出店のフライドポテト
出店が始まるや否や、人が集まって来る。
最初のころはそこまで集まっていなかったのだが。
「猫の手も借りたい、ってほどじゃないけどかなりの混雑ね」
「そうだな」
泰宏とそう話をしている間に、また客がやって来た。
その客は悠莉だったので、それを見た泰宏はこういう。
「悠莉か。前の時はともかく、文化祭だというのに三葉恵とかいう女の子みたいな男の子は一緒じゃないんだな」
「病気で寝込んでいるから、文化祭の様子だけでも伝えて欲しいと頼まれたんです」
「なるほど。話は変わるが、黄桜秋菜と三葉恵は似てる。恵の恋人である君なら、もしかしたら何か知っているんじゃないか?」
「それは本人に聞くべきことです」
「だとしても直接はいいずらかったんだ。人間関係はデリケートな問題だからな」
そういう泰宏に対し、僕はこういう。
「彼となら、見たことはあるけど話したことはないといった関係よ」
僕は自分で自分のことを彼というのも変な感じがした。
しかし僕自身のことを見たことはあるが話したことはない、というのは妥当だと思った。
何故なら自分自身は鏡で見ることができても、それと話すのは結局独り言になるからだ。
そうして思慮を巡らせていると、泰宏がこういう。
「関係は分かったから、急いで注文を聞こう」
それに対し悠莉はこういう。
「オムライスセットをお願いします」
「了解だ」
そうして悠莉の注文したオムライスセットは数分経った後に、彼女の席に届く。
彼女の笑顔を見た僕は、それだけで黄桜秋菜を演じる勇気が沸いてくるのだった。
そうして時は経ち、休憩時間になる。
僕の休憩時間は泰宏や莉乃と同じ時間帯だったので、二人に連れられて出店を巡ることにした。
悠莉と合流したい気持ちもあったが、秋菜の姿で彼女と一緒に居るのはさすがに怪しまれるのでやめた。
「フライドポテトドリンクセットをください。味付けはペッパーソルト、ドリンクはグレープジュースで」
僕がフライドポテト専門の出店でそう注文していると、泰宏はこういう。
「ハーブソルトじゃないのか、何だか意外だな」
そういう彼は既にバーベキューソースのフライドポテトとコラコーラを持っていた。
「秋菜はヘルシーな物を食べているだけじゃないわ」
莉乃はそういいつつエクストラソルトのフライドポテトとオレンジジュースを持っている。
こうした会話をしながら出店を巡ると休憩時間も終わり、再び慌ただしい時間を過ごした。
そうして出店は成功裏に終わり、僕達は文化祭の一日目を無事終えたのだった。




