パンをくわえた転校生
僕は三葉恵。峰桜学院の生徒なんだ。
だけど、四ツ橋学園の黄桜秋菜という女子生徒として四岸学園に転校することとなったんだ。
「まあ、それはみんなを守るためだからね」
ともかく僕は自分にそういい聞かせながら、峰桜のみんなへの報告のために手記を書くことにした。
そして、この手記の主人公は僕じゃない。僕はあくまで語り手だ。
「やばい、遅刻するかも」
転校当日、僕は目覚ましをセットし忘れていたので寝坊した。
慣れない寮生活だったのが原因だろうけど、遅刻のいいわけにはならないから急いで支度をした。
「パンをくわえて走るのは無茶だけど、そうでもしないと間に合わないわ」
僕はそういって寮を出る。
そして近道するために一回道を曲がり、もう一度道を曲がった瞬間だった。
「あっ!?」
男の子とぶつかって、スカートがめくれた。
補正下着を履いていたから、股間の膨らみは見えないようになっていたのが幸いだった。
「たく、危なっかしいな」
そういって声をかけてきた男の子こそこの物語の主人公、黒崎泰宏だ。
「それはこっちのセリフよ。パンが落ちちゃったじゃない」
「パンツも見えたが?」
「いうことじゃないわよ!」
僕は男なのでパンツが見えようと別段気にはならないんだけど、いぶしがられてもいけないからそう答えた。
僕が教室の外で待っていると、声が聞こえてきた。
「ねえ、聞いた?転校生が来るんだってさ」
そういったのは外地莉乃。
彼女は黒崎泰宏の幼なじみで、トップアイドルなのだ。
ちなみに僕も彼女のことは話で聞いていたが、泰宏の幼なじみであることは知らなかった。
「男か女かは分からないが、仲良くやっていきたいな」
そういう泰宏に対し、大食いアイドルの上芝比奈がこういう。
「転校生は女の子よ」
「だからどうっていうことじゃないだろ。アイドルの仲間なんだし」
泰宏がそういうと同時に、教室のドアが開く。
「それじゃあ転校生を紹介するわ。入って!」
僕は先生に案内され、開けられたドアから入る。
「おはようこざいます、私は黄桜秋菜。四ツ橋学園から転校した生徒よ」
そこに居た少年……それは泰宏だが、とにかく彼を見て僕は思わずこういった。
「あなたはもしかして、あの時ぶつかった?」
「えっ……あっ、そういやああの時パンを落としていたな。まさか、転校生だったとはな」
「私も意外よ。同じクラスなんだし、名前を知りたいわね」
僕は泰宏に名前を聞いた。
「俺は黒崎泰宏。泰宏って呼んでくれ」
僕は、彼の名前は知っていた。
何故なら彼は四岸学園寮における僕の部屋の、隣にある二人部屋で莉乃と同居している。
と、親友に教えられたからだ。