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酒を飲まずに生きていける人は、そうしたらよろしい。健康でしょう、健全でしょう、そりゃきっと穏やかなことでしょう。酒なんて飲んだところで、酔っぱらったところで問題は解決しない。例えば仕事で失敗したなら仕事で返さねば意味がない。例えば失恋したなら、次の恋だ。それが正しい。それが簡単。踏まえた上で言ってやろう。
私は酒飲みである。
それを否定されたところで、意味がない。話にならない。私の耳には届かない。酒は飲まない方がいい?そりゃそうかもしれんが、それでなんだ。それで終いだ。健康じゃなかろうが、健全じゃなかろうが、穏やかじゃなかろうが、私は酒が好きなのだ。酒が何よりも好きなのだ。酒を飲むから食べる気になる。酒を飲むから愛する気になる。酒を飲むから夜も寝ようと思うのだ。酒があるから、生きていこうと思うぐらい、好きなのだ。
好きな酒をぺろりとなめる。おいしい。うれしい。しあわせだなあ。
それを病とするなら、すればいい。私は生涯病人で構わない。
「少し、飲み過ぎだ」
「そうかな」
「体のことを考えて」
「考えていますよ」
「心配なんだ」
「ごめんなさい」
「酒は毒だ」
「根拠は?」
「は?」
「なんでもかんでも、すぐ毒になさるあなたの方が、よほど毒だ」
「なんだよ、それ……」
ときに尊敬する人はこういった。
男より酒を選んだだけだ。そりゃ酒飲みなんだから、しょうがない。と優しい言葉を、くれた。




