学園都市の成り立ち
「泰宏、ね。分かったわ」
僕は泰宏の言葉に従い、彼を名前で呼ぶことにした。
それに対し、莉乃はこういう。
「戸惑わないのね」
「戸惑うも何も、泰宏が名前で呼んでっていったからそうしただけよ」
僕はそういい返した。
どうやら莉乃は僕に嫉妬したようだから、それを利用して性別が疑われにくくなるように仕向けよう。
あまり誉められた手じゃないけれど、これもみんなを守るためだ。責められる覚悟をしておこう。
きっとああいうタイプの男性はきっと女性に好かれるんだろう。
そう思っていると、泰宏が声を掛けて来た。
「そうだ、君は寮暮らしか?」
「ええ。部屋はあなたの隣だけど?」
「なら、一緒にカレー食わないか?もちろん、莉乃とも一緒に」
泰宏は莉乃に気を使ったようだが、何故莉乃が僕に嫉妬しているのかは分かってないようだ。
その鈍さは近頃だと珍しくないが、僕の周囲の男の子はそんなに鈍くない。
かくいう僕は鈍くないのか、といわれて鈍くないといえる自信はないけど。
ともかく、泰宏がかなり鈍いっていうことは分かって貰いたい。
「私はいいけど、莉乃さんは大丈夫なの?」
僕はとりあえず修羅場にならない程度まで莉乃を焚き付けておこうと思い、そう聞いた。
すると彼女はこう答えた。
「別に問題ないわ。二人っきりっていうわけじゃないんだし」
「私の狙いが泰宏だと思っているの?」
莉乃が思ったより冷静な返しをしたので、僕は彼女を更に挑発した。
「私はあなたが見ず知らずの人間に一目惚れするようなタイプとは思えないわ」
男が男に惚れるというのは基本的に恋愛以外の感情である。
だが莉乃は僕が一目でそうならないことを見抜けるとなると、僕は彼女を悔ると痛い目に会うと思った。
「初めて会うのに、どうしてそう思うの?」
だが、僕が動揺しているのを悟られたくはないのでこう返した。
「ただの勘よ。そんな事を聞くなんて、あなたはずれているわね」
僕は莉乃にこういわれたが、ずれていると思われるのは一向に構わない。
僕が男だとバレことに比べたら、ずれていると思われるぐらいはどうということはないからだ。
「まあまあ、落ち付いて」
そういったのは峰岸麗那だった。
彼女の家系は超能力といえる力が使える場を作り出す、という能力を代々引き継ぐ。
そしてそれにより昔は不治といわれていた病気を治したりしていたそうだ。
しかし医学の発展もあって、力の悪用を怒れた彼女の先祖はその力を自らの意志で封印したらしい。
そのへんは眉唾だけど、彼女は実際にそういう力を持っている。
そして、それを制御できてないのも事実だ。
そこで四ツ橋学園の人々は近くにあった峰桜学園に対処を願い、更に彼女を四岸学園で学ばせることにしたんだ。