ヤーサの天空城
夏の月 46日
前日の夜に花火を爆発させてしまったノン達だが、予想通り怪我をすること無く、朝から元気だった。
フランが爆発の後片付けを手伝っていると、ノンが申し訳なさそうに話しかけてくる。
「フラン様、すみません。せっかく期待していただいたのに、花火を失敗してしまいました」
「そんな事より、体は大丈夫?。妊婦なんだから、無理をしないで!」
ノンはうなだれて、小さな声で謝る。
「すみません、期待に応えようとして無理をしました」
フランはうなだれた頭を優しくなでてから、ノンのお腹に手を当てて、落ち着いた声で話す。
「今のノンは、1人の体じゃないんだから、無謀なことはしないで体を大切にしてね」
「はい、本当にすみません。今後は妊婦として、体をもっと大切にします」
午前中で後片付けを終えて、宿で昼食を食べていると、ポランが慌ててやってくる。
「先輩!、森が浮いてます!!。すごく大きい森が、浮いてるんです!!」
「ポラン落ち着いて、意味が分からない。…………ヤーサ、何があったの?」
ポランの後から宿に入ってきた、ヤーサとグーを見つけてフランは説明を頼む。
「森が浮いているというのは、私の天空城の事ですよ。無事に到着しましたから、ドッキグを始めてもよろしいですか?」
「わかった、すぐに始めていいよ」
「グー、準備はいいですか?」
「お姉さま、いつでも出来ます」
「旦那様、ドキングが完了したら、私はメイドたちと天空城の手入れをしてきます。夜には戻りますから、待っていて下さいね」
「ヤーサの天空城に僕も行きたいけど、ダメかな?」
「ヤーサ様、私も行きたいです!」
「もちろんいいですよ、私の天空城は旦那様の物ですから。ただ、手入れをしていると相手する事が出来ないのが残念です」
「そうだ、案内役を用意しますから、ゆっくりと私の天空城で遊んでください」
話を終えたヤーサがグーと手をつないで、目を閉じると2人の体から光があふれ出す。やがて、天空城同士がぶつかる衝撃で、地面が少し揺れる。
ドッキングが完了すると、ヤーサはすぐにメイドたちと出かけていく。
フランとポランがヤーサの天空城に近づくと、ダークエルフのメイドが出迎える。
「フラン様、今回案内役をまかされました、アーニと言います。よろしくお願いいたします」
「よろしく、アーニ」
ヤーサの天空城には、緑豊かな森林が広がっている。木々は密林ではなく等間隔に植えられ、手入れのされたきれいな森だった。
案内されて、森の中を散策していると、アーニがフランにお願いをしてくる。
「すみませんが、フラン様。私の仕事の助手を呼んでもいいですか?」
「仕事の助手?」
「はい、私はこの天空城で動物の世話役をしています。私がいない間は、助手が仕事をしていたはずなのですが、見当たらないので呼んでもいいですか?」
フランが許可すると、アーニは息を大きく吸い込んで叫ぶ。
「みーーちゃーーん!!」
アーニの叫び声が森の中に響き渡り、しばらくすると二足歩行で歩く、三毛猫のぬいぐるみが現れた。
1メートル位の大きさで、かわいいぬいぐるみはアーニを見つけると、背負っていたのノートを取り出し書き始めた。
書き終わった三毛猫のぬいぐるみは、アーニにノートを見せてくる。
「ひどい!、仕事、激大変!!」
「みーちゃん、私はヤーサ様の命令でいなくなったのです。文句がありますか?」
三毛猫のぬいぐるみは、ノートを地面に叩きつけると地団駄を踏み始めた。
「ねえ、アーニ。このぬいぐるみは何?」
「すみませんフラン様、このぬいぐるみはヤーサ様が作られた、『魔法自立人形』なんです。名前はみーちゃんと言います」
「みーちゃん、この方はヤーサ様の旦那様で、フラン様と言います。挨拶しなさい」
みーちゃんはフランの足にしがみついて、すりすりと顔をこすりつけてくる。
しばらくすると、フランの足から離れてノートに文字を書きだす。
「仕事、もう無理」
「フラン様、申し訳ございませんが、みーちゃんが限界の様なので仕事をしてもいいですか?」
「いいよ、僕らは適当に森を散策しているから」
フランとポランが森を散策していると、マンチカンの様な短足猫が寝ていた。
茶色と白い色の二毛猫はフランが近づくと、飛び起きてじっと見てくる。
やがて、フランに近づきお腹を見せるように寝っ転がって、甘えた声を出す。
「かわいいー!、毛並みがふさふさだ」
フランが猫を触っていると、ポランが何かに気づいたらしく、大声で叫ぶ。
「あああ!!、思い出した!!。その猫、デスキャットだーー!!」
「デスキャット?何それ、物騒な名前だね?」
「通称、首切り猫と言われている、危険な猫です。森の中なら、敵なしと言われるぐらい強いんですよ?」
「うそでしょ?、こんなにかわいいのに。…………ねえ、猫さん。あなたは危険なの?」
フランに質問された猫は、頭を横に何度も激しく振る
「攻撃しないよね?」
今度は、頭を縦に何度も激しく振った猫が、フランにすり寄ってきた。
「ポラン、危険はないと思う。ただの猫だよ?」
「そうですか?、じゃあ私も触りますよ」
本来は、精鋭の兵士ですら瞬殺できる猫を、二人は気が済むまでモフモフした。
次回予告
「先輩、この天空城はすごいです」
「たしかに」
「珍獣や絶滅したはずの動物がいるんですよ!」
「ヤーサが保護していたのかな?」




