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姉の影

 やっとサブタイトルに慣れてきました。って、遅いか。


 少し、珠洲香の闇が見えてきましたが、

でも、もっと深いかも?

 入ったばかりの消防隊員たちは、約1年間、消防学校に入校し、そこで基礎的な訓練を受ける。

これを初任研修と言っている。その内容は、消防法、消防組織法、地方自治法といった法令、法規や規則、

各機器の扱い、火災の知識。防火、防災の知識、地域の特徴、地元の防災意識。

いろんな研修を受けたり、資格を取得する場合もある。

何よりも、ここで生活した仲間、友人たちは、各地の消防署に散らばった後でも、

大切な絆、仲間意識となって宝物になるのだが。


 そして、学校の中には実施訓練ができる施設もある。

そこでは実際に消防機器を扱って訓練するようになっている。

時には、実際に火災を発生させて、実地訓練を行う場合もある。

珠洲香がやらかしたのは、その訓練中に、燃えさかる炎に近づきすぎたこと。


 フラフラという感じだったらしく、担当教官にすぐ止められたそうだ。

史佳からの連絡で、あたしの警告が届いていたらしく、

要注意人物となっていた珠洲香の挙動不審は、すぐに発見され、事なきを得たのだ。


 彼女はどう言ってるの?

「また聞きで要領を得ない点が多いので、本人の確認が必要と思いますけど、

炎を見ているうちに、よくわからない不安感に襲われて、

炎の向こうに女の子がいるような気がしたとのこと。

その女の子の声は助けを求める声であったこと。

気がついたら、炎の前で制止されていたそうです。

だいたいこんな感じの話なんですけど、指導教官の話とも一致していますわ」


 うーん、何を起こしたんだろう。

PTSDとはちょっと違うような気もするけど、

幻覚、幻聴。パニック障害?

どっちかって言うと、精神障害の傾向が見えるかな。

単純にPTSDに飛びつくのも間違いかもしれない。

やっぱり簡単にはわからない。


 今日もどんよりとした感じの空。

天気予報はもうすこし晴れるようなことを言っていたのに。

あたしの運転する車に、史佳を乗せて、学校へ急行する。


「昨日、帰ってからスケジュールを考えたの。

どうも長引く可能性が高い。案外、重症かもしれない。

信頼関係を築くのに、どれぐらい時間がかかるのか、

それから原因がわかって、やっと対策がうてるかどうか、だから」


「今回の件で、原因の一つははっきりしたと思いますわ」


 あたしは史佳の横顔を見た。


「火災です。彼女は火に対して、なんらかの不安感を持ってると考えられませんか」


 いい線行ってるわね。PTSDのケースの一つに火災で肉親を亡く・・・・・え?


 あたしは慌てて、史佳に今思いついた考えを伝えた。

史佳はあたしの鞄から珠洲香の書類を取り出す。

履歴書で一生懸命に指先で彼女の経歴を追う。


「あん、わかりにくい書き方ですこと。何回も読んだのに、気が付きませんでした。

詢子の推測があっていそうです」


 史佳は叫ぶと、その部分を読み上げた。


    **年、父、姉死亡。

    同年、火災のため、S市転入。

    ○○年、S東高校入学。


「つまり、自宅の火災と、父親、姉の死亡は同時に発生してる可能性があります。

もしそうなら、これがこの火災が彼女の不安の原因と思われます」


 興奮した顔で史佳が叫んだ。


 いや、そんなに簡単じゃないかもしれない。

確かにトラウマであることは間違いないと思うけど、

やっぱり本人が話さないと、何とも言えない。


 急ごう。

あたしはアクセルを少し強めた。


 消防学校の会議室で、小柄な珠洲香はもっと身を小さくしていた。

まるで、これで非難をかわそうとでもしているかのように。

あたしは彼女の前にしゃがむと、あたしの両手で、彼女の両手を包んだ。

ぴくっと手が震える感触が伝わった。


「こんにちは、珠洲香さん、あたしのこと、覚えているよね?」


 とりあえず、彼女の返事は無視。


「あたしね、あなたのこと、もっと知りたくなっちゃった。

あなたがどんなふうにして、今のあなたになったのかとか、

だから、いっぱいあなたのこと、聞きたいの。聞かせて欲しいの」


 珠洲香の目は無表情。それは不安を通り越して、無気力、無力感の現れ。


「今のあなたは不安で一杯。どうにかしたいけど、どうにもならない無力感で一杯よね。

こんな自分なら、もう、いらないって感じもするよね。死んじゃえって感じもするよね。

でも、違うの。

あなたがあなたであるために、この病気になったのだから。

あなたが本来のあなたになれば、この病気はいらなくなるの。治るの。

ね、だから、あたしと一緒に、すすもう」


 珠洲香の瞳が反応した。

 あたしの顔を見つめるように、焦点が合ってくる。


「あたしが・・・・・本来のあたしになるのですか?

本当の・・・・あたしは・・・・・どこにあるんですか?

こんな・・・あたしじゃなくて、本当のあたし・・・」


「それを、一緒に探そうよ。

あなたが、絶対に治るって自分を信じることが出来れば、必ず治るから。

あたしがハンドル。あなたがエンジン。

あたしが道案内をするから、あなたが進めばいい。

あなたがいなかったら、あたしだけでは、どこにも進めない。

だから、まず、自分は治るって信じて。お願い」


 珠洲香の瞳から涙が落ちる。


「で、でも、あたし、自分なんか、全然信じられないのに、

急にそんなこと言われても自信ないです。

いらない子だって、小さい頃から言われてて。

お父さんは叩いてばっかりだったし、

お母さんは誉めてくれるときもあったけど、

いい子にしてないと、すごく怒るし、

お姉ちゃんしか、慰めてくれる人はいなかったし・・・

いつも、どうしていいか、わからないで、泣いてたし

今だって、全然変わってないんです」


 あたしは彼女の手をぎゅっと握った。この子は・・・


「珠洲香は珠洲香でいいの。

そのために病気になったって思うぐらいでいいの。

誰もあなたを責めたり、叩いたりする権利なんかないの。

あなたが、心を苦しめる必要なんか、まったくないの」


 つらい話になってます。読みにくさも加わって、読む方も大変かと。

そりゃ楽しく明るい話の方が読んでて楽しいですよね。

そっちに路線変更しようかしら?(笑


 後、1話で完結します。

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