231話 別々の可能性
永流は今まで猫アレルギーなどと、一度も考えたことがなかったのであろう。予想外の理由に肩を落としていた。
「…これでは、にゃんこちゃんとは…もう」
余程猫が好きなのか、デブ猫を抱く響を羨ましそうに見つめる。
「まぁ、仕方がないことです。今はそれよりも、うさちゃんからもらったハンカチを洗濯することの方が優先ですね」
「あっさりだな?」
「決まってるものは変えられませんからね」
ハンカチを手にした永流は、病院の中へと戻って行った。
しかし、数分もすると戻って来る。
「今洗濯機を回してきましたっ」
双葉はそれを聞くと照れくさそうに笑って見せた。
「そういえば響殿は確か『デブ猫の行方を追ってて忙しい』のではなかったか?」
それは嘘ではない嘘なのだが、美神は気づいていなかったようだ。
「そうだった、なら俺はそろそろ捜索に向かうかな。少し早いけど永流、誕生日おめでとうな」
「ふふっ、ありがとうございますね」
双葉と美神は猫に夢中になっていたため、永流にのみ手を振られ帰宅した。
「ってことがあってな」
「うんうん、そんな事があったんだな。でだな響?それを話すためだけに俺ん家に来たのか?」
まだ今日が終わるには早い時間。
そのため佑馬の家にアポなしで転がり込んでいた。
「佑馬はなんか面白い話とか無いか?」
「…お前、俺のことをなんだと思ってるんだよ…」
佑馬はベッドに寝転びながら薄目で呟く。
「でも響って、初期に比べてだいぶ心許すようになったよな?」
「そうか?でもまぁ、確かにそうなのかもな」
去年の春頃は、まだ中学の時の経験が尾を引き、人への信頼度というものがはるかに薄かった。
しかし、菖蒲との出会いから佑馬や一華たちとの出会いが響を変えた。
「二年に上がっても同じクラスだといいよなっ?」
「佑馬が進級してからの話だけどな」
「っ流石に進級はできるわ!多分な!?」
そこは確信を持っていて欲しいものだ。
「そういう話は源さんとはしないのか?」
「なんで菖蒲が出てくるんだ?」
「だってほら、同じクラスにはなれるとは限らないんだし」
そんなこと考えたこともなかった。
当たり前にいつも隣同士。学校外でも一番誰よりも長く共に過ごしていたと思う。
一学年にクラスは四つあり、単純に四分の一をお互い引き当てる必要がある。
「なんか噂だとカップルとか双子は、クラス離されるらしいな」
「なら俺と菖蒲は双子ではないから大丈夫か」
「前者の方が問題だろ」
響の雑なボケにもツッコミを入れてくれる佑馬は、親に呼ばれたため少し席を外した。
「別々のクラス…かぁ」
響はそんなことを呟きながらスマホを操作した。




