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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

とある騎士達の、平和な休日

※乙女ゲームタグがありますがそれらしい表現は今作にはありません。

※ジャンルは迷った挙句VRゲームなので(なおそれらしい表現はない)VRゲームのジャンルにしましたが恋愛メインの短編です。

※後、BLです。

※以上が苦手だったり、嫌だったりする方は読まないことをオススメします。

「ラールードー! な、酒でも飲まないか?」

「……ヴィノ、いい加減にして、ボクだって暇じゃない」

「まぁまぁ、良いだろ、たまには恋人に付き合えよ」



 目の前の馬鹿こと酒好きな恋人――ヴィーノヴァン・ルコーリことヴィノはボクに抱きつきながら耳元でそんなことを囁くが、この恋人のたまには、というのは説得力がない。



「ほぼ毎日飲んで、ほぼ毎日誘って……どこが、たまになのさ?」

「ほら、そこはあんたがいないと面白くないだろ?」

「月に一回ぐらいは付き合ってるでしょ、それで満足してよ」



 呆れるぐらい酒が強くて、酒が大好きなヴィノは、よくボクに付き合えと言うが、残念ながらボクはあまり強くないし……言っちゃ悪いけどお互い酔うと止められないタイプだから次の日が大変なことになる。

 後、ボクは酔いが覚めても覚えてるタイプだけど、ヴィノは酔いが覚めると何をしてたかが九割方飛ぶ。

 ……まぁ、おかげでボクの恥ずかしい発言とかを大体忘れてくれるからその辺りはありがたいんだけど。


 一応、酒には強いから、酔っぱらうのに結構な量を飲まないと普通は酔わないんだけど…………元々度数の高いのをがぶがぶ飲むタイプだから思ったより直ぐに潰れる。

 しかも記憶が無くなると本当にすっぱり忘れてるから酔っていたとはいえ告白されたことすら完全に忘れてた時は、本気でぶん殴りたくなった。

 後、最後までしたのにその記憶が完全になかった時も正直嘘でしょと思った。


 ……ほんと、面倒くさいタイプで、家で一人酒を飲んでるだけなら良いけど、ボク以外を誘うのは絶対にやめてほしい、変に絡んできて、そのまま押し倒してあれやこれやと色々するタイプだからほんと困る。

 …………しかも当の本人は記憶が無くなるし、無駄に力は強いから抵抗できなくてもういいかなって気分になるし無駄にテクニックが良くて思い出すと恥ずかしいし……


 そんな風にボクが考えている恋人は、ぼんやりと考えるボクを見て、少しむー、と子供っぽく拗ねてる。

 ……あれ? 君ってそんなに子供っぽかったっけ……? ちょっとだけ違和感があって、その後嫌な想像をする。

 ……正直、何か嫌な予感が……



「……ねぇ、酒、入ってる?」

「あ? ……実はちょっと、な」



 悪戯がバレた子供みたいに、少しだけバツの悪い感じに視線を逸らすヴィノに、怒りよりも先に呆れた。

 ……何だかんだ言いつつ、ボクの可愛くて、カッコイイ恋人には勝てない。

 こういう可愛らしい顔をされるとため息一つで許したくなる…………というか本当は駄目なんだけど、どうせ覚えてないし良いかと思ってしまう。



「……あのさ、酒飲んだ状態で外に出るなって言ったよね?」

「んー? そうだなぁ…………でも、あんたがいないと寂しくて、な?」



 その表情が、その動きが、全部あざといと思える辺り、ボクはだいぶ目の前の男に毒されたようだ。

 ……この男との始まりは、どれぐらい前だったか、なんて少し思い出しつつ、ボクに抱きついている恋人を見る。

 確か、君と――ヴィーノヴァンと出会ったのは、もう、何カ月も前のことだった。



「……仕方ないから、部屋まで行くよ」

「おー明日は休みだからな、もっと俺に構え」

「あっそ」

「おいこら素っ気ないんだが?」



 むぅと微妙な顔をしてるヴィノの手を取り、そのまま進む。

 近かったヴィノの部屋へ入って、鍵をかけてソファーの辺りまで行って、テーブルに転がるいくつかの酒瓶を見て、頭痛がしてきた気がする。


 仕方なく、酒瓶を退かして、机の上を最低限使えるようにしてソファーは問題ないと確認する。

 後は適当に酒を冷蔵庫から出そう、どうせヴィノの部屋だし、酒は大量にあるだろうし。

 ……そういえば、昔も同じことをしたんだった、まだ、あったばかりの時、付き合ってなくて、ただのお兄さんみたいなイメージが強かった時、酔っぱらったヴィノを始めてみた時、全く同じことをしたなと。



「……なぁ」

「なにさ、っ――」




 ――いきなり呼ばれて、後ろを向こうとしたらソファーに押し倒された。

 ……そういえば、あの日もこんな感じだったな、なんてどこか冷静な自分がいるけど、なんだかこの後の展開が予想出来て、明日は動けなくなりそうだと引きつりそうな自分もいた。

 ボクのことを見ているヴィノは――



「――俺のこと、見ろよ」

「……見てるけど」



 何故か寂しそうだった。

 ……なんか昔も同じことした気がする。

 …………あぁ、そういえばあの日も酒が入ってたからヴィノは忘れたのか。


 こういう時はやっぱり記憶がないのは面倒くさい。

 だっていくら愛を伝えたって当の本人は覚えてないんだから、いっそ一回ぐらいは素のヴィノに酔っぱらったボクを見せてもいいかもしれない、多分恥ずかしくて仕方ないだろうけど。



「違う、もっと俺に構って、もっと俺の傍に居ろ、んでもって俺に甘えてろ」

「……なにそれ、というか……ヴィノ?」



 ……じっ、とボクを見るヴィノを見る、相変わらずのイケメンっぷりだとでも言えばいいんだろうか?

 葡萄酒色(ワインレッド)の髪に、緑色の瞳をしたヴィノは、休みだからラフな格好で、普段のザ・騎士様と言わんばかりの女性が憧れ、好きになるヴィーノヴァン・ルコーリはいない。

 ……ボクだけの、ヴィーノヴァン・ルコーリ――ヴィノの姿で、ボクにだけ見せるヴィノの素。


 そういえば……今更だけど、ヴィノって凄い属性あるよね。

 戦闘狂で、酒好きで、酔うと理性が切れるけど普段は優しくて年上系で、たまに無邪気に子供みたいにはしゃいで、普段の夜は優しいのに、酔うと獣みたいにがっついて、いつもボクのことばっかり心配して、自分のことは後回しにしてた。

 ……それに、この胸の傷を見た時だって、気持ち悪いじゃなくて、何があったって心配したんだから。



「……ラルド?」

「…………ヴィノ、ボクには、難しいけど」



 ぐいと、抱き寄せて、ソファーに二人で転がるみたいになる。

 流石に少し狭いけれど、でもやっぱりこの近さがボクは好きなのだけど、流石に本人に言うのは恥ずかしいから未だに言ってない。

 ……お互い酔っぱらってる時にしれっとヴィノとくっついてるのは好きとは言ったけど絶対忘れてる。


 まだ酒の入ってないボクには、ヴィノを口説くのは流石に恥ずかしくてキツイ。

 けど、一言だけ……その耳元に確かに囁いて――




「――愛してる、ヴィノ」









 ――その後、凄く嬉しそうな顔をしたヴィノに、ガッツリ愛されたのは、全部気のせいにしたい。

 読んでいただきありがとうございます。

 この作品に関してや前回の『珈琲は冷たかったけれど~』と『真冬の風は冷たかったけれど~』の続きに関して等は後でまとめて活動報告でお知らせしますので、もしも気になったらそちらに行ってください。

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