ヤーサの怒り
グーの天空城に作った宿で、フランが深い眠りについていると、突然体を揺さぶられ大声で起こされる。
「フラン様!、大変です!!。ヤーサ様を止めてください!!」
寝ぼけた目をこすり、状況を確認すると慌てた様子のブリムが、必死に起こそうと話しかけてきた。
「早く起きてください!、時間が無いのですから!!」
「起きたから、声を小さくして。何があったの?、まさか怪我が悪化した?」
「マージ様は無事です。それよりも、ヤーサ様が敵討ちに行くと言って、暴れているんですよ。身重の体では、いくらヤーサ様でも無理です!!」
「今、ツークシー様とグー様が止めていますけど、長くは持ちません。止められるのはフラン様だけですから、早く止めに行ってください!!」
宿を飛び出すと、外はまだ暗く少し肌寒い。
(あれ?、まだ朝じゃないんだ、寝てからそれほど時間が過ぎていないのかな?)
飛び立つ前にフランが考え事をしていると、ドラゴンの激しい咆哮が複数聞こえてきたので、慌てて飛んでい行く。
「!?、急がないと手遅れになるかも!」
地上ではドラゴン3頭がにらみ合いをしており、咆哮とブレスで威嚇を繰り返す。
今にも本気の喧嘩が始まりそうなので、急いでヤーサの前に降り立ち、強い口調で話す。
「ヤーサダメ!!、落ち着いて!。身重なんだから、無茶をしないで!」
「旦那様!?、止めないで!。マージを傷つけた奴を許せない、今すぐ灰にしてやる!!」
「ダメと言ったら、ダメ!!。お願いだから、僕の話を聞いて!」
殺気立って我を忘れているヤーサを、正面から見つめて強い言葉で説得すると、次第に落ち着きを取り戻していった。
しばらくすると、殺気が無くなり大人しくなって周りを見回す。自分が暴れたことが恥ずかしくなったのか、気まずそうにうなだれる。
落ち着いたヤーサが人の姿に変身したので、他のみんなも人の姿になり駆け寄っていく。
「旦那様、ごめんなさい。怒りで頭が一杯になって、何も考えられなくて…………身重なのに、…………すみません」
涙声でうなだれて謝罪するヤーサを、フランは優しく抱きしめて話しかけた。
「敵討ちは僕がやるから安心して、ヤーサは優しいお母さんになりたいんでしょ、今は子供の事を優先にして欲しいな」
「…………少し疲れたので休みますね」
ヤーサはみんなに頭を下げると、天空城にゆっくりと飛んでいく。
飛んで行くのを見届けたフランは、疲れて座り込んでいるグーに話しかけた。
「グー、何があったの?。あんなに怒っているヤーサを始めてみたよ」
「えっと、怒っているのは、お兄さまに怪我を負わせた奴を逃がしたと聞いたからで、…………その~、えっと」
「詳しくは、私が説明するから」
うまく説明できずに、しどろもどろになるグーに代わって、隣にいた快活そうな雰囲気の女性が話し出す。
「私は、ツークシー。フランくん…………いや、フラン義兄さん。今回、マージを助けてくれてありがとう」
「僕の事は、フランでいいよ。ドラゴンに深手を負わせるなんて、誰にやられたの?」
フランの質問にツークシーはため息をついてから、ゆっくりと話をする。
「マージの統治している国の一つから、『謎のドラゴンが暴れている』と救援要請があったんだ。すぐに対処に向かったけど、既に国は無くなってた」
「私は、お義母さんに協力を頼む方がいいと、マージを止めたんだけど、危険なドラゴンを早く退治したいと言って、調査を始めたの」
「調査を始めてすぐに犯人を見つけたけど、敵は予想外の相手呪い竜だったんだ。しかも、相手は3頭」
「呪い竜?詳しく教えて」
「呪い竜は、簡単に言うとバーサーカーになった竜かな?。自我を持っていない代わりに、限界を超えた強さを持っているの」
「呪い竜は、どうして現れるの?」
「それは、よくわからないな。恨みの強いドラゴンや、強さを求めすぎたドラゴンが、呪い竜に変身すると言われたり、自我を失う呪いのせいだともいわれているよ」
「一つだけ確実なのは、呪い竜に殺されたドラゴンは、呪い竜として復活すると言う事」
「えっと、もしマージが死んでいたら、呪い竜になっていた?」
「ええ、もしそうなっていたら、私が責任をもって倒すつもりだった。だから、助けてくれて本当にありがとう」
「それで、呪い竜はどうなったの、退治できた?」
「…………1頭逃がしてしまった。マージの怪我が心配で、追いかけられなかったから」
ツークシーは悔しそうに、拳を握りしめる。
次回予告
「呪い竜はどうしますか?」
「今、お母さんが事態の対処に当たっているから、結果を待とう」
「私に出来ること事ありますか?」
「じゃあ、このあたりの森で薬草を探してきて」




