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「つまり、私は空から落ちてきたと」
「はい、わがあるじ」
「……わかりました」
いや、やっぱりなにもよくわからない。さっきしてもらった説明とまったくおなじだった。この夢、設定が良くできている。もしくは、なんかのお芝居に巻き込まれたのか。いや、でも、なんだろう、そういう感じはしないのだ。
体がこれを現実だと悟っている。
「ここの、場所は……地図は見られますか?」
「ちず、とは」
「場所を二次的に示したものです」
「……申し訳ありませんが」
ないのか。
「皆さん、迷われないのですか?」
「空落ちがいますから」
「……ナビゲーターということか」
空落ち。神様。ナビゲーター。おかしい、全然、私の認知と異なる。私は酒飲みだ。
「君は、……今までどうしてたの」
「……頑張ってきました」
眉を下げた青年を見ると、何故か、申し訳ないという気になる。これがイケメンのなせる技か。とりあえず頭を撫でると嬉しそうに笑う。ちょろいな、この王子。
「……私はここで何をすべきなのだろう」
「空落ち様は、……なすべきことをされるものです」
「……酒を飲むか」
「さけ、とは?」
「え」
ついこぼれた本音に、さっきと同じようなトーンで聞かれ、顔を見れば首をかしげられた。
「……アルコール」
「あるこーる?」
「腐った蜂蜜」
「蜂蜜を腐らせるのですか?」
まじか。
え、まじか。
「わかりました」
いや、なんもわかってないけど。
「酒を作ります」
まず話はそれからだ。