表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神話21世紀  作者: 風月莢
26/75

二十五、信じること守ること

「…ダ…ッ、ダメだよ!一人にしちゃ…」

青ざめた砂都がはっとして叫ぶ。

「砂都?けど今は、」

乱火が嗜める口調で遮る。

今は、一人にしてやれ。どのみち彼岸の使いである自分達では、何も出来ない。

「違う!連れ戻さなきゃまた狙われる!!」

「『狙われる』?」


狙われるって、どこまで悪化しているのか。それとも元から存在していた酷い事実を、単に私たちが急速に理解しつつあるだけなのか。


事実、

真実―…


一番肝心な事を知らないのか?


誰も彼も、真実の断片しか知らずに、他者を傷付ける。悪なのか、正義なのか。


「そう、風姫が『先見の書』を読んだから!

良くない事が書かれてる、危ないよフユ、あんな体で…」

息付く間もなく捲し立てる砂都。


堕ちて、堕ちて、堕ちて……、制御の利かない未来が向こうからやってくる。抗っているつもりで、絡み取られているのだろうか、私たちは?


「落ち着け、砂都。先見の書には何て書いてある、風姫は何て言った?」

乱火が硬く先を促す。乱火も焦っている。―私も。

「先見の書…風姫……、センパイ、それって…?」

朝凪がおずおずと窺ってくる。

先見の書。そんなものが関わってくるなんて。

「彼岸の予言書よ。彼岸の未来が記されている。風姫はその聖書の番人」

「予言書…そんなものが…?」

非公開のその書物を、私もこの目で確認した事はない。風の噂に聞く程度だ。

「彼岸を統治する上では重要な参考文献よ。彼岸の歴史であれ以上信頼性のある書物はない。だけどあれは彼岸内部の指針でしかないはず…。それに風姫がその内容を公に知らせるなんて、ずっと内密に扱っていたのに、……ましてそのせいでフユが危険だなんてどうして」

砂都が俯く。


「…“彼岸が、人間の存在によって滅びる。その名は、ハル、ナツメ、…フユ”」



それが、

『予言の言葉』か。



「センパイ、それって…」

「それが風姫の言葉か…どういうことだ…!?」


わからない。ただひとつ、はっきりしたもの以外は。


ハル、ナツメ、フユ。

彼岸は彼等を殺すために動いている。


最悪だ。彼岸という世界は、信じるに値しない。

「朝凪」


ごめん。


「はいっ」

「あなたは彼岸に帰りなさい」

「…え」

「何も知らないフリをして、出来るだけじっとしてなさい」


そしていずれ私が敗者になれば、あなたは助かる。

私を止めないで。あなたは生きて。身勝手。

「イヤです」

「朝凪、」

我侭を聞いて。身勝手だって、分かっている。だけど言う事を聞いて。

「絶対に嫌です」

死なせたくないんだ。

朝凪がいつになく大人びた顔で私を見る。

「私は確かに術もヘタクソだし、単純だから先を読んだりも出来ないけど、でもセンパイと一緒に戦いたいんです。

ずっと憧れてました。四面楚歌でもいつもセンパイだけ凛としてて。それがすごく格好良くて。

センパイがセンパイの意志で戦うように、私も私の意志でここにいます。私を心配しないでください。もしも傷付いたとしても…自分の責任は自分で取ります」

「死ぬかもしれないのよ」

「分かってます!」


―分かってる?私が何より分かって欲しいことも、朝凪、あなたは分かってる?


「…私はハルのところに戻る。朝凪、あんたはフユを探して」

「!」

弾かれたように朝凪が笑う。

「はい!お任せ下さい!!!」


―違う。


「乱火と砂都も危ない。朝凪がフユを見つけたら4人で出来るだけ安全なところへ。居場所が決まったら朝凪は一旦私のところへ戻って知らせて」

静かに聞いていた乱火が目だけで了解を示す。


―乱火は、大丈夫。


「はいわかりました!!他にはありますか、何でも言って下さい!私はいつでも戦えます!!敵の気を引くとか!オトリでも何でも!」

朝凪。

「何でも?」

朝凪の言葉を繰り返す。

「ハイ!命懸けで頑張ります!!」


―やっぱり分かってない、あんたは。


朝凪の襟元を掴んで思いきり引き寄せる。

「きゃ、っ」

分からせなきゃ、分からない。

「ひとつ覚えときなさい。あんたを囮にするくらいなら私は自分の命を投げ出すわ」

朝凪が動作を止める。


覚悟決めなきゃ、こんな事言えないわ。



「私についてきて。絶対死なせないから」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ