230話 そういうことですか
双葉は文化祭をきっかけに知り合った永流に、勉強などといった相談をよくしていたらしい。
美神の面倒をよく見ている永流にしてみれば、双葉のように純粋で可愛げのある子の扱いはお手のものなのだろう。
『美神お姉ちゃんは永流お姉ちゃんと仲良しでしょ?なら、好きなものとか、欲しいものとかわかるかなって』
美神は待っていたかのよう不敵に笑みを浮かべ、真っ平らな胸をどんと叩く。
『その頼みであれば我に相談して大成功っ!サマエルの好みは完璧に理解しているからなっ!』
その後、最近花粉症気味でティッシュとハンカチを常備している永流のため、雑貨屋で猫のハンカチを購入したらしい。
「それでこのデブ猫にそれを取られたと」
この現状の理由が自分だと知った永流は、申し訳なさそうにも照れくさそうに微笑んでいた。
「ほんとにうさちゃんは可愛いんですから」
永流は双葉を抱擁しながら、デブ猫の口からハンカチを取り返す。
「こら、うさちゃんからのプレゼント、返してくてくださいっ」
永流に撫でられたデブ猫は、満足そうにハンカチから離れた。
「これは1回洗濯しなきゃですね。っくしゅ」
「サマエル、鼻水が出てしまっているぞ?」
美神は用意周到にティッシュを取り出すと『ちーんっであるぞ』と母親のように鼻をかんであげる。
「もぉ、子どもじゃないんですか…くしゅ!っくち…」
「どうだかな」
言葉とは真逆に素直に鼻水をかむ永流に、美神は疑問を投げかける。
「しかし妙だな…サマエルが今まで花粉症で苦しんでいるところを見たことがないのだが…」
「でもでもっ、いきなり花粉症になっちゃう人もいるってねぇねが言ってたよ?パパも一昨年からなっちゃったもんっ」
鼻を擦る永流は、少し季節外れの花粉症に今になって首を傾げた。
「確かスギ花粉が流行ったのって少し前でしたよね?今更、花粉症になるなんて…くちっ…あるんですかね?」
「美少女がそのくしゃみすると様になるな」
「っサマエル!響殿に色目を使うでないぞっ!?」
二人がわちゃわちゃしてる様を見ていた響は、現実に百合があるとすればこのような光景なのだろうと、見識を深めていた。
だがしかし、永流のくしゃみは留まるところを知らず、立て続けに三回も繰り返された。
「もしかしたら」
響は一つ別の理由を思いつく。
しゃがみこむと、地面で寝転んでいるデブ猫を抱え立ち上がる。
「まぁにゃんこちゃんがどうしましたか?」
永流の顔の前に近づけてみると、数秒も経たずに新たなくしゃみを生んだ。
「永流お姉ちゃんって猫アレルギーなの?」
「…そういうことですか」
永流は何かを理解したかのように空を見上げた。




