十歳の夏
「お誕生日おめでとう、マリアンナ」
「「「おめでとう、マリアンナ!!」」」
「あ……………ありがとう………存じます。お父様、お母様、お姉様方」
城の大ホールというには、こじんまりとしたホールは沢山の色取り取りの花が飾られ、明るく優しい日差しが入りこむ。
その一番目立つ坐席に恥ずかしそうに立つのは病弱のため十歳にしては随分と小柄だが、まさに天使のような少女………
銀色の煌めく髪、同じように銀色の長いまつ毛に縁取られた蜂蜜のように輝く金色の瞳。
白く柔らかそうな真珠のような肌にふっくらとしたピンク色の頬………唇もぽってりと果実のように瑞々しい。
誰もが笑顔の中、突然マリアンナの表情が固まり手からグラスが滑り落ちた。その衝撃でグラスが割れる。
「マリアンナ!!怪我は!?」
「大丈夫??マリアンナ??」
周りが騒然とする中、呆然とした表情のマリアンナ……………自分の手を開いたり握りしめたり…………そして周りを見渡す。
「………………マリアンナ?」
「あ……………お父………様?
私は…………」
マリアンナが不思議そうに国王に向いた瞬間、マリアンナの身体から突如ブワリと魔力が吹き出す。ドレスや銀色の髪が風に吹き上げられるようにうねる。
「な………………魔力暴走………だと?
魔石を………空の魔石を!!早く!!騎士団!!
いや………足りぬか…………魔道士たちも呼べ!!」
国王の叫びに、騎士たちが集まる。
騎士の持つ剣にはいくつもの魔石が埋め込まれている。
騎士の剣は魔石に魔力を込めることによって格段に性能が上がる…………その為、戦等に行く場合や騎士の大会などがある場合などは全ての魔石に魔力を満たすこともあるのだが、普段は一つか二つしか魔力を込めていない。
何故なら、魔石に魔力を込めるのはかなりの魔力量が必要な割に一月もすると魔石から魔力が抜けてしまうのだ。
魔力は貴重なため無駄には出来ない。
そのため、魔力暴走が起きた場合、騎士や兵士が近くにいれば剣の魔石で溢れる魔力を吸い取ってもらうのが一般的な応急処置となっている。
騎士たちが柄に入れたままの剣をマリアンナに向って掲げ呪文を唱えると、一瞬にして全ての魔石が輝く…………驚く表情の騎士たちが次々と入れ代わり剣を掲げる。
「……………なんとういう魔力量だ」
ホールにいた全ての騎士の剣の魔石が輝いた頃、マリアンナから吹き出す魔力も勢いが弱まってきた。
魔道士達も空の魔石を掲げる。
ホールにいた貴族たちも、危険な状況から脱したことが分かり、落ち着きを取り戻してきた。
「なんて魔力量でしょう?」
「大国の…………いや、あれは帝国レベルでは…………」
「しかし、どうして魔力暴走が………?」
暴走が収まり、気を失ったマリアンナが自室に運ばれていく。
魔力暴走は感情と魔力量の釣り合いが崩れた時に起こる。その為、魔力が増加する十歳から貴族たちは魔力の制御を訓練する。逆を言えば、十歳までは魔力は殆ど無いので魔力制御の訓練が出来ないのだ。
なのでマリアンナが何らかの理由で一気に魔力が増加した場合、制御するのは不可能であり暴走するのは仕方がないとも言える。
「伝説の聖女さまは、十歳の誕生日に神託により膨大な魔力を与えられた…………まさかマリアンナ様は…………」
貴族たちの間で、マリアンナが伝説の聖女の再来では…………と、まことしやかに語られるまでそう時間はかからなかった。
一方その頃マリアンナは寝台の中で頭を抱えていた。
「私………は…………第五王女…………マリアンナ…………うん、ちゃんと覚えてる
でも、私は……………日本の………大学生だった……………
もしかして……………この状況って、流行りの転生もの?
まってまってまって…………無理無理!!王女とか無理ぃぃぃぃ!!
あ…………でも、第五王女なら…………のんびり暮らせる…………かも??
私って病弱だし……………チートも無さそうだし……………
よし、のんびり平和に暮らすの目標!!」
そして数カ月後…………ちょっぴり性格の変わったマリアンナが、驚くべき知識と大量の魔力で国を豊かにしていく…………
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