黒い扉を開けてみた
グーがクローゼットの中から出て来る少し前、ムーチャシーとヤーサ、ブリムは鉱石を運び出すため、採掘トンネル前に来ていた。
「おや、これは、…………なんとまあ見事なトンネルですね。確かこの辺りの岩盤は鉄より硬いはずですが……」
「無力スコップと言う魔道具のおかげで、硬い岩盤を楽に掘れたのですよ」
「へぇ、それは良いですね。…………………、貰えるかしら?」
「またですか?。お母さまは沢山魔道具をお持ちでしょう、変な物を収集する悪い癖は、治した方がいいかと」
2人が雑談をしながら持ち帰る鉱石を選んでいると、ムーチャシーが何かに気付く。
「妙ですね、トンネルの奥から魔力を感じます」
「確かに、魔力を感じる気がする。一応、確認のため調べてみますか?」
暗い横穴のトンネルを、ムーチャシーとヤーサは平然と進むため、夜目のきかないブリムはカンテラを使用して必死に追いかける。一本道のトンネルを進むと、やがて行き止まりの最奥に辿り着く。
最奥の地点に辿り着くと、ムーチャシーが腕を組んで周囲を見回しながら考え込む。
「ふむ、やはりこの奥に何かありますね。………少し砕きますか」
「お母さま、ブリムがいるのですから、あまり無茶はしないでくださいね」
「分かっています。ですが、山が崩れた時はあなたがブリムを守りなさい」
ヤーサがブリムを守るように後ろから抱きしめると、ムーチャシーが最奥の岩壁に蹴りを叩きこむ。
轟音が鳴り響きダイナマイトで爆破したかの様に、岩盤が砕け散って周囲が土煙で包まれる。
しばらくすると土煙が収まり、砕いた岩壁の奥から黒い壁が姿を現す。黒い壁には模様の様な物が刻まれており、ヤーサは興味深そうに眺めていたが答えが出ないので母に聞く。
「お母さま、この模様は文字ですか?」
「ええ、珍しいですね。今は見かけることが少ないですけど、これは古代竜たちが使用していた文字です」
「古代竜の文字ですか、知識として知ってはいましたが、………………読めないですね。お母さまは、わかりますか?」
「もちろん、ヤーサもっと勉強し、………いえ、教えなかった私が悪いですね。それに、この文字は複雑で全てを理解するのは困難ですから、読めない事を気にする必要はないですよ」
ムーチャシーは腕を組み、古代竜の文字を射るように見つめて熟考する。
考え込んで動かない母に声を掛けようとすると、小さなため息をついてヤーサの方に振り向き、静かに話し出す。
「一部しか読めませんが、危険だから開けるな、と書かれていますね」
「えっ、これは扉だったんですか?」
「そのようです、幸か不幸かドラゴン4頭の力があれば開くそうです。…………ブリム、今すぐにフラン様とグーを連れてきなさい」
「はい、かしこまりました」
傍に控えていたブリムが礼をして、小走りでトンネルの出口に向かう。ヤーサはブリムの後姿を見ながら大きなため息をつく。
「止めても無駄なのは知っています、ですが止めた方がいいのでは?」
「ヤーサ、宝箱を目の前にして開けないと言う選択肢がありますか?、中には何があるのでしょう。フフッ、楽しみです」
骨董品や魔道具集めが趣味のムーチャシーは、楽しそうに目を輝かせている。そんな母の姿を見て、ヤーサはコレクションの、変な魔道具を思い出す。
(鼻毛が無くなる魔道具、微風を出すだけの魔道具とか、役に立たない物ばかりなぜ集めるのかしら?)
母の趣味についてヤーサが考えていると、フランとグーを連れてブリムが戻って来る。
「ムーチャシー!、緊急の用事と聞いたけど、何があったの?」
「フラン様、ご足労いただきありがとうございます。グー、気持ちは落ち着きましたか?、心配したのですよ」
「お母さま、すみませんでした」
「来ていただいたのは、この扉を開くためです。4頭のドラゴンが同時に魔力を注入すると、扉が開くそうですよ」
「!?、この黒い壁、扉ですか?」
「はい、説明は後でするとして、さっそく扉を開きましょう!」
クイーンの姿に変身したフランが壁に手を当てると、急かすムーチャシーの声が聞こえてくる。
「全員用意は良いですか?、………3、2,1、ゼローー!」
タイミングを合わせて魔力を流すと、黒い扉が音もなく消え去った。
扉の中は暗かったが、ムーチャシーが一歩踏み出すと、蛍光灯の様な物が無数に光りだし、眩しいくらい明るくなる。
「蛍光灯!?、この世界に存在するの?。…………それに、この部屋はあり得ないでしょう!!」
明るくなった部屋を見回すと、驚きすぎて全員声を失う。
部屋の中は体育館並みに広く、SF映画に出て来る研究所の様だった。この異世界はカオスな世界だと知ってはいたが、違和感のあり過ぎる物を見て、フランは考えるのを止め立ち尽くす。
「お母さま、これは何です、古代竜と関係あるのでしょうか?」
「…………………分かりません。もしかしたら、滅んだ古代文明かも」
予想以上の出来事に全員が戸惑っていると、部屋の奥にある扉が開いて、老人と武装した女性たちが現れた。
戦闘態勢に入ったヤーサを見て、老人が女性たちに武器を捨てるよう指示を出してから、ゆっくりと話しかけてくる。
「遂にドラゴンが現れおった、わしらを破壊しに来たのかい?。見逃してはくれんかの、あれから長い時が過ぎた、もう許してくれてもええじゃろ」
次回予告
「先輩、私には全く理解できません。あれは何ですか?」
「昔のドラゴンと戦った人たちが、滅ぼされる代わりに封印されていたらしい」
「あの人たち、人間なんですか?」
「違うと思うよ」




