不本意な転生
なろう初心者ですが、少しでも面白い作品になるように頑張っていこうと思います!
「突然だけど、アンタもう死んでるわよ?」
「…………………………………は?」
ただいま死亡宣告をされた俺の名前は「村上 幸一」。
世界一不幸な男として某世界記録に認定されると思うくらい、ほぼ毎日のように数々の不幸に見舞われている17歳の男子高校生だ。
そしてたった今、人生で一番の不幸を引き当ててしまったらしい。
俺は何故こうなったのか記憶を辿った。
時は十数分間前に遡る。
ー十数分間前ー
「……………ウッソだろオイ……………」
現在、ベッドから起き上がった俺の右手にはスマホが握られている。
そして、そのスマホには8:41という数字が刻まれている。
察しのいい方々はもうお気づきだろう。
スマホに刻まれている数字は現在の時刻である。
そして今日は水曜日…………そう、平日である。
10秒ほど思考停止した後、俺の思考が再び巡り……
「………大遅刻じゃねぇかァァァァァァァァァァァァ!!」
こうして、俺の悲鳴から俺の今日が始まった。
思いっきり寝過ごした俺は急いで制服に着替え、荷物を大急ぎで準備し、食パン1枚を焼かずにそのまま口に詰め込み、寝癖を直さず家を飛び出した。
だが、飛び出したのも束の間……
「モゴ!?モーゴモゴモゴモゴッゴ!?(ヤベ!?カード忘れちまった!?)」
俺は電車通学であるため、改札をスピーディーに通るためにカードは必須なのだ。
切符を買えばいい話なのだろうが、切符を買う手間がかからず改札を通れるカードは便利なのだ。
俺は飛び出した家の中に戻り、階段を駆け上がって自分の部屋に戻り、机の上にあったカードが入ったケースを鞄に突っ込み、先程の階段を駆け下りて玄関に走る。
「ぬぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
玄関を出て鍵を急いで閉めた俺は駅に向かって全力疾走した。
「キャインッ!!?」
しかし、どういう偶然か俺は運悪く、道中で野良犬の尻尾を踏んでしまった。
「ヴヴゥゥゥ……ワンワン!!」
「ギェェッ!?なんでこんな時にィィィ!!」
だが、俺は怒りに燃える野良犬に追いかけ回されながらも駅目指し、全力疾走する。
「うわっぷ!!?」
だがその直後、どっから飛んできたのか分からない広告チラシが俺の顔に被さり、俺の視界が塞がってしまった。
「ちょ、なんも見えない!!ってうわぁ!!?」
俺の視界が塞がった直後、俺は何かにつまづいてしまい、そのまま盛大にこけ、頭を地面にぶつけた。
そして、俺の意識は一瞬のうちに暗転した。
「なんつー死に方してんだ俺は………」
記憶を振り返った俺はなんとなく自分が死んだ理由を察した。
(野良犬に追いかけ回されたあげく、広告チラシで視界を塞がれた直後に盛大にこけて死んだって、なんて不幸だよオイ………)
「ぶふっ!いや〜、あ、あまりのこけっぷりに、お、思わず吹きだ、出しちゃったわ、あれは………ぶふぅっ!あははははははは!!」
そして、俺に死亡宣告してきた女は俺の死に様を何か面白い物を見たかのように腹を抱えながら笑っている。
(なんだこのゲスみたいな性格の女は……人の死を笑いやがって…………!!)
「あはは、ふぅ〜、自己紹介が遅れたわね、アタシはアルテナ。地球とは別の世界の管理をしている偉〜い女神様よ。アタシを信仰するならサインをあげたっていいのよ?」
アルテナと名乗ったこの女神は右手を口に当て、金持ちの夫人がオホホホと言うようなポーズをしながら自己紹介をした。
俺はその自己紹介を聞いて、なんとなく察した。
(この女神、絶対クズだろ。)
まるで自分が世界で一番偉い……いや実際神だから偉いんだろうけど、自分が神であるということに傘にして俺を見下している。
そして、さっき俺の死に様を笑ったのが決定的だろう。
「んで、その女神様がなんの用なんだ?」
「あら、反応が薄いわね……?アタシが神だって知った時に恐れ入るかと思ったんだけど……。まあいいわ。」
俺の反応が予想外だったのか、少し動揺した女神だが、それを気にせず俺に向かって口を開いた。
「んで、単刀直入に言うけど幸一くん、アタシの管理する世界に転生してもらうわ。ちなみに、その世界は剣と魔法のファンタジー世界よ。若者なら夢みたいだと興奮するでしょ?」
「……………………………はい?」
俺は意味が分からなかった。
何故、俺が女神の管理する世界に転生することになるのか。
いやまあ、別に異世界転生に興奮を感じないわけではないよ?
もしかすると女神の管理する世界が滅亡の危機に陥っていて、世界を救えるような人間を異世界からやむを得ず呼び出しているのかも知れない。
しかし、それにしては緊張感なくない?世界が滅ぼされそうになって焦っているような感じになるはずだと思うのだが………………
ここはひとつ、理由を聞いてみることにした。
「ひとつ聞いていいすか。何故、俺があんたの世界に転生することになるんだ?」
そして、そう言った俺に対して帰ってきた女神の答えは俺の予想を遥かに超える答えだった。
「ああ、それは“暇つぶし“のためよ。」
「……………………………は?暇つぶし??」
俺はその答えを聞いて更に意味が分からなくなった。
俺の異世界転生と女神の暇つぶしがなんの関係があるのか。
「えっと……“暇つぶし”って聞こえたんだが、何かの間違いか……………?」
流石にその言葉に耳を疑った俺は女神にそう言った。
「別に聞き間違いじゃないわよ?アタシのただの暇つぶし。」
聞き間違いではなかったことに俺は唖然とした。
そして、女神は話を続ける。
「いやまあ、ちゃんと正当な理由もあるのよ?世界の管理って重要な仕事だけど、神々は下界にあまり干渉できないから大してやることがないのよ。それだと暇で暇で仕方がなかったから何か面白いことがしたいなって考えてたのよ。そ•し•て…………」
「これ考えた私天才じゃない?」とでも思ってるような顔で女神は右手の人差し指で俺を指した。
「異世界の人間を自分の世界に転生させたらどうなるんだろうって思ったのよ。そして、偶然地球で死んだアンタを見つけて、地球からこっそりアンタの魂を借りパ………拝借して、アンタを異世界に転生させようってことよ。」
「いま「借りパク」と言おうとしただろ!?」と思ったことはさておき、俺は女神の言ったことに激しい怒りを覚えた。
「ふ、ふざけんな!!なんで俺があんたの暇つぶしで異世界に転生しなきゃならないんだ!世界を救うならともかく、あんたの暇つぶしのためって……というか、暇で暇で仕方なかったって、正当な理由でもなんでもないじゃないか!!!」
「おお、怖い怖い。でも、これは決定事項だから、大人しくアタシの管理する世界に転生しなさい。異論は認めないわよ?」
俺の女神に怒りをぶつけたが、彼女は聞く耳を持たない。
俺は「このクズには何を言っても無駄か」と思い、怒りに震えながら諦めた。
「んじゃ、これを持っていきなさい。」
女神は俺に一つの革袋を投げ渡した。
中には硬貨のような物が入っており、結構重量がある。
「その中にはアタシの管理する世界の通貨の銀貨が5枚入ってるわ。偉い女神様であるアタシからの餞別よ。」
(クズのくせにヤケに気前がいいな………。)
俺はクズ女神(以降そう呼ぶ)の餞別を顔をしかめながら受け取った。
「そんじゃ、アンタをアタシの管理する世界に転生させるわよ。」
クズ女神がそう言うと、俺の足元に何か魔法陣のような物が浮かび上がり、発光する。
そして、俺の体が浮遊し、光に包まれていく。
もうすぐ俺は異世界に飛ばされるのだろう。
もうヤケクソだが、俺はどんな過酷な異世界でも生き抜いてやると心から誓った。
「それじゃ、精々アタシの暇つぶしになるようにがんばってね〜」
「ちくしょう……何で俺がこんなことに……」
俺は自分の不幸に嘆きながら光に包まれ、どこかへ転移していった。
こうして俺は、不本意ながらも異世界で第二の人生を送ることになったのである。
お読みいただき、ありがとうございます!面白いと感じたら、高評価を是非お願いいたします!!