主役とヒロイン
莉乃が僕をヒロインといったことに対し、泰宏はこういう。
「ちょっと待て。どうして秋菜をヒロインって呼んだんだ?」
「すでにこの学園都市ではさまざまな偶然が重ねられている」
いわれてみればそうだったので思わず声に出した。
「閉鎖された空間、特異な超能力。そして私というスパイが泰宏を巡る関係に身を投じている」
「一つ一つは希に見る偶然でも、幾つかの偶然が重なれば物語になる」
「もしそうだとすれば、主役は俺だってことになるぞ!?」
「そうよ。物語はあなたを軸にして形成しかけている。その物語は表に出なくても、必ず何かしらの歴史として語られる」
それに対し、泰宏はこういう。
「それが人類の歩んだ道というわけか」
「そうよ。時に事実は小説すらも凌駕し、それは道となる」
「俺は俺の知らないうちに、そんな途方もないことに巻き込まれていたんだな」
「もし引き返すなら今よ。その時は私が主役となる!」
「だけど引き返すわけにはいかない!俺は仲間を守るんだ!」
「ならばその仲間と共に、かかってきなさい!」
そういって冷菓は身構え、泰宏がそれに続く。
僕と莉乃も二人に少し遅れて身構えた。
「行くわよ。グラウンドノヴァ!」
「草蔓の歌!」
麗那が場に介入し地面を隆起させたと思えば、莉乃が奏でた旋律によって発生した草の蔓がそれを貫通して止める。
それを見た僕はこういう。
「峰桜の研究で作られたこの日本刀は銃刀法を守りつつ、場への介入で発生した何かと合わせることができる!」
「フィールドソードね。それは恵から渡されたのかしら」
「この際それはどうだっていいわよね?」
僕の指摘に対し、冷菓はこういう。
「つまらない答えにはおしおきするわ。リーフストリーム!」
「火炎の歌!」
冷菓の発生させた草の吹雪を見た僕は泰宏が奏でた旋律を模倣して火炎でそれを焼き払う。
そして剣にその炎を纏い、こう叫ぶ。
「バーニングストライカー!」
そしてその剣で冷菓を切り裂く。
「おい、正当防衛とはいえ大丈夫か?」
「大丈夫よ。制服は場の力から装着者を守れるよう耐久力を持たせているから」
泰宏がそういっている間に、冷菓が立ち上がる。
「ここまでは計算外ね。逃げるわ」
「させるか!水流の歌!」
泰宏の旋律が水流を呼ぶ。
「ストーンウォール!」
だがそれは岩に防がれ、岩が砕けた後には何もなかったのだった。




