第4話:「校舎の迷宮と消えた鍵」
朝の風見丘学園は、いつもの賑わいを取り戻していた。しかし、放課後に翔と沙奈が廊下を歩くと、微かな違和感が校舎のあちこちに漂っていることに気づいた。
「翔くん、聞いてください!図書室の蔵書がめちゃくちゃに…」
最初に相談してきたのは、図書委員の佐藤明日香だった。
「そして、保健室からも備品がなくなっているって…」
続いて、保健委員長の声が廊下の端から聞こえた。
さらに教室では、個人のノートが一部消えているという報告まで届いていた。
「複数の場所で同時に事件が…?」
翔は眉をひそめ、瞬間記憶能力でこれまでの校舎の配置や通路を頭に再現する。
沙奈は目の前の部員たちの表情を観察する。目線の揺れ、手の微かな震え、呼吸のリズム。複数の人が焦りながらも、どこか無意識に協力していることを察知した。
「落ち着いて。まずは現場を一つずつ確認しましょう」
翔の声が落ち着かせる。
二人は図書室へ向かう。壁際の書棚、机の配置、床の埃の模様。翔は見たものすべてを頭に刻む。書籍の順序の乱れ、棚の微妙な傾き、床に残るかすかな擦り傷。それぞれの手掛かりが、やがて複雑に絡み合っていることに気づく。
「複数の現場で同じ痕跡があるわ」
沙奈が声を低くする。心理的にも、人々は無意識に似た行動を取ることがある。それが犯人の手助けになっている可能性もある。
翔は次に保健室を確認する。棚の位置、消えた備品の種類、床の埃の偏り。微細な違和感が一つの結論に導く。
「共通点は…ここに通じる通路だ」
翔は秘密の通路を指す。以前、文化祭の事件や地下室の事件で発見した通路だ。複数の事件はすべて、この校舎の迷路のような構造に誘導されていた。
沙奈は部員たちを心理的に誘導する。誰もが知らず知らずのうちに、犯行に協力していたことが明らかになる。手の動き、目線、声のトーン――細かい心理の揺れを見逃さなかった。
「なるほど、これが連鎖していたのね」
翔は微かに笑む。複数の小事件は、それぞれ独立しているように見えて、全て背後で学園の仕掛けが絡んでいたのだ。
最後に、翔と沙奈は「消えた鍵」の存在を突き止める。それは校舎の奥深くにある隠し扉を開く鍵であり、学園のさらに大きな秘密への入口を暗示していた。
「小さな事件のように見えたけど、学園全体に関わる何かにつながっている」
翔が静かに言う。
「ええ、影はまだ動き始めたばかり…」
沙奈はうなずき、夕陽に染まる校舎の影を見つめた。
翔と沙奈の探偵コンビは、今日も学園の迷宮を解き明かしながら、次の大きな謎への足がかりを見つけたのだった――。




