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恋とは気遣いだ。
許容量を超えるまで、気を遣い続けることだ。私にとっては、少なくとも、そうだ。そんなもの恋ではないと言われても、そうやって、生きてきた。だから、酒は、恋をするために必要なものだった。酒だけは、私が気を遣わなくていいものだった。私は自分の許容量を伸ばすためだけに、自分の我慢を薄く薄く伸ばしていくためだけに、酒を飲んでいたのかもしれない。
「頭が痛い」
「二日酔いだね」
「うん……少し、休みたい」
「……一緒に出かけようよ」
「……そうだね」
「いいの?出かけなくて」
「……、そうだね」
ただ、私はずっと、本当は、ただ、休みたかったのかもしれない。
誰にも気を遣わずに、曜日も気にせず、時間も気にせずに、ただ、ゆっくりと、眠っていたかったのかもしれない。そのことに気がついたときに、どうしようもなく、寂しく思った。今までの人生の全てが、無駄だったような気がした。
「ねえ、俺に嫌われてもいいの?」
「……そうだね」
私は誰のことも、初めから、好きじゃなかったのかもしれない。




