文化祭とキス
場面が切り変わると、泰宏が演じていた村が出て来る。
「今日から休耕だからしばらくゆっくりできるな」
彼がそういうと、僕は彼に歩みよる。
「もしかして、村の人かな?私はチェルシー。真心こもった手料理を探して旅をしてるの」
「俺はテッド、見ての通り村人さ。ここは貧しいから、只で何かは恵めない」
「私は連れに肥料を持たせているわ。金より物が入り用の村でも何かを食べることができるように」
「なるほど、それならいいだろう。肥料を持って俺の家に来ればいい」
泰宏がそういうと場面が暗転し、その間に民家を意識したセットが出て来る。
「というわけだ」
「肥料は私の横に置いておくわ。持ち逃げされたらいけないから」
僕がそういうと、テッドの父親役がこういう。
「慎重な旅人だな。教育もあるということだろうから、都会から旅をして来たのか」
「ええ、王都から来たの。旅の目的を果たしたら、私は明日帰るわ」
そういう僕に、泰宏はこういう。
「せわしいな、ゆっくりしてけばいいのに」
「仕事もあるから、あまり長く旅をしているわけにもいかないの」
そういって僕は出された料理を食べると、泰宏にこういう。
「おいしい!」
泰宏はこういう。
「ただの家庭料理がそんなにおいしいのか?」
「ええ。作った人の心がこもってて、いい味がするわ」
「そうか、よかった」
そして食事を食べ終わる動作をした僕はこういう。
「約束通り、肥料はあげるわ。それじゃあ」
そういって僕は立ち去る。
「華麗な女の子だったな……何というか、見ていると胸がどきどきするんだ」
そして一端幕は閉じ、僕は幕の外でこういう。
「騎士さん」
「どうされました?」
「あれだけの料理を出してくれたのにお礼が肥料だけじゃ気が済まないわ。お姫様として正式に礼をしないと」
「いい心構えですね、ドレスを用意しましょう」
そして幕が開くと、泰宏演じるテッドの母役である麗那がこういう。
「テッドー!」
「何だ、まだ日が照ったばかりだろう」
するとそこに僕が入って行き、泰宏にこういう。
「昨日はどうもありがとう」
「まさか、昨日の旅人はレーニア姫だったのか!?」
「騙してごめんなさい。お礼はするから」
「なら、俺を王都に連れてってくれないか?」
「どうしてなの?あなたには、家族が居るのに」
「俺は、君が好きなんだ!」
泰宏はこういうと、キスをしてくる。
練習の時と違い、それは本気だった。
キスされるのは秋菜を演じる以上仕方がないと割り切りつつ、僕はこういう。
「あなたの思いは分かったわ。なら、相応の覚悟をしてよ。王都で成功するかは分からないから」
僕がそういうと幕が閉じ、ナレーターの莉乃が終わりを告げる。
すると体育館は拍手に包まれたのだった。




