呪い竜の襲撃
妖狐族の族長室に置いてある姿見が割れると、光と共に女性が現れて床に倒れ込む。仰向けで倒れた体から大量の血が流れて床に広がり、長い金色の髪と服が血に染まっていく。
姿見が割れる音に気付いた侍女が部屋に入ると、血を流している九尾の女性を見つけ、慌てて駆け寄った。
「多摩様!、多摩様!、しっかりしてください!」
「誰かーー!!、族長様が負傷されたーー!!。早く医者をーー!!」
侍女の叫びで、眠っていた妖狐たちが飛び起き、次々と族長の元に集まりだす。
「ちょっと!、邪魔!、早くどいて!」
妖狐族の女性が人混みをかき分けて、族長の元に辿り着くと、多摩の手を握りしめ力強く声を掛ける。
「多摩様、私です!。もう大丈夫ですから、しっかりして!!」
「…………………」
女医に声を掛けられても、多摩は返事をする事無く、ぐったりして動かない。
「傷が深い!。…………………良かった、ぎりぎり心臓は傷ついていない。多摩様!、頑張って!!」
回復魔法で必死に治療をしていると、恐怖で顔を引きつらせた妖狐の男性が、部屋に飛び込んでくる。
「の、の、呪い竜が出たーー!!」
負傷した族長を心配して、部屋に集まっていた妖狐たちが、パニックになり騒ぎ出すと、多摩はふらふらと立ち上がり、覇気のある声で叫ぶ。
「今すぐ、若い女と子供を集めて逃がしなさい!!。残りの者たちで、呪い竜を食い止めます!」
『分かりました、多摩様!!』
「まずは多重結界で、子供が逃げる時間を稼ぎましょう。それと、ムーチャシー様に早く連絡を!!」
部屋にいた全員が、指示に従い部屋を飛び出していくと、多摩は床に倒れるように座り込む。
「多摩様、無理をしないで。傷口が開きますよ」
「大丈夫、私はこの程度で死にませんから。医者のあなたは、子供たちと逃げなさい」
「いえ、最後まで多摩様の傍にいますから」
一応傷口は閉じたが、大量出血をする可能性があるので、動かないよう説得していると、呪い竜の咆哮が聞こえてきた。
急いで外に出ると、集落の上空を呪い竜が旋回して、咆哮による威嚇を繰り返す。しばらくすると、呪い竜は大きく息を吸い、ブレスを吹く態勢を取る。それを見た多摩は、大声で指示を出す。
「早く、結界ーー!!」
指示が間に合い、5頭の呪い竜が放ったブレスは結界で防げたが、多重結界の半分を壊された。
「まずいわね。皆、急いで結界を張り直して!!。それと、子供たちは無事逃げた?」
「はい!。無事逃げました」
「そう、良かった。なら、後は少しでも長く時間を稼ぐだけね」
その後、何度もブレス攻撃を結界で防いだが、全員の妖力が無くなり、全ての結界が破壊されてしまう。
「散開ーー!!。皆、生き残れーー!!」
伝令のマアハは、四方を山に囲まれた森の中にある、妖狐族の集落に向かって飛んでいたが、集落の近くに辿り着くと異変に気付く。
(深夜なのに明るい!?。それに、この音は、ドラゴンの咆哮だ!!)
「まさか、集落が襲われているのか。大変だ!、すぐにフラン様に知らせないと」
集落が襲撃されている事を伝えるため、戻りかけたが思いとどまった。
「今から戻っても遅すぎる。それなら、1人でも助けた方が良い」
覚悟決めて、妖狐族を助けるために飛んで行くと、森の中を逃げる女性たちに気付く。助けるために地上に降りると、怯えた女性に攻撃されそうになる。
「待って!、私はグリフォン族のマアハ、味方です!。話を聞いて下さい」
「えっ!?。まさか、ムーチャシー様の先触れですか?。助けてください!!、呪い竜が、呪い竜が」
襲撃しているのが、呪い竜だと分かったマアハは、腕を組んで考えてから女性達に、申し訳なさそうに話しかけた。
「呪い竜が相手では、私に出来る事はありません。せめて、あなた達を安全な場所に運びますから」
「それなら、族長様を助けてください!。きっと最後まで戦っていますから、助けてください!」
(危険だが、1人位なら助けられるかも)
「分かった、それで族長の姿は?」
「九尾の女性です。あの、ありがとうございます」
危険を覚悟で、呪い竜が暴れている集落に、マアハは全速力で飛び立つ。
嫌な予感を感じてマアハを追いかけ、妖狐族の集落に辿り着いた時には全て終わっていた。
原形も分からないほど集落は破壊されて、焦げた死の臭いがする元集落は、生物の気配が無い。
「マアハーー!!、…………………ここにはいないのか?。ねえ、ネムレス。マアハを探して」
「了解です」
しばらく探していたネムレスは、急に動きを止めて話し出す。
「フラン様、ここから南西に竜がいます。数は5頭、周囲を破壊しながら進んでいます」
「………………おそらく、この集落を破壊した竜だろう。なら、止めないと」
マアハの事は心配だが、まずは妖狐族の仇を取るために、ネムレスを乗せて飛んで行く。
次回予告
「僕は、3頭。ネムレスは、2頭、大丈夫?」
「問題ありません」
「妖狐族の仇だ!!、灰にしてやるーー!!」




