第一話 見慣れたはずの日常
初めまして、龍呀と言います。上手くは書けませんが、よろしくお願いします。
「本日はここまでッ!!」
勇ましい声と共に一人の少年が崩れ落ちた。
「……やっと終わった…」
息絶え絶えとなり、今にも泣きそうな表情になりながらもそれを懸命に堪えて、床に俯せになる。
「アシュト様、この程度に苦労していては先が思いやられますよ…」
先程の勇ましい声の主が呆れを含ませながら、床に俯せたままの少年に語りかける。
身長も高く、程よい筋肉のついた黒髪、黒瞳の青年の表情は浮かない。
「このままではなりませんよ…」
「わかってる…」
少年も声には張りが無く、表情は浮かない様子だった。
しばらく、少年の様子を見ていた青年だったが、諦めたのか、溜め息を吐き、その場から立ち去った。
(…俺だって、強くなりたいさ…!)
床に伝うは悔恨の涙。
(でも、でも──…‥)
どんなに泣いたところで現状を打破出来るわけでもない。まして、強くなることなどは出来ない。
…だが、堪えることも出来ずに涙は流れてくる。
(……ほんと、俺って泣き虫だなぁ…)
魔法学科もろくに覚えることが出来ず、実戦でも何も出来ない。
貴族であるために必要なことが何一つ出来なかった。
そんな自分が不甲斐なく、泣かない日々などは無かった。
親も側近も自分のことは見限っている…。
それが、日常。
──見慣れた日常に伝う涙は、今も止めどなく溢れてくる。
それが彼──アシュト=アルベインの日常だった。