表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
囁き少女のシークレットボイス  作者: うみだぬき
スポーツ少女のトラウマ
49/239

49話 可愛い妹たちのために一肌脱ぐか

 菖蒲とたわいもない雑談をしながら、いつもの見慣れた帰り道をたどる。

 この道には、一華の妹である双葉が『響お兄ちゃん!』と声をかけてくる定位置がある。

 するとそこには、双葉よりもはるかに背も胸も大きい見慣れた人物が立っていた。


「…兎佐美さん?」

()()()()()()待ってたよ」

「お兄ちゃん呼びは双葉ちゃんだけにしてくれ、背筋がソワソワする」


 いつもは双葉がいる位置に、今回は姉の一華が立っていた。


『一華さんどうしてここにいるんですか?』

「ちょっと響君に用があってね…」

「ふーん、響さんご指名ですよっ」


 菖蒲は響の背中を押し、双葉との作戦会議の時同様、菖蒲は空気を読み先に家に帰っていく。


「あちゃー下校デートの邪魔しちゃったかー」

「変な気遣いは止めろ。用があるんだろ?要件を話してくれ」


 一華は相談の内容が言い難いことなのか『ちょっと歩いてから話すね』とお茶を濁す。


「そういえば双葉の前では私の事()()()()って呼んでるんでしょ?」

「本人を前にすると下の名前では呼べないが、双葉ちゃんの前ではそうだな」


 双葉が家で響の話を良くしていることや、双葉の日頃の愚痴を聞きながら、相談にはうってつけな場所に着いた。


「こんなとこに公園あったんだね」

「菖蒲と体育祭の時に、死ぬほど練習してた馴染みの場所だ」

「それはそれは…菖蒲ちゃんとの大切な思い出の場所ということですな?」


 中年オヤジのような口ぶりで響をからかう一華は、ブランコを指さし『あそこで話そうかな』とブランコの方へ向かう。


「ブランコなんて何年ぶりだろー!ひゃー!」

「話は双葉ちゃん関係のことか?」


 響のその言葉に、一華のブランコの揺れが如実に小さくなる。


「響君にはなんでもお見通しかー」


 一華は、小さくブランコを漕ぎながら重い口を開く。


「この前、双葉が中々帰ってこないから、双葉がいつも遊んでる公園を見に行ったの。そしたら、同級生の子と口喧嘩しててね…止めに入ろうとしたんだけど…」


 一華は、声を震わせながら続きを語る。


「…口喧嘩の理由が私の陸上のことについてだったの」


 一華はその時の状況を詳しく伝える。



『お前の姉ちゃん、陸上で一歩も走れなかったんだってな!』

『双葉も陸上やってるけど、いっっっつも最下位だし、お前ら似たもの同士だよな!』


 同級生は双葉に対して、噂で聞いた程度の知識で馬鹿にする。


『ねぇねは、いっつも一位だもん!あんたたちなんか比べ物にならないくらい速いんだから!』

『うっそだぁー!ならなんで本番に走らなかったんだ?』

『…そ、それは…双葉も分からないけど』


 同級生たちは、双葉を囲い罵詈雑言をぶつける。

 双葉は、隠れて見ていた一華に気づかず走り去った。



「…そんなことがあったのか」

「いやーお姉ちゃん失格だなー、自分の妹も守れないなんてっ」


 一華は、自虐気味に愚痴をこぼす。


「兎佐美さんは、しっかりお姉ちゃんできると思うぞ」

「そんなことないよ…いっつも私が迷惑かけてばっかり…」


 一華は足を撫でながら俯き、顔が髪の毛で隠れる。

 顔は見えないが、響の耳にはすすり泣く一華の声が聴こえた。


「なら、()()()()()()()()()()()のために協力しようかなー」

「…何言ってんの響君っ」


 一華は涙で充血した目を拭きながら、響の冗談にクスリと笑う。


「協力って言っても、私の足はどうしたって走らない…走ろうとすればするほど足が鉛のように重くなる…」

「その鉛を砕くのがこの俺、()()()()()の役目だ」


 響の立て続けの冗談に、笑いながら立ち上がり、太陽の光に背中を照らされながら手を差し出す。


「そんなに言うなら最後まで私たちに力貸してよね!()()()()()っ」


 響はその手を取り、真っ直ぐな瞳で一華を見つめる。


「あぁ、()()()のお願いは叶えなきゃいけないからな」


 一華は、勢いよく響のブランコに飛び乗り、響の肩に手を置きながら立ち漕ぎをする。


「お、おい危ないって!」

「お兄ちゃんが守ってくれるんでしょっ?」


 跳ねる声で響の冗談を逆手に取り、いじらしく問いかける。


 その日は童心を思い出し、日が暮れるまで公園で遊び尽くした。




「響さん大丈夫ですか?全身筋肉痛だなんて…一華さんとあの後何してたんですー?」

「…ちょっと公園ではしゃぎすぎてな」

「そんな嘘で私を騙せると思わないでくださいっ」


 菖蒲は響の身体をツンツンと無尽蔵に突く。

 今の響にはそれを止める筋力すら無かった。



 菖蒲の突きを耐え、やっとのことで席に座るのだが、そんな響の肩を思い切り叩く者がいた。


「おはよっー!」

「っぃててぇ!」

『おはようございます!』


 一華は朝からテンションが高く、そのテンションに着いていけない。

 すると一華は響の耳元で囁く。


『おはよう、()()()()()()()











評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ