232話 お花見のお誘い
『いきなり電話なんて珍しいですね?どうかしたんですか?っあ、私の声が聞きたくなっちゃいました?』
佑馬からの話で不安に駆られたからか、なんの連絡もなしに電話をかけていた。
『そんなところだな』
『やけに素直じゃないですかぁー?あっでも、電話の声って合成音声らしいですよ?』
思わぬ見識を深めたところ、菖蒲も用があったのか思い出したかのように話し出す。
『っそういえば!琴音さんからお花見のお誘いを受けたんですけど、予定空けれそうですか?』
『いつの間に連絡先を交換してたんだよ…』
知らない間に正月以降も交流をしていた菖蒲は、お花見の予定を楽しそうに伝えてくれる。
『今週の日曜日に琴音さんが来るらしいですよっ。そして…なんとっ!私のお母さんもお誘いされたので、両家の顔合わせがついに実現ですよ!!』
『っ藍李さんも来るのか?』
藍李とは知り合ってそれほど時間は経っていないが、確実に人付き合いが好きな人種では無さそうだ。
しかし、そんな藍李が琴音も混じえて花見をするなど想像もできない。
『それ藍李さんはなんて言ってたんだ?』
『『お世話になっているのだから挨拶はしなきゃよね…』って、ブツブツ言ってましたよっ』
藍李の真似をする菖蒲の点数は二十点程だったが、声色からして乗り気では無いことは確かだ。
『ではそろそろ夕食の準備がありますので、また日曜日にお話しましょうねっ!』
『それまでは話せないのか?』
『今日は甘えん坊さんの日なんですか?もぉー、なら今夜電話してあげますよっ』
菖蒲はルンルンで電話を切ると、すぐに琴音とのトーク画面のスクリーンショットを送ってきた。
見切れているが『今日は響さんのお部屋でお友達と遊びました!』と画像も添えて琴音と共有しているのが分かった。
「ごめんごめんっ、母さんの手伝いしてたら遅くなったわっ。って、なんか嬉しそうじゃんか?なんかあったん?」
菖蒲との予定が増えたことで自分でも知らないうちに口角が上がっていたらしい。
適当に誤魔化した響は、これ以上の滞在は邪魔になると思い、早めにお暇することにした。
帰宅してから数時間、突然のチャイムの音に玄関に向かった。
「夜分遅くにごめんなさい。今少し時間あるかしら?」
玄関の前に立っていたのは、モジモジとしながら視線を逸らす藍李だった。
「…何も部屋にあげなくてもいいのに」
藍李は、居心地悪そうに椅子に小さく座る。
「まぁ、だいたい話の内容が分かったので。とりあえず飲み物でも飲みますか?」
「悪いわね、ならビールをお願いするわ」
「一人暮らし高校生の部屋にビールがあると思ってるんですか?あと、仮にあったとしても藍李さんには出しません」
仕方なくホットココアを出すと、藍李は想像通りの相談をしてくる。
「花見のことで色々と…」
いつもより小さく見える藍李は、ココアの湯気で顔を隠した。




