5千年以上の時間を過ごすのは大変
少しの間うろたえていたムーチャシーは、落ち着きを取り戻すと深刻な顔で考え事を始めた。
ヤーサが母に声を掛けようとした時、後ろの方で物音がしたのでフランは反射的に振り向く。
音の方に振り返ると、物陰に隠れていたグーが顔を覗かせて、こちらの様子をうかがっていた。
「グー、危険は無いから出ておいで!。ブリムも離れていないで、近くに来ても大丈夫だよ!」
フランの声を聞いた2人が近くに来るのを確認すると、ジーボットの後ろにいる女性たちを指差して、フランが話し出す。
「ねえ、ジーボット、他のオートマタを紹介してくれないかな?」
「おお!、そうじゃった、忘れとったわい。えっと、まずは洗濯専用オートマタ、クリニー。次に農業専用オートマタ、アグリ、最後に肩たたき専用オートマタ、サージ、なのじゃ」
紹介された三人は赤く光る目と白磁の肌以外、人間そっくりの細身で容姿の優れた女性だった。
人間の様なオートマタを興味深く見ていると、後ろにいたグーがフランの背中を叩く。振り返ると、不機嫌そうに睨んで来たので、フランはごまかすためジーボットに慌てて話しかける。
「4人以外のオートマタはいないのですか?」
「最初は231体おったのじゃが、…………………みんな壊れてしもうた。稼働しているのは4体だけじゃ」
ジーボットは目を閉じて、うつむくとしばらくの間考え込む。やがて、顔を上げると静かな声で話しだす。
「5千年以上前に閉じ込められたと言ったが、正確には分からんのじゃ。途中で時を数えるのを止めたからのう。オートマタは不滅ではない、これほどの時が過ぎれば壊れて当たり前じゃ」
「壊れたオートマタは、わしらが出て来た扉の奥にある、墓に眠っておるのじゃよ」
「そうだったんですか。あの、ジーボット達は5千年以上、ここで何をしていたのですか?」
「ふむ、そうじゃの。おまえさん、この部屋を見て綺麗に、整理整頓がされていると思わんかのう」
指摘されて部屋をよく見ると、壁には用途不明の道具が整然と掛けれており、棚には物が丁寧に置かれていた。
部屋の壁際には、睡眠カプセルのような物が置かれているが、汚れが無く綺麗だったので、大切にされているのが分かる。さらに、床に置かれた機械も、新品のように磨かれていた。
「確かに、綺麗ですね」
「そうじゃろう。じゃが、最初は酷いもんじゃった。ゴミ捨て場の様にスクラップの山じゃったのを、長い時間をかけて修理したのじゃよ」
「修理?、ジーボットは悩み相談以外に修理もできるの?」
「いや、出来んよ。修理出来る機械技術者などは、全てドラゴンに破壊されたんじゃ」
「時間はあったからのう、閉じ込められたみんなで、少しずつ修理の真似事をしていたのじゃ。まぁ、暇つぶしじゃよ」
ジーボットが声を上げて笑うと、フランもつられて笑い出す。2人が笑っていると、ムーチャシーが無言でジーボットに詰め寄り、脅すように話しかけた。
「過去の記録や資料はありますか?。あるのなら、全て渡しなさい!!」
「そのような物は、ドラゴンが全て灰にしたわい。…………………そうじゃ、わしが今まで記録した資料で良ければ、持っていくがいい」
「ええ、十分です。ヤーサ、私はすぐに夫のいる天空城に向かいます。ここの事は任せましたよ」
「お母さま、…………竜封石の破壊に、マシン国の技術が関わっていると思いますか?」
「分かりませんが、可能性は高いですね。時間がないので、ヤーサがフラン様に竜封石の破壊について、説明しなさい」
ジーボットが資料の一部を持ってくると、ムーチャシーに遠慮気味に話しかけてくる。
「すまんが、量が多いので時間が掛かるのじゃが、待っていてくれんかのう」
「分かりました。待ちますから、全ての資料を用意して。……………待って!、聞きたいことがある、戦闘専用オートマタは本当に全て破壊されたのか?」
資料を取りに行こうとしたジーボットに質問をすると、少し悩んでから恐る恐る答えた。
「わしは、全て破壊されたとは思っておらん。…………………実は、ここに起動していない戦闘専用オートマタが一体あるんじゃ」
「!?」
「待ってくれ、起動しておらぬから安全じゃ!!。殺気立たんでくれ、人間がいなければ起動は出来ん、ここには人間がおらんから、心配せんでもよいのじゃ」
「全て破壊されたはずの、戦闘専用オートマタが無事に存在するのは、なぜなんです?」
「ここにあるのは、最終決戦用の戦闘専用オートマタなんじゃが、実戦に使用される前に戦争が終わり、ゴミとして捨てられたんじゃ。ドラゴンはこのオートマタを知らなかったから、破壊されずここに捨てられたんじゃよ」
突然の話に、フランたちは言葉もなく愕然と立ち尽くす。
次回予告
「旦那様、起動させるのはやめた方がいいのでは?」
「放置して、他の人が起動させたら、危険だと思うよ」
「そうですけど…………………」




