放課後の訪問者
やがて時は流れ、放課後になった。
泰宏と莉乃も僕と一緒で部活がないのか帰る準備をしていた。
するとそこに一人の少年……いや桃旗忍が門から四岸学園に入り、僕に軽くぶつかって来た。
「うっ……あ、あなたは!」
「四ツ橋学園の黄瀬秋菜か。麗那の力がどれほどか、君なら分かるはずだ!」
そういって忍は僕を突き飛ばした。
といっても実をいえば受け身が取りやすいように調整してるから本気じゃないけど。
「桃旗忍、どうして峰桜の生徒会長が!?秋菜に用でもあるの?」
「麗那の調査をしてるっていう噂があったけど、強行手段に出るなんて!」
強行手段に出たというのは嘘である。さっきぶつかった時僕は手記を渡した。
そしてその後の忍の行動は僕が峰桜の仲間だと思わせるための茶番に過ぎない。
もっとも、タイミングが悪ければ本気で地面にぶつかっていた。
だけどそうならないのが僕達の強みだから、その心配はあまりしてない。
「だが、その様子だと麗那の力は分かってないようだな」
「待て!」
そういったのはいうまでもなく泰宏だ。
何しろ、他の生徒は校門で起きている出来事は見て見ぬ振りしている。
「誰だお前は?」
「彼は……」
僕の言葉を泰宏はこう遮る。
「説明なら、俺自身がする。俺は黒崎泰宏。この学園の生徒だ」
「なら、君も場の力を使えるというのか?」
「場の力、か。四ツ橋戦国都市に居る人間にしか使えないってことぐらいしか知らないな」
忍のこう答えるあたりやはり泰宏は場の力を使えないようだ。
それを知った僕達は泰宏をこの件から引かせるために、即興で芝居を打つことにした。
「どうやらやっかいなことになったようだな。本来なら帰るところだが、君には寝てて貰う」
「させないわ!」
「どけ、邪魔だ!」
僕は忍に蹴りを入れられる瞬間後ろへさがることでダメージを回避しつつ、
あたかも僕が蹴り飛ばされたように見せかけた。