外伝、なみだ味のあめ
今回のタイトルを変更しました。5月4日
キー王国 王都
王都中心部に存在する、巨大図書館が、学術研究所である。
研究所は、学問に優れたキー王国の中でも、特に優秀な人物が所属し、国の知識の象徴とされていた。
巨大図書館は、古い木造性で、時間と共に何度も修理されているため、往年の歴史を感じさている。
研究所の図書館では今、二人の老人が白熱した討論を交わしていた。二人の討論は、過激になる一方で、殴り合いになりそうな雰囲気だったが、部屋の扉を叩く音で、休戦となった。
「失礼します。ズール老師、ワール老師、王宮から使者が参りました」
部屋に入って来た、額に赤い宝石のある女性が、二人に頭を下げて報告する。
「王宮からの使者だと!?。すぐに、すぐにこちらへ、案内しなさい!」
ズール老師の返事を聞いた女性は、小走りで使者の元に向かう。ほどなくして、身なりの良い執事の姿をした使者が、二人の老師の前に現れる。
「ズール老師、ワール老師、お二人に会えて光栄です。私は国王陛下にお仕えする、執事長のパースと申します」
頭を下げるパースを見て、老師たちは慌てて止めた。
「お止めくだされ、執事長様が庶民である、わしたちに頭を下げないでくだされ」
「謙遜なさらないでください。ズール老師は、『魔物大図鑑』を半分も完成させ、ワール老師はUSR種族を二つも発見された。国王陛下の信頼のする、知識の英雄ではありませんか」
パースに称賛されて、二人の老師は上機嫌になり、高笑いをする。
「今日、お伺いしたのは、王都近郊にある山岳地帯に、出現するアンデット系魔物の調査を、お願いするためです」
「魔物の調査ですな?」
「はい、一度調査隊を派遣しましたが、全滅してしまいました。国王様はこの一件を重く受け止め、信頼する老師に調査をするように、ご命令を下されたのです」
「わかりました。国王陛下のためなら、危険な魔物に臆する事無く、命がけで調査をやり遂げてみせます。そう、国王陛下にお伝えくだされ」
老師たちの返事を聞いて、パースは足早に巨大図書館から去っていった。
「あ~、ワール。今回の調査は、おまえさんが行ってくれんか?。わしは『足がクサイ、クサイ病』のために、無理じゃ」
「えっ、いや~残念じゃが、わしは『頭がクサイ、クサイ病』がひどくて、無理じゃわい」
二人の老師たちが、無言のにらみ合いを始めるが、すぐに解決策を思い出す。
「いつも通り、助手に頼むとするかのぉ~」
「それがいいですじゃ、いゃ~残念。『足がクサイ、クサイ病』が無ければ、わしが調査をしたというのに」
室内に、老師たちの高笑いが響く。
次の日
ズール老師たちの助手であるポランは、大きなリュックを背負って、山岳地帯を目指して歩いていた。
「あーー、も~。また、また、またーー!!面倒な仕事を押し付けられた!!」
「しかも、冬!。冬の山岳地帯とか、普通に遭難するよ!!。かえりた~い」
ポランが老師たちに、恨み言をいいながら、寒さに負けず進むと、次の日に目的地にたどり着く。
「さてと、アンデットの魔物はどこかな?。…………杖さん、お願い」
ポランが杖を地面に立てて、手を離すと杖は右斜め前に倒れた。
「よし、そっちか」
勘と杖の導きを頼りに、山岳地帯を進むと、空気が変わる。死臭と重苦しい雰囲気が、辺りを包みこみだした。
「アンデットだ!」
アンデットの気配に気づいて周囲を見回すと、武器を持った動く鎧の群れと、ゴーレムを見つける。
「あれは、死者のよろい!」
不気味に動く鎧の正体に気づいて、攻撃態勢をとる。
「カーバンクルスキル『魔宝石の解放』(効果、魔法の威力3倍)」
スキルの発動により、額の赤い宝石が強い光を放つ。
死者のよろいたちが、ポランの存在に気づいて、襲いかかって来た。
「全てを熔かせ、閃熱魔法レベル8!!」
スキルによる強化魔法によって、ポランの周囲が閃熱に包まれる。
熱が収まると、死者のよろいは消滅し、ゴーレムのような巨大な機械兵器が一体動いていた。
「えっと、あれはなんだろう?。……魔法が効かないなら、殴り倒す!」
巨大な機械兵器の右手には、重火器のような物が装備されており、ポランに弾丸のような物を、無数に飛ばしてくる。
「うひゃ!あぶなぁ…………駄目だ、早く攻撃しないと死んでしまう」
「スキル『ラッキーパンチ』(効果、攻撃に即死効果付与)『ラッキータイム』(効果、10秒間無敵)」
ミラクルラッキーガールのスキルを二つ使用する、必殺のコンボで、ポランは一気に勝負に出る。
「うぉあああ!」
敵の銃弾を全身に浴びても全速力で、一直線に敵の懐に飛び込んで、杖を突きさした。
「ちぇりゃあああ!!」
杖はスキルの効果によって、吸い寄せられるように、弱点の核に突き刺さる。
「グォゴッゴッ」
巨大な機械兵器が、断末魔のような音を出して、動きを止めた。
ポランも、無敵時間が切れたときに、肩に攻撃を受けて、大量の出血をしている。
「うぐぁぁ、いたい……えぐっ……ポーション……ポーションどこだっけ?……いたいよぅ」
動く片手で泣きながら、ポーションを取り出して使用すると、傷が治り痛みが無くなる。
「う~ん、この機械兵器が、死者のよろいを操っていたのかな?。何のために?。……何でこんな山岳地帯にいたのだろう?」
動かなくなった機械兵器を見て、疑問が多く湧いてきたが結論が出ない。老師たちに報告をするために、部品を持って帰還する。
その後、この機械兵器はクーデターを起こすために、秘密裏に作成された兵器であると判明する。
ズール老師とワール老師の二人は、機械兵器を倒してクーデターを未遂で止めた国の救世主として、国王陛下から、勲章と大金を下賜された。
また、二人のために、祭りを開催する事が決定する。
ポランは、ズール老師から褒美として、美味しいあめを三つもらった。
祭りの当日、王都は人であふれていた。混雑がひどく、子供の一人が親とはぐれたのか、大泣きをしている。額に赤い宝石のある女性が子供に近づいて、優しく声をかける。
「坊やどうしたの?お母さんとはぐれたの?。……も~、そんなに泣かないの、泣きたいのは私の方だよ」
「あっそうだ!。美味しいあめがあるから、一緒に食べよう」
「えっ、そんなに美味しくないって?」
「…………本当だ、しょっぱいね。……なみだ味かな」
「ほら、泣き止んだら、お母さんを一緒に探してあげるね」
退職届
冬の月40日
学術研究所
所長ズール老師様
所属 魔物学 種族学
チャラン・ポラン
このたび、冬の月40日をもって、学術研究所を退職させていただきます。
理由は、やってられるかーー!!
バーカーヤーローーーー!!
魔法について
魔法はレベル1~10まであります。ポランは魔術師レベル8なので、閃熱魔法はレベル8まで使えます。
次回予告
「先輩、あのゴリラみたいな、魔物を倒すんですか?」
「そうだね」
「あれ、物理無効ですよ」
「でも、物理攻撃で倒すよ」
「!?」




