表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/46

5






 親以外が名前をつけることは、そのものの魂を永遠に自分のものにすることだ。遥か昔に、この世界のおろかなものたちが空落ちにした所業。だから、今、私たちは、自らの空落ちにのみ、自分の名前を教える。

 私の空落ちは、百年前に死んだ。エルフ族のような長命な種にはまれにあることだ。前例だってある。珍しいとはいえ、ないことではない。しかし、神の喪失は、私の中に今も残っている。しかし、それでも、私には神がいた。愛らしく美しく、いつも私のそばにいた、空落ち。赤き毛並みの美しい、獣の形をした、私の神様。


 だと、いうのに。


「名前を」


 一瞬で奪われた。


「空落ち様」


 その瞳は懐かしい黒の瞳。私の空落ちと同じ色。神のいない私を哀れんで、引き受けてくださった、その空落ちは、ただ、柔らかく笑った。


「俺の空落ちですからね」

 教え子に釘は刺されたが、それでもつい口が笑ってしまうのは仕方ないだろう。私にとっても、だが、これは、神の再来だ。空落ちが複数のものの上にたつのは、あの、闇のものを打ち払ったもののみだ。あの、空落ちがまたここに廻ってきたのだ。

「研究者としても、これ以上の喜びはありませんよ」

「俺の空落ちに手は出させませんよ」

「ふふ、手は出しませんが、目も離さないだけです」

「……そう、ですね」

 




 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ