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プロローグ

更新はノロいので、ご了承ください。


 


 暗い、遠い、奥の国。


 妖精たちの、花園。


 ―――――――――――――


 妖精たちの国は深い森に囲まれ、更にその中央にも森がサークル状にある。

 未だに彼らの存在がお伽噺とされるのは、国を囲む森の特殊な霧で余所者が侵入できないようにしているからである。


 そして、妖精たちですら滅多に行かない内側の樹海を妖精の足で一週間歩けば辿り着くそこには、禁じられた城がある。


 それは妖精が住むには聊か広すぎるが、人が住むには窮屈だ。





 かつて人の王族の娘が妖精王に供物として捧げられた。少女は14歳。王と側室の間の子供であった。

 少女の名はアリス。アリス・メチ・ティネンテ...彼女は、世にも珍しい黄緑の髪に金色の瞳を持つ”ファータ”だった。


 ”ファータ”とは、普通人が持つことのできない容姿や、不思議な力を宿した人間のことで、意味は「妖精」。


 人は自分たちが彼らの存在によって脅かされるのではないかと恐れ、幾度も暗殺を繰り返してきた。そのため、20歳まで生き延びるものは全体の1割にも満たない。


 そんな稀有な遺伝子は、いわゆる”突然変異”なのだが、それを知る者はいない。代わりに根付いたのは、”呪い”という解釈だった。


 ただでさえこんな失礼極まりない状態だというのに、貴族、ましてや王族に生まれたとあっては、それは個人の問題ではなく国としての問題となる。他国に知られてはそれだけで危険分子と見なされ侵略の大義名分を与える羽目に...


 それではまずい、と王とその忠臣らは考えた、考えて、考えた......


 そうして、 出た結論は、彼らを妖精に捧げる供物だとでっち上げるというさらに馬鹿馬鹿しい物だった。


 曰く、「彼らの力は即ち妖精の好んだモノの証。彼らの故郷は妖精の国も同義。妖精の怒りを買わぬため、彼らを祖国へ帰すのだ」


 なるほど、妖精がかける呪い、さぞや恐ろしく、悪質なものであろう........



 というのが、人間サイドの見方。


 では、彼ら、゛ファータ゛は結局どうなったのか?


 実際上層部は、妖精の存在など信じてはいない。ただ、国民を納得させるための理由がほしかっただけだ。


 ファータは妖精の国へ送り出される際、護衛をつけて深夜静かに人目を避けるように国を出て、『妖精のもと』へ送り出されることになった。


 ... 表向きは、だ。


 それ以外の、姿形は普通の能力持ちは、ファータの中でも周囲にバレずに一生を終えるものもいる。そういう者は親すら騙す。他のファータをそ知らぬ顔で無視し、堂々と結婚して子を産むこともある。

 他に、自らの子がこれまたファータだったらと心配で独り身の者もいる。


 反対に、容姿がらしい(・・・)と親がひた隠しにして家の中に閉じ込めたり、金を積んで静かな場所に療養と称して暮らさせ、護衛に口止めしたりだとか。


 最悪の場合、親やその周囲が生まれてすぐに消すこともある。

 また、嫌なことに、ファータは密かにある種のコレクターに人気で、消したと見せて商品にされる。生死はわからないが、地獄だろう。




 では、『妖精のもと』とは、一体どこを指すのか?



 それこそ、どの国にも共通して存在する森や砂漠という大自然が多い。

 そこでファータを護衛が押し込めたりして放置。商人は待ち伏せするのが常だ。



 一方の妖精サイドはというと、確かに容姿が綺麗な人間は好きだし、自分達に似ていたら更にお気に入りで、力あるものも同様に愛される...


 こともない。彼らは気まぐれで、様々だ。


 人間に好奇心で近づいたり、嫌ったり。イタズラしたり、無関心だったり。

 基本的には妖精の国で暮らしているが、たまに人間の国に遊びに行く。

 能力持ちの中には彼ら妖精の見える奴がいて、からかったり一緒に遊んだりする。


 別段人間がいようがいまいが関係ない。だって大抵の奴はこちらが見えないし、だから害される心配はない。せいぜい暇潰し程度の相手としか考えられないのだ。


 ヒトは弱くて残酷で、面白くてからかいがいがある。


 ファータだからといって特別扱いはしない....




 ーーーーーー


 妖精王は、代替わりが激しい。


 妖精王は人間の王程忙しい訳ではなく、妖精たちを守る霧の結界を維持するのに力を使うのだ。


 勿論、結界のすべてを彼が担っているわけではなく、妖精の国の大地そのものが持つ力を上手く増幅し強固のものにするのだ。


 それ故、妖精の寿命が長くて300年を越えるのに対し、王は150年と短く思える。かといって、長くても80年の人と比べるまでもなく、力の弱い妖精で90年程だから、妖精王がある程度ヒトより長寿というのは嘘ではない。


 そして、その命の短さは、妖精王という大役がいかに過酷かを示している。


 妖精の国は人間ほどではないが数は億を越える、決して小さなものではない。

 性格も多種多様で、好戦的なものはヒトは厄災だ、滅ぼすべきだとのたまう奴もいるし、平和主義の、不可侵を強く主張する奴も。たまに王の世襲制を廃止し選挙で選ぶことを訴えるものも、人間と共存したいと抜かす甘過ぎるお馬鹿もいる。


 そんな奴等を一編に従わせるなんて、重労働に違いない。何せ、妖精王の眉間のシワは年々増えているのだから。


 でもま、大丈夫だろう。妖精は確かにごちゃごちゃと混在しているが、騙すと言っても美味しい団子と偽って泥団子を渡す位の、実にお茶目なものだから。




 ときに、アリス・メチ・ティネンテが齡14を迎える年、彼... ユリウス・ヘラ・ゴルベット、我らが妖精王は45歳。ヒトの基準はわからぬが、聡明な美王であった。





ゆっくりこっくり進めていきます。よろしくお願いします。

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