は早速エルとともにセレスティアから西にあるセレシア大森林へと向かった。



◆ ◆ ◆



「ここがセレシア大森林か………結構薄暗い森だな………」

「それは仕方ないさ、この森は世界で最も早く育つ木と言われるセレシア樫で成ってるからね。木こりが伐採しても伐採してもすぐに生えてくるうえにとんでもない早さで育つから、大きく成長したセレシア樫の木の葉が邪魔して太陽の光が届かないんだよ。」

「流石に生命力が異常すぎないかセレシア樫!?」

セレシア樫の異常なまでの生命力に驚くが、本来の目的の薬草採取を忘れてはいけない。

俺とエルは周囲を警戒しながら森の中へ入っていく。


しばらく進んでみると、ある程度日光が届く開けた場所にたどり着いた。

「太陽の光が届いてるね。ここならケアール草が生育してかもしれない。探してみようコーイチ。」

「わかった。」

エルの提案で俺たちはここでケアール草を探してみることにした。

(植物なら日光がしっかり当たっているところに生えているかもな。えっと、ケアール草ケアール草………)


俺が日光が比較的強く当たっている場所を重点に探していると、少し先に白い花を咲かせた長い葉を持つ植物を見つけた。

今回の依頼の品、ケアール草だ。

「お、あったあった。」

ケアール草を見つけた俺は早速それを採取しようとそこへ向かう。

そんな時だった。

「うぉぉっ!!?」

俺の足が急に膝の高さまで沈んだ。

「な、なんだこれ!?俺の足が膝まで沈んでんだけど!?」


俺が焦っていると、通知がひとつやってきた。

《底なし沼に足を突っ込みました。ULP(アンラックポイント)を2獲得しました。》

「はぁぁ!?底なし沼!!?」

どうやら俺は底なし沼に右足を突っ込んでしまったらしい。

「ヤバい、早く足を抜かないと!」

俺は沼にはまった足を引き抜こうともがく。

しかし、逆に俺の足はどんどん沈んでいく。


「ちょ、待って待って待って!?このままじゃ全身沈むって!!エルぅぅぅ!助けてくれぇぇぇ!!」

このままではマズイと感じた俺はエルに助けを求めた。

「どうしたんだいコーイチ………ってあらら、底なし沼にはまっちゃったのか。こりゃ不幸だったね。」

「本当に不幸だよ!これ絶対仲間がいなかったら詰んでただろこれ!あとエル、早く引き上げてくれ!このままじゃさらに沈んでくから!!」

そう話しているうちに俺の足は太もものあたりまで沈んでいた。


このままでは本当にマズイことになってしまうのだが、何故かエルは沈みゆく俺の姿を眺めている。

「………あの………エルさんや?早く引き上げてくれないかな?本当にヤバいからさ?いやなんでさっきから眺めてるの!?マジで早く引き上げてって!!?」

何故か俺の危機的な状況を眺めているエルに困惑しながら、俺は助けを求めた。

だが、何故か彼は恍惚な笑みを浮かべている。

「そんなに引き上げて欲しいの〜?」

「何その怖い笑顔!?というかいいから早く引き上げてくれって!!?」

「ふ〜ん………?」

不気味に笑みを浮かべているエルが顔を近づけてくる。そして、エルはこんな状況に明らかに不相応なことを言い出した。


「ならコーイチ、そんなに引き上げて欲しいならさ、何か奢ってよ?それなら引き上げてあげるよ。」

「はぁ!?こんなときに何言ってんだお前ぇ!?いいから早く引き上げろぉ!!!」

エルは何かを奢れば引き上げると言ってきた。もうめちゃくちゃだ。一体こいつは何がしたいのだろうか。

「あれぇ?そんな命令みたいな言い方していいのかなぁ?いま君を引き上げられるの誰かなぁ?」

「わ、わかった!奢るから何か奢るから俺を引き上げてください!!」

流石にこのまま沼に沈んで溺死することはしたくないので、俺はエルの要求に素直に応じることにする。


「言質はとったよ?その言葉忘れないでね?」

そのあと、俺はエルに沼から引き上げてもらい、なんとかピンチを切り抜けた。

だが、助かったはずなのに、なんとも言えない疲労感が俺の体に押し寄せてくる。

恐らく精神的疲労だろう。原因は言うまでもないだろう。

そして、肝心の原因の彼はというと………


「ははは………やっぱり人の困ってる姿を見るとゾクゾクするよ………特にコーイチ、君の困ってる姿は面白さもあるからさらに虐めたくなるよ………!やっぱり君とパーティを組んで正解だったよ!あははは!」

糸目を見開き、何かゾクゾクしながら笑いをあげていた。その時、俺は確信した。


(こいつ……性格の悪いドSだ……………!!)


こうして、俺はエルのとんでもない裏の顔をその身を持って知ることになったであった。



◆ ◆ ◆



「よし、とりあえず目的のケアール草10本は集められたな。」

「思ったより早く集まったね。」

エルのドSムーブから十数分ほど経った頃、俺たちはケアール草を10本採取を終えた。

あとはこれを冒険者ギルドに納品すれば依頼完了である。


「それじゃ、早速冒険者ギルドに戻るとするか。」

そう言って冒険者ギルドに戻るために森から出ようと移動しようとした時、エルがやらかした。

「この先何も起こらなければ良いね。」

(おいそれフラグぅぅぅぅ!!?)

そして、そのフラグを回収するかの如く、俺たちの背後の茂みからガサガサと音がした。

俺がその茂みのほうへ視線を向けると…………

「「「「「ギャギャギャァァァァ!!!」」」」」


緑色の体色の醜い容貌の小人………ゴブリンが現れた。………………大量の仲間を連れて。

「ギョエエエエエエエエ!!?あんな数のゴブリンが出るなんて聞いてなぁぁぁぁぁぁぁい!!!!」

「これは流石に冗談抜きで不味いねぇ!!」

流石にあれだけの数を相手にすると、2人だけの俺たちは間違いなく全滅するので俺たちは全力疾走でその場から逃げ出した。

そして、こんな不幸が起きたということは………

《ゴブリンの群れに運悪く遭遇しました。ULP(アンラックポイント)を5獲得しました。》

「うるせぇぇぇぇ!!いまはULP(アンラックポイント)とかどうでもいいんじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!!!!」


こうして、俺たちはゴブリンたちから散々追いかけ回されながら森を抜け、冒険者ギルドでケアール草を納品する頃にはしばらく動けなくなるくらいヘトヘトになっていた。

お読みいただき、ありがとうございます!面白いと感じたら、高評価を是非ともお願いいたします!!m(_ _)m

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