朝の報告から。
季節は初夏。青葉が茂り、暖かい日差しが差し込む中涼しい風が吹き抜けて気持ちがいい。
春は日差しがぽかぽかして授業中まぶたが重くなるけれど、この時期はこれはこれで、窓を開けていると心地よい風と運ばれてくる夏の匂いに居眠りを誘われそうになる。
「みのちゃん、今日も今日とて京介くんは麗しいよ…っ」
「別に毎朝それ報告してこなくていいよ、鬱陶しいから。」
けれど今はまだ授業中ではなく朝の登校時間なので、窓際の席で仲良しのみのちゃんこと笹原みのりとおしゃべりに興じる。
始業前とはいえ、あと30分ほどで朝のHRが始まるので生徒たちもまばらに登校してきている。
その中に、京介くんを見つけたのだ。
「そんなこと言わずにさぁ、ほら見て?ここからでもわかるでしょ?まつ毛が長いの。」
「わかるわけないでしょ。」
「ほらほら、なみだぼくろがセクシー。」
「ただの点じゃん。」
「きゃぁ、ちらりと見える鎖骨から哀愁が漂ってる!」
「変態。」
睨まれたので、さすがに冗談はここまでとする。もちろん、冗談でしたとも。ええ。
「もうすぐここにくるんだから、それまで静かにしときなさいよ。」
みのちゃんの言う通り、もうすぐ京介くんはここに、くるのだ。
そう、私達は同じ2年2組のクラスメイトだから。神様ありがとう。京介くんと同じクラスというだけで毎日スキンケアにヘアスタイルに制服の着崩しまで我々女子は気を抜かずに無遅刻無欠席を貫けます。そのおかげで先生たちからも2組の女子の評判はすこぶる良いです。