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囁き少女のシークレットボイス  作者: うみだぬき
スポーツ少女のトラウマ
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53/239

53話 結婚の挨拶の予行練習?

 双葉を強く抱きしめたまま、一華の涙によって砂の色が変化する。

 響は二人、積もる話もあるだろうと席を外し、先程双葉がいた木に寄りかかった。

 しかし、響の耳にはその場所でもハッキリと二人の会話が聞こえてきていた。


「…私たちは不器用過ぎたんだね…」

「…ねぇねごめん!…双葉が居たからこんなにいっぱい迷惑かけちゃった…」


 一華の涙腺が感染したのか、双葉の言葉も涙声に変化していく。


「違うよ…全然違う。()()()()()()()こんなに頑張れたし、毎日を楽しめた…」

「でも、ねぇね…双葉といる時、笑顔がぎこちなかったよ?」


 一華は、もう何も隠さず話を続ける。


「…それは、双葉が陸上を辞めたのが『あの交通事故』のせいだと思ってたから…まさか、自分の夢のためだったなんて…」

「もしも、怪我をしてなくても双葉は陸上辞めてたよ。双葉は、ねぇねの背中を追いかけるのも好きだけど…少しでも、ちょっとでも!隣で並んで歩きたかったから!」


 一華は、ずっと()()()()だったことを尋ねる。


「…双葉はねぇねが『ねぇね』で良かった?」


 双葉は、一華の長年の悩みを一気に覆すように声を震わせながら叫ぶ。


「っそんなの当たり前じゃん!双葉はねぇねが…()()()()()がねぇねで良かった!そそれに…双葉はねぇねの妹で良かった!」


 二人の数年の蟠りが一気に解消され、数年の距離感を取り戻すように涙を流しながら、互いの日常の一挙手一投足を話す。


「響お兄ちゃん!」

「響君、居るんでしょ?」


 木の裏で隠れているのも、はばかれる空気感により静かに帰宅しようとした響に対して、二人の呼び声が動きを止めさせた。

 ここで呼び声を無視して帰ることは出来ず、家族水入らずの空間に入っていく。


「…俺もこの空気に混じっていいのか?」

「何言ってんのー?響君が私たちの距離を埋めてくれたんじゃん」

「響お兄ちゃんは居なきゃダメ!」


 その二人の言葉に、そっと双葉の横であぐらをかいた。

 すると双葉は、響の膝に座り直し、見上げると『えへへっ』と無邪気な笑みを浮かべる。


「あーあ、響君に双葉取られちゃったー」

「なら、ねぇねもおいでよ!」


 双葉の言葉にたじろぎながらも『ならお邪魔しちゃおっかなー』と、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、その一華の膝に双葉が座り直す。


「…これは?」

「特等席ってやつだよっ」

「とくとーせきー!」


 年相応の恥じらいを持っている響にとって、なんとも形容しがたい状況だった。

 そんな中、双葉が突飛な発言をして場を乱す。


「響お兄ちゃんが()()()()()()()()だったら良かったなー。あ、でもねぇねと響お兄ちゃんが結婚したら、双葉のお兄ちゃんになるよね?」

「双葉!?」


 双葉にこれ以上喋らせないため、口を抑えた一華は今まで見たことない程取り乱していた。

 一華の手から逃れた双葉は、一華に子ども故の純粋な質問を投げかける。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 そんな双葉の曇りなき真っ直ぐの発言に、一華は響の顔を見上げる。


「…だってよ『()()()()()()』…どうする…?」

「っなぁ!?」


 一華はいつもの冗談じみた口調の中に、()()()()()()()が混ざった発言をする。


「響お兄ちゃんどうするの?」

「…兎佐美さん、どうにかして…」

「兎佐美さんじゃどっちか分からないなー、ねー双葉ー?」


 双葉は『うんうん』と頭を縦に揺らす。

 すると一華は響の手を握り、視線を響から逸らしたまま呟く。


「私には()()っていう立派な名前があるんだけどな…」

「ねぇね顔真っ赤ー」


 響は、一華のいつもと違う態度にドギマギしながらも腹を決める。


「よしっ、そろそろ帰るか!()()()()!」


 一華は響の手をより強く握り、熱を帯びた手をさらに熱くした。

 そんな二人を尻目に、双葉が思いもしない提案をする。


 「双葉お腹空いたー…あ!響お兄ちゃんも双葉のお家で、一緒にご飯食べようよ!?」

 「…流石にいきなり迷惑だと思うし、また今度かなー」


 響は当たり障りない真っ当な意見で、やんわりと断る。

 しかし、一華はいじらしい顔で響の顔を見上げる。


 「もしかしたら、本当にお兄ちゃんになるかもしれないんだし…先に両親の挨拶済ましておけばっ?」


 自分で言っていて恥ずかしかったのか、双葉の頬をムニムニと引っ張る。

 双葉と一華の強引な誘いに、()()()()()として結果的に断ることは出来なかった。



 「「ただいまー!」」

 「…お邪魔します」


 兎佐美家に着くと、内巻きのカールをこさえた一華たちの母が出迎えてくれた。


 「いらっしゃーい、二人の母の文乃(ふみの)です、確か道元響君だったわよね?とりあえず上がってー」

 「お構いなく…」


 当初は予想もしていなかった場所で、ご飯を食べることになった響だったが、そんな中、袖を引っ張る双葉だけが癒しだった。

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