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囁き少女のシークレットボイス  作者: うみだぬき
スポーツ少女のトラウマ
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43話 ツインテ少女との作戦実行

 双葉との話は、長くなりそうだったため場所を移そうとする。


「あ、双葉の学校は寄り道禁止なので一回お家帰ってからでもいいですか?」

「なら双葉ちゃんの家から近いカフェで待ってるよ」


 響は、双葉から大体の家の位置を聞き、その近くのカフェで課題をしながら気長に待っていた。

 カフェの入口の鈴が鳴り、目を向けるとランドセルを置いてきて手ぶらな双葉がキョロキョロと辺りを見渡していた。

 双葉は、響を見つけると手を振りながら駆け寄ってくる。


「待ちましたか?」

「いや、今着いたところだ」

「…空いたお皿が二枚と、飲み終わったカップが置いてあって今来たとこなんですか?」


 なかなか鋭い指摘に狼狽えながら、双葉にメニュー表を見せ『今日は俺が奢るよ』と意気込む。

 双葉はパフェとオレンジジュースを指差し『二つもいいの?』と上目遣いで聞いてくる。響は悲鳴を上げる財布を無視しながら親指を上に立てた。


 数分後頼んだものが届き、双葉はパフェをスプーンで掬い、頬を緩ませる。


「そろそろ、作戦会議をするか」

「そうでした!実は双葉、三つ作戦があるんです!」


 双葉ば指を三本立て、その作戦を響に伝える。



「…それほんとに実践するのか?俺、嫌われないか?」

「ねぇねがまた走るためにお願いっ!ねぇねは響お兄ちゃんのことよく話してくれるから嫌われないと思うよ。多分…」


 双葉の作戦はどれも効果があるのか分からないが、こんなに純粋な目でお願いされたら断ることは出来なかった。

 菖蒲がよく言う『ロリコンなんじゃないですか』は、当たらずとも遠からずだった。



 翌日、学校へ行くと一華はいつもと変わらない雰囲気で登校していた。


「響君、おはよう!この間はごめんね、今日は私が色々手伝うね!」

「兎佐美さんおはよう。なら今日はお言葉に甘えさせてもらおうかな」



 その日の三時間目体育の時間、響はあまり激しい運動は出来ないため、審判と点数を数えることに尽力した。


「チャイム鳴るからそろそろ片付けしろー」


 体育教師の鮫島が生徒に呼びかけ、ボールを片付ける。

 授業が終わった後、得点板を体育倉庫に運んでいた。すると後ろから一華が『手伝うよー』と響に声をかける。


「鮫島先生も怪我してる響君に片付けさせるなんて酷いよね」

「片手だけだし、得点板は押すだけで出来るから気を使ってくれた方だと思うぞ」


 響が物を運ぶことが難しく、代わりに佑馬たちが少人数でゴールを運ばされているのを見ていたため、鮫島の不器用な優しさに感謝していた。


 響は双葉の作戦を思い出し一つ目を実行する。

 一華から離れたところで正面に立ち手を広げ叫ぶ。


「俺の胸に飛び込んでこーい!」


 響は恥を捨て、性格に似つかわしくない行動をした。

 その横を『何言ってんのー』と笑いながら得点板を押す一華が通った。

 広げた腕には、太陽の熱と風だけが触れた。


「…一つ目は失敗か」


 双葉は『ねぇねは韓国ドラマとかよく見てるからこういうキザなセリフは好きだと思います!』と言っていたが、効果は無かったようだ。



「今日の日直は道元だったよなーこのダンボール運ん…でも運べないか…」

「私が手伝います!」

「おー兎佐美助かるー、なら道元は鍵渡すから鍵開けだけ頼んだ」


 四郎から鍵を受け取り、五時間目が終わった後に一華と共に視聴覚室へ向かった。


「何回も手伝ってもらって悪いな」

「全然気にしないで!響君の腕が完治するまでお手伝いするから!」


 このタイミングで双葉の二つ目の作戦を実行する。


「う、兎佐美さんいい脚してるよなー」

「えー何ー?響君キモいよ?」


 一華は笑いながら響を一瞥し、歩みを進める。


「またダメだったか…」


 双葉は『ねぇねは家では結構乙女だからきっと変質者に会ったら逃げ出すと思うんだ』と言っていたか、ただ響の株が下がるだけの効果しか無かった。



 放課後になり菖蒲との下校を断り、一華をグラウンドの端に呼び出した。


「響君どうしたの?また何か運ぶの?」

「いや、今回はそういうのじゃない」


 そう言うと響は、腕が痛まない程度の力で走りながら一華に呼びかける。


「兎佐美さん!夕日に向かって走ろう!」


 一華は首を傾げながら、まだ何が起きているか分かっていなそうな表情で軽く走る。

 全力で走ることが出来ない一華であったが、元々の運動神経の違いで軽い足取りで響の横に付く。


「響君走りたかったの?腕に響いちゃうよ?」


 一瞬で追いつかれた響は、体力の限界で地べたに座り込んだ。


「今日の響君何か変だよ?いつもと違うっていうかー」


 双葉は『ねぇねは昔のドラマとかも見てた気がするから、多分何とかなると思う、多分!』と言っていたが、今思うと愚策も愚策だった。


「またダメかー」


 響は双葉との作戦が無に帰し、空を仰ぐ。


「もしかしてだけど…()()()()()()()


 一華の口から予想外の人物の名前が出てきて、分かりやすく動揺する。


「その反応は会ったっぽいね、何か吹き込まれたんでしょー?」


 双葉には『内緒だよ?』と言われていたがバレてしまった。響は心の中で『ごめんね、響お兄ちゃん失敗しちゃった』と双葉に謝罪した。

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