松永久秀は、悪いひと?
松永久秀、来襲!!
皆さんは、”松永弾正久秀”にどのようなイメージをお持ちでしょうか?
梟雄・希代の悪人でしょうか?
爆死を遂げる、ファンキーでお茶目なイメージでしょうか。
将軍義輝暗殺。
奈良、東大寺大仏の焼討。
主家、三好氏の暗殺と謀略
裏切り、暗殺など悪逆の限りをつくすが、しぶとく生き抜き……爆死(笑)
歌や茶道に長けた教養人であり、領国に善政を敷いた名君として現在でも慕われているとか。
R-18な指南書を著したことでも、密かに知られています。
つらつら書いてゆくと、”三好長慶”を押しのけて 彼が主人公になってしまいます。
まあ、私が何を言いたいのかというと、『 創られた虚像 』であるということです。
確かに事実も含んでいるのでしょうが、あまりにできすぎです。
― 東大寺の焼き討ち ―
東大寺の焼き討ちについては、三好三人衆側の失火(キリシタン犯行説)です。
もちろん、真剣な争いですから敵側も謀略として悪い噂を流布させるわけです。
それを弁明しないもんだから、余計に話がややこしくなるのです。
言い訳しないのが、男の美学だと思っているのでしょう。
― あいつぐ三好長慶一族の『謎の死』 ―
利益を得たものだ犯人だというのが、久秀犯人説の根拠でしょうが、全然利益を受けていません。
いちばん怪しいのは、某剣聖です。
三好長慶に寄生することで、松永は生きながらえているのです。
おのれの権力拡大のためライバルを蹴落とすことはあっても、三好長慶、とその息子の義興に関して云えばシロでしょうね。
― 将軍義輝公殺害 ―
将軍暗殺(暗殺?おおっぴらに襲っておいて?)に関しては、そもそも京にはいなかったようです。
息子がいたから、『黒幕』だというのであれば、それは久秀の失敗でしょう。
確かに、将軍義輝こそが三好家の不審な死について、暗躍していた可能性が高いですからね。
『殺してやりたい』とは思っていたかも知れません。
まあ、それをやっちゃうのが、思慮の無い若者かバカ者でしょう。
久通が乗せられたのか、濡れ衣なのかは判りませんが、久秀はそれに巻き込まれたといえます。
だいたい、将軍を殺したとしてその後をどうするのかを考えると、義栄をたてることになるのです。
三好家の人間であれば、義晴、義輝のラインは避けるべき鬼門です。
義冬(義維)か義栄を握るべきなのです。
覚慶(義秋:貧乏クジ)をたてるのは、最後の手段でしかありません。
ただ、状況に流されてしまい三好三人衆の暴挙を許してしまったことこそが最大の失敗でしょう。
後の三好三人衆の抗争のなかで、主君三好義継が久秀を頼った事実こそ彼が忠臣である証拠だと言えます。
― 信長を何回も裏切ったのはなぜか? ―
ではなぜに信長を裏切ったのかといえば、職制上信長よりも義昭の方が上位であるからに過ぎません。
三好長慶や松永久秀は、バリバリの中央のひとです。
信長のように『俺さま偉い!』とか言っている奴に本気で従うはずないじゃありませんか。
あくまで将軍を擁立するために従っているとか、身を守るために従っているのであって、本心ではありません。
彼のあるじは、あくまで三好家であり、その従う先は将軍家.室町幕府なのです。
従っているように見えるなら、それは久秀の演技力が冴えているからなのです。
信長が『副将軍』や『管領』にならなかった以上、笑止な話なのです。
そういう意味で、久秀はバリバリの体制派なのです。
将軍の命令ならば、たとえ気が乗らなくても無碍に出来ないのが、その証明でしょう。
信長という、いきなりやって来たおのぼりさん目線で見るからおかしいのであって、
当時の目から見れば、パチンコ屋の親父が『選挙協力(不正)と、献金してやったじゃねえか!』と
大勢の部下を引き連れて、国会に殴り込みをかけたようなものです。
都合よく利用していたに過ぎません。
ただ信長が、輪をかけて異常だっただけです。
信玄や謙信が蹴散らしていれば、木曾の義仲ならぬ『おわりの信長』と馬鹿にされたことでしょう
まあ、『勝てば官軍』というお話しであります。
というわけで、ひさひでの小説に出てくる松永久秀は、弟の長頼と同じくらいにいい人設定であります。
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《 享禄元(1528) 3男、千々世(安宅冬康)誕生 》
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『松永兄弟 参上!』
享禄2年(1529年)
― 千熊丸 ―
あれから、稽古や手習いを頑張ったよ。 ”ちょうけい”のおかげでスラスラ学べて楽しかった。
みんなが「若様は凄いです」と褒めてくれる。
お母さまや、お父上もとっても喜んでくれるんだ。
「えへへ~」
”ちょうけい”は、なんでも知っているし、本当にスゴイ!
聞いた話だと、将来ボクが 『長慶』 になるんだそうだ。
もしそうだったらすごく嬉しい、早く長慶になりたいな!
― 長慶 ―
儂は、父にお願いして、新しい近習を付けてもらうことになった。
すでに目星は付けてある。
昔、奴から聞いた話が役に立った。
父上が京で仕事をした際に、その才能を見込んだ奴だから間違いないだろう。
今日は、初めての顔合わせとなる。
(いかん、わくわくそわそわしてきた。 落ち着け、千熊丸っ!)
「若様、そろそろ書院の方へお越しください、大殿がお呼びであります」 家人が言づてを伝えてきた。
儂は、父上に書院に呼ばれた。
「うむ、今行く!」
父上も京での滞在が長くなり、うちの屋敷もかなり京風になったものである。
書院におもむき、ようやく対面を果たした。
「松永久秀にございます、若君には初のお目通りとなり恐悦至極にございます」
(おおっ若いのう、長頼も来てくれて有り難い)
「うむ、よく来てくれた久秀。 こちらが千熊丸だ!」
まずは、父上が労いの言葉をかける。
(久秀は、儂を値踏みするような目で見ておるわ)
「千熊丸じゃ、久秀よう参った! 嬉しく思うぞ」
「ははっ」
「儂の子守は大変であろうが、将来の片腕として尽くしてくれ!」
「勿体ない仰せ」
「お前好みに鍛えるかや?」
「お戯れを、ご冗談が過ぎまする」
「そちの申し状が、正論で理を得ていれば受け入れようぞ、してそちらは?」
久秀のとなりに控える、前髪を上げたばかりの少年の事に触れた。
「弟めにござりまする」
「ほほう、早速親族を売り込んでくるとは、手際が良いな久秀?」
「も、申し訳……」
「謝らずともよい、そのほう名はなんと申す?」
「あ、は、はい、若様、松永なっ…」
「長頼であろう、よく来てくれた…小姓として儂の傍に仕えてくれ」
「は、はい喜んで!」
「たのんだぞ」
……こうして、儂は前回よりも早く、『松永兄弟』を手に入れることに成功した。
父の死後、なにかと世話になったが、今回もいろいろと面倒をかけることになりそうだ。
「たのんだぞ……」
さあ、オリジナルの話で行きます。
千熊丸、行きます!