第5話:「学園の影と封印の真実」
放課後の風見丘学園は、静まり返っていた。夕陽が校舎の窓から差し込み、長い影が廊下を斜めに伸ばす。だが、静寂の奥には、これまでの小さな事件の連鎖が潜んでいた。
「翔くん、沙奈ちゃん!今度は図書室と保健室、教室でも…」
部長の小林陽菜の声が、廊下の奥から響く。息を切らしながら駆け寄ってくる彼女の手には、今度の事件に関わる複数の報告書が握られていた。
翔は深呼吸し、頭の中で校舎全体を一瞬で再構築する。
文化祭の展示物紛失事件、部活日誌事件、地下室の封印事件、複数同時発生事件――すべての痕跡が、複雑に絡み合っていることを記憶の中でつなげる。
「複数現場が連鎖している…しかも、単独では解決できない規模だ」
低くつぶやく翔の声に、沙奈は目を細める。
「人の心理、行動、そしてこの校舎自体…全てを読まなきゃならないわね」
沙奈は微細な仕草や表情を読み取り、複数の人物が無意識のうちに事件に関わっていることを察知する。
二人はまず図書室に向かった。書棚の並び、床の埃の偏り、机の微妙な傾き。翔の瞬間記憶能力は、校舎全体の情報と瞬時に結びつき、誰がどの順で通ったかを推測する。
「ここにも共通の痕跡がある…秘密通路、そして地下室への動線だ」
翔は壁の微細な傷や埃の跡を指し示す。沙奈は部員たちを観察し、心理的に微妙な矛盾を突き止める。誰もが知らず知らずのうちに手助けをしていたことが分かった。
次に向かったのは、地下室。以前封印された箱を発見した場所だ。扉の前に立つと、微かに空気が違うことに翔は気づく。箱の置かれた床の埃の形、手の跡、微妙にずれた石板の位置――それらすべてが複雑な暗号となり、事件の解明の鍵を示していた。
「ここで全てがつながる…翔くん、準備はいい?」
沙奈がささやく。二人は深呼吸し、慎重に扉を開く。
地下室は暗く湿気が漂う。古い箱や資料が並ぶ中、影が動いたような気配がする。翔は微細な床の跡と光の反射から、「影の人物」の存在を察知する。
「奴はまだこの学園に潜んでいる…だが、全ての事件は、この場所に収束する」
翔は静かに言った。
沙奈と共に箱の周囲を調べると、暗号と仕掛けが完全に解明される。複数の小事件の連鎖、そして人々の無意識の協力――全てが計算されたトリックだったことが明らかになる。
箱の中には、学園の古い歴史や秘密、封印された資料がぎっしり詰まっていた。
「小さな事件のように見えても、学園全体の過去や影の存在に迫るものだった」
翔が微笑む。
沙奈も窓の外に伸びる影を見つめ、静かにうなずく。
「ええ、影はまだ動き出したばかり…次はもっと複雑な謎が待っているわ」
夕陽に照らされる校舎の奥で、二人の探偵コンビは、新たな事件への兆しを感じ取った。
学園の影は、まだ完全に姿を現してはいない――しかし確かに、動き始めていた。




