意外な人物
避難していた者たちを背中に乗せて、ゆっくりと飛んで行く。すると、地上から手を振ってくる、かえでと紅葉が見えた。
地上に降りると、女性たちはすぐに背中から降りて、かえでと紅葉を目掛け走っていく。
互いの生存を確認して、抱き合って喜んでいると、遅れて多摩とマアハが現れた。
「多摩様!、ご無事でしたか。避難した者は全員、助かりました!」
「皆、無事だったのですね。…………………良かったぁ」
避難していた者たちの無事を確認して安心したのか、多摩は力なく座り込みうつむく。
「力不足で皆を守れず、……………私が生き残るとは、…………」
涙を目にため、何度も地面を叩いて悔しがる多摩に、女性の1人が赤ちゃんを見せて、話しかける。
「あまり、自分を責めないで下さい、相手は呪い竜です。多摩様の判断で、赤ちゃんが助かりましたよ」
目の前に差し出された赤ちゃんを、多摩が抱っこすると大声で泣かれてしまう。上手くあやすことが出来ずにいると、かえでが声を掛けてきた。
「相変わらず、多摩様は赤子をあやすのが下手ですね。任せてください」
赤ちゃんを受け取ったかえでは、すぐに泣き止ませる。その様子を見て、多摩はため息をつく。
「何がいけないのかしら?」
「怖いからです」
「私が怖い!?」
「はい、今も眉間にしわが寄っていますよ」
落ち込んでいた妖狐族のみんなは、多摩とかえでの会話を聞いて、少しずつ笑い出す。やがて、大きな笑い声に包まれると、多摩も笑い出した。
しばらくして、落ち着いた多摩は、フランたちの前に正座で座り、深く頭を下げる。
「フラン様、マアハ様、ネムレス様、深く感謝申し上げます。命懸けの救助で、妖狐族は助かりました」
「感謝の気持ちは、マアハに伝えてくれないかな。僕とネムレスは呪い竜を、倒しただけ」
「!?、呪い竜を倒したのですか?」
「全部倒して、妖狐族の仇を討ったから」
呪い竜を倒したと聞いたみんなは、驚きと共に喜びの声を上げた。
「あの、フラン様。集落に行きたいのですが」
「多摩、集落は壊滅しているよ。行かない方がいいと思う」
「覚悟は出来ていますから、お気遣いなく」
「わかった、他のみんなはどうする?」
結局、多摩を含めた全員で向かうことになり、背中に乗せて飛んで行く。辿り着いた集落の跡地は、瓦礫と燃えた木材が散乱していた。想像以上に破壊された集落を見て、妖狐族たちは言葉を失い立ち尽くす。
「あ、あの、多摩様。生存者を捜しに行きませんか?」
「…………………かえで、1人にして欲しい」
「多摩様…………………みんな、早く手分けして生存者を捜そう!」
かえでの指示に従って、生存者を捜しに行くと、フランたちも捜索に向かう。
1人になった多摩は、昨夜の出来事を思い出し、爪が手に食い込むほど強く握りしめ、後悔する。
自分の弱さ、目の前で命を落とす仲間の姿、判断は正しかったのか、様々な感情と思いが頭を駆け巡った。自責の念に堪えられず座り込むと、叫び声の様な泣き声を上げた。
フランが瀕死の女性1人を見つけて戻ると、他にも男性2人と女性3人が発見されていた。全員が瀕死の状態だったので、すぐに治療を開始する。
治療をしているフランは、理不尽に命を落とした妖狐たちが可哀想で、いら立ちの声を上げた。
「なんでだ!、なぜ、こんな事が起きる!!」
悔しがるフランの後ろから、男性の声が聞こえてくる。
「詳しくは、私が教えます」
振り返ると、あり得ない者を見て、腰を抜かす。
「あ、あ、あなたは、ゲーム制作会社の太古さん?」
スーツ姿の男性が、驚くフランに頭を下げた。
次回予告
「なんで、太古さんがこの世界にいるのです?」
「その話をする前に、私は人間ではありません」
「!?」




