第三話 目を開けるとそこには…
今回もまた謎な点が多数身請けられると思いますが、どうか最後までお付き合い願います。
「……ッ!」
身体中に激痛が走る。
身体を起こそうにも動けずに金色の少年──アシュト=アルベインは目を開けた。
(お、俺は……?)
起きることも出来ず、今の状況を理解しようにも頭がついてこなく、困惑しているアシュトに声がかかった。
「おやおや?その傷でよく生きていましたね。運良く私が海の側を通った際に貴方がいたわけですが…」
声で男だということはわかった。
不思議と心地好い声で、アシュトはつい聴き入ってしまった。
声の主は此方が動けないということに気付いたらしく、足音が迫ってきた。
アシュトの目に映ったのは風に靡く(ナビク)銀色──。
肩まで伸びている髪を後ろで結び、自然と美しい──と思ってしまった。
「やはり、その傷ではまともに動くことは叶いませんか…。治してあげたいのは山々ですが、回復系は私の専門外でしてね」
困ったように微笑む男に対して、ようやくアシュトは口を開いた。
「あ…なた……は?」
口が上手く開かずに途切れ途切れになってしまったが、相手は意味を理解してくれたらしく、頷いた。
「当然の疑問ですね。…そうですねぇ、魔族とでも言っておきましょうか」
微笑む男の口から聴こえた単語──魔族。
その名の通り魔法を使う為に必要な魔の力を人間の数十倍は秘めている種族だ。
魔族といっても多様な種族がおり、一概に同じとは言えない。
「魔……族、…あっ…」
男の言葉を反芻した際に見てしまった衝撃の色。
銀髪にばかり気を取られていたが、その前髪の下には紅と蒼の宝石のような瞳。
───所謂、オッドアイだ。
「おやおや、見てしまいましたか、…やはり恐ろしいですか?」
見られた男は哀しげに微笑む。
「………れ…い」
「えっ?」
蚊が鳴くような声で呟いたアシュトに対して、聞き返す。
「綺麗……です」
感嘆するように再度呟いたアシュトの言葉に男は目を見開く。
「本気で言っているのですか…?」
魔族にすら言われたことが無い言葉。
──恐ろしい、災い、呪いの瞳…このような言葉しか投げ掛けられたことの無いこの瞳に対してこの少年は何と言ったか。
──"綺麗"
嫌われていたこの瞳に対してそんなことを言ったのは、彼や自分の唯一の相棒位だった。
「本当に綺麗…だと思います」
「面白いことをいいますね、貴方は。…そうですね、お礼と言っては何ですが、この瞳についてちょっとだけ教えましょう」
そう言ってアシュトに顔を近づける男。
「この瞳は魂の色が見えるんですよ」
「魂の……色…?」
いきなり言われた訳の解らない言葉に困惑するアシュト。
「そう。まぁ早い話がその人の人物像が判るというわけです」
「…?」
続けられた男の言葉についていけずに──それでも必死についていこうと男の話に耳を傾ける。
「私は生まれてこのかた純粋な白の魂を持つ人間を見たことがありません。しかし…」
そこで一旦区切り、アシュトの方を向く男。
「──貴方の魂の色は白です。混じり気の無い純粋な白…」
男の表情は真剣なものとなり、アシュトを射抜く。
「私は貴方に興味がある、……どうです?ここで出逢ったのも何かの縁。──一緒に来ませんか?」
「──えっ?」
いきなりのことに戸惑う。
……だが、何故かアシュトは男に着いていきたくなってしまった。
「嫌というのならば、貴方を家まで送りましょう。見たところ貴族の方のようですしね、帰るならば今のうちですよ」
思い出すのは、厳しく接してくれた両親、優しくも厳しかったエイゼル、甘えん坊なアレン、レイ。
家族とは別れたくない。
しかし、今出逢ったばかりの彼とも離れたくはなかった。
「大分、悩んでいるようですね。…こうしませんか?しばらくは私に一緒についてきてください、帰りたくなったならばその時に送ります」
そう言って、男はアシュトを抱き抱える。
「ちょ、ちょっと…!」
さすがに恥ずかしくなり、抗議の声を挙げるが、優しく微笑まれるだけだった。
「貴方は怪我をして動けないから仕方ないでしょう?」
反論しようとしたアシュトだったが、全身に迸る(ホトバシル)激痛と彼の背中の気持ち良さに反論出来なくなった。
「……一つだけ教えてください…」
「はい、なんでしょう?」
ずっと聞きたかったこと、タイミングがわからずに聞き逃していたが、今がラストチャンスだった。
「貴方の名前は?」
「私はゼイブ=シェイン…」
そこで一旦区切り、アシュトの方へ顔を向ける。
「──バンパイアです」
それがアシュト=アルベインとバンパイア──ゼイブ=シェインとの出逢いだった。
どうでしたでしょうか?ここから彼の世界は変わっていく予定ですが、いかんせん長く書くことが出来ない(泣)能無し作者を許してください…