楽しい夕食
長い昼食が終わる頃には、日が沈みかけ夜が迫っていた。
料理だけでなく、食器なども食べるネムレスを見て、ヤーサは呆れてフランに声を掛ける。
「すごいですね。私たちドラゴンも大量に食べる時がありますが、さすがに食器は食べ無いですよ」
「確かに、何でも食べていたよね。明日からの食事はどうしようか?」
「あの量を毎日食べると、食料の減りが激しいので、食事は鉱石が良いのでは?」
「そういえば、食料が無くなりそうだと聞いたけど、大丈夫かな?」
「問題ありません。先程、森から食材を調達しました。フラン様、ヤーサ様、今日の夕食は何が良いですか?。すぐに用意いたします」
やっと昼食が終わったのに、夕食の心配をするブリムの真面目さが面白くて、フランとヤーサは楽しそうに笑いだす。
笑われたブリムは、少しムッとした表情を浮かべたが、深呼吸をするといつもの笑顔に戻って、フランに声を掛ける。
「フラン様、何か面白い事がありましたか?」
ブリムの怒っている声に気付いたフランは、慌てて謝りながら話し出す。
「笑ってごめんね。えっと、夕食はジーボットたちを紹介する為に、全員集めて食事をしたいけど、準備できる?」
「はい、かしこまりました。すぐに用意いたしますので、お待ちください」
「あっ、待って!、体は大丈夫?。今日の仕事は終わりにして、休んだ方がいいよ。夕食の用意は、僕が手伝うから」
「適度に休んでいますから、大丈夫ですよ。ですが、心配してくれる気持ちは嬉しいです」
優しい笑顔を浮かべ、お腹を大切そうに触るとブリムは静かに立ち去っていく。
夕食の時にジーボットたちを紹介すると、オートマタの存在にみんなの目が点になる。最初は遠慮気味に話しかけていたが、時間が経つと気にするのを止めて打ち解けて騒ぎ出す。
洗濯専用オートマタ、クリニーはメイドたちから歓迎され、農業専用オートマタ、アグリはカーバンクルの女性たちと野菜の作り方で盛り上がっている。
特に盛り上がっていたのが、サージの肩たたきだった。肩たたき専用オートマタ、サージの肩たたきは最高に心地よいらしく、順番待ちが出来て賑やかに騒いでいる。
「ゆかい、ゆかいじゃ。笑い声はええのう」
みんなと打ち解け騒ぐクリニーたちを見て、つぶやいたジーボットの声は、賑やかな音でかき消されてゆく。
翌朝、宿の部屋で寝ていたフランは、息苦しさで目を覚ます。寝ぼけた目で回りを見ると、ラミアのミナに巻き付かれていた。
「えっ!?」
「おはようございま~す。フラン様、目が覚めました?」
「あっ、うん。……………なんで、ここにいるの?」
「はい~。ヤーサ様から許可をもらっていますから、大丈夫でーす!」
「そうなんだ。いや、そんな事よりも、なぜ巻き付く?」
「む~、ひどいです!。私との約束を忘れたのですか?」
ムッとした表情のミナが、強く巻き付いて不満を表す。
「泳ぐ池、いつになったら作ってくれるのですか?。私も手伝いますから、早く作ろうよ~」
「ごめん、忘れてた。今日から作るから、放してくれないかな?」
納得したミナはフランを放すと、上機嫌で部屋から出ていく。
朝食を食べるために、着替えて食堂に向かうと、焦げた匂いが漂って来た。
「ヤーサ、おはよう。…………料理、失敗したの?。珍しいね」
「旦那様、おはようございます。えっと、今日の朝食はグーが作ったのですよ。少し焦げましたが、食べられますから、絶対に食べてくださいね?」
「へぇ、グーが料理?。珍しい~」
「グーから料理を教えて欲しいと、言われた時は私も驚きました」
ヤーサと話をしていると、グーが台所から焦げた卵焼きを持って歩いてきた。
「フラン、おはよう~。あの、今日の朝食、わたしが作ったけど、…………食べてくれる?」
「もちろん、食べるよ。さあ、お腹が空いたから朝食にしよう!」
焦げた卵焼きとパン、スープと言う軽めの朝食を食べていると、グーが話し掛けてくる。
「初めて料理を作ったけど、上手くいかなかった。…………ごめんなさい」
「うん、そうだね。でも、練習すれば上手くなるよ。また作ってね?」
「食べてくれるの?。じゃあ、わたし頑張るよ!」
「グー、すぐ面倒くさいと言って、止めないように」
「ええっ!、お姉さまひどいですよ~」
グーの作った焦げた卵焼きを大切そうに食べながら、今日から作る泳ぐ池の事をフランは考えた。
次回予告
「先輩、少しやりすぎでは?」
「せっかくだから、気合を入れてプールを作っただけだよ」
「そうですか。…………………」




