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僕は誰で誰が僕  作者: shakingshook
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平凡な日々

三月上旬の夕方に一人孤独を感じていた。

夕方の公園のベンチに僕は座っている。

木製のベンチは少し湿っていた。

13時頃まで雨が降っていたから、そういう事だろう。

こんな時間に何をしているだろうか。

自動販売機で買った缶ジュースを片手に煙草をふかしている。

そんな僕の事を見る人さえいない。

誰しも自分一人の事で精一杯なんだ。

空は橙色の優しい表情で僕の頬を照らしている。

しばらくこうして居たい。

ただただボウっとしていたい。

「あつっ!」

煙草はフィルターまで吸い尽くされていた。

どうやら煙草ちゃんまで僕を早くベンチから立ち上がらせようとしているようだ。

今は三月。夕方となるとまだ寒い。

Tシャツにパーカ、ジーパンにスニーカーと少し心許ない服装だ。

18時からアルバイトがある。

21歳フリーターの僕は一体何を考えて今この時を過ごしているのだろうか。

会社に正社員として入社するでもなく、何か夢があるかといったらそうでもない。

ただ日々を生き抜くことに必死なんだ。

会社に俺の命を死ぬまで搾り取られるのも嫌だ。

そんな事を思って辿り着いた先が、今だ。

最近は一年前の記憶さえも危うい。

―プルルルルッ

スマートフォンの画面には健二と表示されている。

今働いているバイト先に1年前まで居た友人だ。

三か月は連絡していなかったのにいきなりなんだろう。

そう思いながら電話を取った。

「もしもし。」

「うぃーす!久しぶりー!元気だったか学ぅ!俺はよう今バンドやってんだよ。そんで明日の19時からライブある訳よ。だから来てみないかなぁって思って電話したのよ。」

「暇だったら行くよ。場所と料金は?」

「おぉ来る気満々じゃん!場所は学の家の近くにある駅からコンビニのある道をまっすぐ行って、ラーメン屋さんの先にある狭い路地を進んだ先にあるよ!料金は3000円ぽっきり!」

「OK。ありがとう。それじゃ気が向いたら行くよ。」

「うっす!じゃまた!」

「バーイ。」

―プツップープープー

内心行く気は満々だ。

最近刺激が欲しかったところだったから丁度いい。

健二は同い年の気さくな男だ。

話をすると落ち気な精神状態も良好になる。

こんな僕も普段は元気で気さくで誠実、に見えるよう演じている。

そんな僕が心を開いて話せる数少ない友人だ。

「おっとマズい!バイトの時間だ!」

スマートフォンの時計を見ると17時40分と表示されている。

この公園から直行で10分だ。

飲み干した缶ジュースをゴミ箱に捨て、バイト先であるガソリンスタンドへと向かった。

―五時間後

「お疲れ様ですー。」

22時半閉店なので三十分で締めの作業を終わらせ、バイトの先輩に挨拶をして帰路についた。

帰り道、僕は歩きながら星を見ていた。

輝いているのは僕の瞳なのか、星なのか分からない。

星があまりにも美しいものだから目が潤っているのか、星が輝いているのか。

僕には分からない。

この時間帯は人通りも少なく、泣きたい時は人目を気にせず泣ける。

今日は空気が澄んでいて気持ちがいい。

明日は今日ではない。

今日はもう訪れないのだ。

だからこの空気を存分に味わっておこう。

「とーちゃーく。」

自宅である二階建てのアパートについた。

外観も内装もいたって普通だ。

ポストには何か入っているだろうか。

パッと見て何も入っていないのを確認した。

二階にある自室を目指し階段を上るのだけど、なにせ振動が伝わりやすいので忍び足で上る。

やーっと帰ってきた。

「ただいまー。」

なんて言っても誰も居やしないんだけどね。

「シャワー浴びて寝るかー。」

食欲も特にないから晩御飯は抜きにすると決めた。

―三十分後

シャワーを浴び、髪を乾かし寝る準備は万端だ。

敷きっぱなしの布団に入ると、眠りにつくため目を閉じる。

だが、音もしない暗い部屋にいると様々な感情が襲い掛かってくる。

不安、心配、恐怖、疑心。

マイナスな感情達がずっと機会を伺っていて、ここぞとばかりに話しかけて来たかのようだ。

「うるさいうるさいうるさい。負ける訳にはいかないんだよ。」

そう呟き、明かりをつけた。

そしてウイスキーを一瓶とまではいかないが、半分ほどゴクゴクと体内に招き入れた。

最近はこんな毎日が続いている。

「はあ。」

ため息なのか、不意に出てしまった嘆きなのかは分からないが、一息ついて窓際に行った。

煙草に火をつけ、星を眺めた。

星は僕のことをどんな風に見ているのだろうか。

煙草を吸い終えると、布団に戻り眠りについた。

甘えだと分かっている。

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