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その場の勢いは怖い

 秋の月 14日

 

 グーの許可をもらい、残っていた砂漠地帯に完成した泳ぐ池を見て、フランはやり過ぎたことに、今更ながら気付く。

 何者かが、マシン国の技術を利用して竜封石を破壊した可能性があると、ヤーサから聞いて不安になり、自分に出来る事はないか、フランは必死に考えたが何も思いつかない。

 ムーチャシーの調査結果を待つ以外、今できることは特に無いので、焦燥感を忘れるため夢中で作業をしたら、やり過ぎた事に気付くのが遅れた。

 途中で、カーバンクルのみんなが作業に加わると、悪ふざけとその場の勢いが加速して、必要以上の物を作ってしまう。

 高さ15メートル位、全長140メートル位のミスリル製ウォータースライダーと、公式プール位の大きさの池を見て、大きなため息をついたフランは、小さな声で独り言をつぶやく。


 「やり過ぎたなぁ、25メートル位の大きさで良かったのに、…………その場の勢いは怖い」

 「…………あー!、も~~。こんな事をしていて、本当にいいのかな?、………でも、ジーボットたちから必要な話を聞き終えたから、やることが無いんだよな」


 腕を組み眉間にしわを寄せて、今後の事を考えていると、猫の鳴き声が聞こえてきた。声の方に振り向くと、けだまとネムレスが近づいて来ることに気付く。


 「フラン様、今日のオリハル鉱山周辺警備が完了しました」


 「みゃ~~」


 「うん、わかった。森に異常は無かった?」


 「はい、地上、地下、上空、侵入者はおりませんでした」


 「みゃ~~」


 「ネムレス、ブリムに伝言を頼みたいけど、いいかな?」


 「了解です」


 「秋だけど今日は暑いから、仕事を止めてみんなで泳ごう、そう伝えて」


 「了解です」


 立ち去るネムレスの足元に、けだまがじゃれつくのを見て、フランはネムレスとけだまの、初対面の時を思い出す。

 戦闘特化のネムレスに合う仕事を考えた結果、けだまと一緒に警備を担当してもらう事になったが、けだまが猛反対した。

 単独行動主義のけだまは、ネムレスと初対面の時に怒って逃げだすと、森に隠れてしまう。機嫌が直るまで見つからないと思っていたら、ネムレスがあっさりと森の中から捕まえてくる。

 森の中で捕まった事がショックで、けだまは落ち込んでやけ食いをしていたが、立ち直るとネムレスに甘えるようになった。


 みんなの到着を待っていると、泳ぐ池が欲しいと言っていた、ラミアのミナとデシ―が一番乗りで現れる。

 2人はフランに挨拶すると、服のまま楽しそうに泳ぎだす。


 「フラン様~~!、泳がないのですか~!」

 

 「後で、泳ぐよ!。それよりも、水着に着替えたら?」


 「ええっ~、面倒ですよ~~」


 フラン指摘された二人は着ていた上着を脱ぐと、池の外に放り出して裸で泳ぎだした。


 「ちょっと!!、水着が嫌なら服を着なさい!」


 「は~~い!!」


 返事はしたが、服を着ることなくミナとデシーは泳いで騒ぐ。

 注意しても無駄と考えたフランは、休憩用の椅子とテーブルがある場所で、ヤーサたちの到着を待つことする。

 しばらくすると、水着に着替えたみんなが現れて、心ゆくまで水で遊んだ。

 妊娠中の女性たちは泳げないので、フランと休憩場所で会話をして過ごしていると、ウォータースライダーの方から絶叫が聞こえてくる。

 このウォータースライダーは、滑り出す入り口の所に水魔法を使用する係の者がいて、滑り出すと同時に水魔法で押し流す、と言う危険な遊具なのだが、誰も怪我する事無く歓喜の声を上げていた。


 「なんだか楽しそう、わたしも遊びたいな~」


 「グー、体調が良くないと、さっき言っていたでしょ。今日は、ゆっくりと話をして過ごそう?」


 「うん、わかってる。無理しないから、大丈夫」


 「旦那様、押し出す水魔法をもっと強力にしたら、楽しさが倍増しませんか?」


 「えっ、それだと恐怖感も倍増しない?」


 フランの返事を聞いて、ヤーサは口に手を当てて小さな笑い声を上げる。


 「確かに、そうですね」


 「ねえ、ヤーサ。お母さんから連絡はまだ来ない?。僕たち遊んでいて良いのかな」


 「大丈夫ですよ。急に事態が悪化する事は無いと思います。それに、お母さまが動いているので、安心して連絡を待ちましょう」


 

 ヤーサの言葉通り、フランの心配をよそにして、何事もなく秋が過ぎていく。

 結局、ムーチャシーから連絡が来たのは、冬の寒い日だった。 



 

 次回予告

 「旦那様、お母さまの手紙を読みましたか?」

 「読んだよ、調査をして欲しいと書かれていた」

 「すみませんが、私は無理そうです」

 「わかってる。無理しないで、ネムレスと調査に行くから」

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