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01聖女がやってきた

「……ここは?……どこ?……」


 魔法陣の中心で可愛い黒髪と茶色い瞳をもった少女が呟く。わたくしはその少女に答えを教えてやった。


「ここはそなたにとって異世界、マクラーン王国だ」

「そんな!? 日本に帰りたい!!」


「残念じゃがそなたは日本には返せぬ。このままマクラーン王国の聖女になってもらう」

「そんなことって!? 酷い!!」


 さてここまでで何も分からんよという人に説明しよう。ここは『ここが君のいる世界』というゲームの世界である。通称は『ここ君』で今召喚された日本人は本村灯もとむらあかりちゃんという。ここまで聞くとわかるだろうがわたくしは元日本人の転生者である。そしてもちろん『ここが君のいる世界』のプレイヤーであった、三十代独身女の休日の楽しみであったゲームである。


「貴様、母上。ソプラ・ヴィトス・マクラーン陛下に失礼だぞ」


 わたくしは真っ赤な髪と深紅の瞳を持っているが、今あかりちゃんに怒鳴ったのはわたくしの養子である。アクシス・ヴィトス・マクラーンという所謂、第一王子様で金の髪に青い瞳を持っている。どうもわたくし子どもが作りにくい体らしいのと、結婚するのが怖くて独身で女王をやっているのである。それで跡継ぎ跡継ぎと周囲が煩いからとった養子がこのアクシス王子であった。今はあかりちゃんに怒鳴っているが、そのうちめろめろになる攻略対象者の一人である。


「アクシス、遠方からきた孤独な少女だ。名前を聞き優しくしてやりなさい」

「母上がそうおっしゃるならば、女。名前はなんという?」

「…………本村灯です」


「それではあかりちゃんじゃな」

「あかりで十分です、母上」

「………………」


 こうしてあかりちゃんは我がマクラーン国に保護された。ごめん、大事にするから日本に帰らないでね。そしてわたくしは黒髪に紫の瞳をした筆頭魔法使いに話しかけた。


「ユーデクス・リリアン、あかりちゃんには不調はないか?」

「僕の召喚魔法の腕をお疑いですか、ソプラ陛下」


「あっ、もちろんユーデクスのことは信じているぞ」

「そのお言葉だけで光栄です」


 このユーデクスももちろん攻略対象者である。筆頭魔法使いからの熱愛なんていいね。くぅ~、『ここ君』の世界に来て良かったぁ。わたくしは続いてユーデクスに前からお願いしていたことを聞いた。


「遠見の水晶は用意できたか、ユーデクス」

「もちろんです、ソプラ陛下」


 遠見の水晶、名前のとおり遠くが見れる水晶である。わたくしはこれであかりちゃんをずっと見守るつもりだった。だって気になるでしょ、『ここ君』の主人公がとうとうやってきたんだよ。


「ソプラ陛下、そんなにあの下女のことが気になりますか?」

「あかりちゃんはマクラーン国の聖女になるのだ、気になって当然であろう」


「陛下の視線があの下女ごときに」

「ユーデクス、そのうちお前にもあかりちゃんの力が分かるだろう」


 今は下女なんて言ってるけど、ユーデクスだって攻略対象者なのだからあかりちゃんにめろめろになるのである。わたくしがそんなことを考えていると唐突な人物に声をかけられた。


「よぅ、ソプラ。噂の聖女様はどこだい?」

「もうアクシスに世話をやくように連れて行かせたわ、リヒター」


「なんだよ、うわさの聖女様はみれなかったか。まぁ、いっか」

「ふふっ、わたくしにそんな口の利き方をするのは貴方くらいよ、従弟どの」


 リヒター・マインド。私の叔父の子どもである。従弟なので気安い仲だが、赤茶色の髪に深紅の瞳をした彼は騎士団長を務めている。もっちろん攻略対象者の一人だ。


「姉上、もう居室にさがられてはどうですか?」

「そうね、レオナルド。わたくしの可愛い弟、そうするわ」


 レオナルド・ヴィトス・マクラーン、真っ赤な髪に金色の瞳をした彼も攻略対象者の一人である。弟がいるのになんでわたくしが女王になったの、それは弟が先代陛下の養子だからである。そうして居室に戻った私にベットの影から白い髪に黒い瞳の男が話しかけた。


「あれが噂の聖女か」

「まぁ、見てたの。キラー、そうよ。あれが噂の聖女であるあかりちゃんよ」


 キラーは凄腕の暗殺者である、最初はわたくしを暗殺するために送られてきた。でも小さかった私が従者になりすましていたキラーを見破ってからは私だけの暗殺者になっている。


「どいつもこいつも殺して、あんたを攫いたい」

「ふふっ、そんなことを言ってるけど、きっとキラーもあかりちゃんを気に入るわ」


 キラーは隠しキャラという奴で一応攻略対象者の一人である。だからあかりちゃんに出会ったら、めろめろになるはずなのである。私はこうしてキラーに見守られつつ自室で眠りについた。

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