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囁き少女のシークレットボイス  作者: うみだぬき
バレタインデー
237/239

237話 少ない確率

 お酒に酔った藍李は、タガが外れたようで様々な話を琴音たちに話した。

 様々とはもちろん、()()()()()()()()



「あの後は大丈夫でしたか?」

「もう思い出させないでくれ…」


 花見が終わってから数日後、響と菖蒲はフードコートでアイスを頬張りながら、後日談をしていた。


「どうにか納得してくれたけど、母さんのニマニマした顔と父さんの鋭い目がだいぶキツかった…」


 あんな拷問は、中世ヨーロッパでも行われていないはずだ。


「次の日のお母さん、顔を真っ青にして『悪いことをしたわ…』って、反省してましたよ」

「これを機に、断酒してくれると助かるな」


 余談だが、しれっとビールを飲んでいた羽響のせいで帰りは代行で帰ることになったのだが、その際の車内の空気は行きよりも気まずかった。


「とはいえ、これで私と響さんの未来も安泰ですねっ」

「菖蒲には、羞恥心とかそういう類の感情は無いのか?」


 レギュラーサイズのアイス二つを完食した菖蒲は『無いですよーっ』と頬を緩ませていた。


「その未来の話の前に、一つ話があるんだが」

「っなんですか浮気ですか!?私というものがありながらっ?酷いですよっ!!」


 響は『違う違う』と即座に訂正し、少し前佑馬に言われた話をする。



「それは盲点でした…」

「俺としても、菖蒲とクラスが離れるのは不本意だしな」


『可愛いこと言ってくれるじゃないですかぁ』と響のアイスを横取りする菖蒲は、キーンとする頭を抑えながら考えを巡らせている。

 すると、予想外の人物から電話がかかってきた。


『おー道元、春休みは楽しんでるかー?』

『先生?どうしたんです?』


 今では元担任の四郎から突如、電話がかかってきた。

 大抵の大人ならば、事前に連絡があるものだが、四郎ならば無くとも違和感は無い。


『今暇か?ちょっと頼みたいことがあるんだが、出来たらあと一人ぐらい頭数が欲しいな』

『まぁ特に今からの予定は無いんでいいですけど。隣に菖蒲がいるんで、一緒に向かいます』


『おぉ助かるー』と抜けた声で感謝をする四郎は、たまたま響たちのいるデパートに待ち合わせ場所を指定した。

 追加でラーメンを注文しに行った菖蒲にため息をつきながら、響は四郎が来るのを待った。



「待たせたな。源、それ全部自分で食ったのか?」


 四郎が来るまでの数十分の間。フードコートをコンプリートする勢いで食べた、菖蒲のおぼんを訝しげに見る四郎は、忘れる前にと話し出す。


「娘が誕生日なんだがな、年頃の娘の欲しいものなんて想像もつかないし、教えてもくれないから困ってるんだ」

「え!?先生娘いるんですか!?」

『というか結婚もしてたんですか!?』


 失礼なのは承知だが、一年近くで生活してきた響たちには想像がつかないのだ。


「お前ら…俺をなんだと思ってるんだぁ?」

『すみませんっすみません!それで…その娘さんっていくつなんですか?』

「今は中二だな、多分」


 ここも適当なのは、やはり四郎らしい。


「お前らのデートを邪魔するのは忍びないが、任されてくれるか?」

『で、デートなんかじゃないです!ね!?()()()さん!?』

「あ、あぁ…そうだな()()()さん」


 この互いの呼び方は、菖蒲の作戦の一部だ。


「そうなのか?お前らが付き合ってるって、噂で聞いたんだが」

『違いますっ違います!私たち付き合ってなんか無いです!』


 菖蒲から『響さんも何か言ってくださいっ』と囁かれ、仕方なく響も続く。


「そうですよ、それに俺年上の胸が大きいお姉さんの方がタイプですし。って、痛っ!」


 嘘なのは丸分かりのはずだが、菖蒲の肘打ちが横っ腹に突き刺さる。


「そうか、俺もだ。それは置いておいて、早速選ぶのを手伝ってくれるか?」

『はいっもちろんです!』



 それから一時間、主に菖蒲の意見を参考にプレゼント選びが行われた。

 結果として、洋服作りが趣味という四郎の娘のため、少し割高だがミシンを買うこととなった。


 「一人じゃ思いつかなかったな、改めて助かったぞ」

『いえいえっ!娘さん喜んでくれると嬉しいですねっ!』


 四郎はカゴに乗せたミシンを重そうに運びながら、ユラユラと手を振って去って行った。


 「あの作戦意味あるのか?」

 「あの作戦って『付き合ってなかったら同じクラスになれる確率倍増作戦』のことですか?」

 「…そんな名前だったのかよ」


 結果はどうなるか分からないが、少しは効果があると思いたい。



 それから、春休みはあっという間に過ぎていった。

 ドキドキと不安が混ざりあった二人は、いつもよりも早く、学校へ向かった。

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