表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
囁き少女のシークレットボイス  作者: うみだぬき
バレタインデー
184/185

184話 廃工場にて

 響は約束通り、一人で指定された場所まで向かう。

 だが、実際には別ルートで変装をした美神も着いてきている。

 響に何かあった時の連絡兼スパイ役として動いてもらっている。


「ここら辺のはずなんだがな。特に誰もいないな」


 実際に足を運んだのだが、やはりただの道の途中。周りには、自販機や等間隔に並ぶ電柱しか見当たらない。

 車通りは多くはないものの、数分に一台は通るペースだ。


「響殿っ我も目標位置に到着した」


 美神の姿は見えないが、少し離れた位置で待機しているらしい。

 声だけはしっかり聞こえるため、状況を逐一伝えてもらう。



 指定された場所の約束の時間。

 数分待つが特に変化は無い。

 変わらず車通りもあまりなく、本当にここであっているのかと不安になる。


「響殿、バイクがそちらへ行くぞ」


 美神の連絡通り、奥からかなり早いスピードで大型のバイクが走って来る。

 フルフェイスで顔は見えないが、体格的にも蓮央ではない。


「続いて黒のワゴン車も行ったぞっ」


 美神の情報に『りょーかい』と自分に聞こえるぐらいの声量で返事をしていると、バイクのスピードがまた少し早くなる。

 バイクが通り過ぎる瞬間、頭に鈍い痛みが走り、意識が遠のいていく。


「…丁重に乗せろよ…さんまじで…から」


 薄れていく意識の中で、次に通った車に乗せられたことだけは分かった。

 響は最後の力を振り絞り、ポケットから()()()()()()()()()



「…っお、お目覚めかな?」


 意識が戻ってくると同時に、頭の痛みがより鮮明になっていく。

 視界がまだぼやけており、二重に重なって見えるが、薄暗い廃工場に連れて来られたらしい。


「…っいてぇ」


 頭を抑えた手にはドロっとした血が付着する。


「響君約束通り来てくれたんだねっ。でも、君って普段コンタクトだったんだ、()()()()()()もなかなかいいものだね」


 今日は珍しくメガネを掛けていた響は、動きの止まったベルトコンベアに座る蓮央を横になったまま睨みつける。


「ここなかなか居心地がいいよねっ。退廃的でありながらも昔のままの姿を残している。僕のお気に入りの場所だからここを選んだんだっ」


 蓮央は足をブラブラとさせながら、アイスブレイクをするかのように世間話をしてくる。


「…天乃、菖蒲はどこだ?」


 響は立ち上がろうとするが、手足を縛られているらしく、思うように動けない。


「菖蒲さん?それなら、そこにいるじゃないかっ」


 可動域の狭い視野で見回すと、椅子に座らされ、眠っているのか項垂れるように俯いていた。

 見た目だけだが、特に外傷は見当たらない。服装も変に着崩れなどもしていない。


「菖蒲には何もしてないんだろうなっ!?」

「なーんにもっ、僕にそういう趣味は無いからね」


 菖蒲を『そういう趣味』で片付けられたことは腹ただしいが、何もされていないのなら問題は無い。


「でも僕は興味無いけど、()()()()()()()()()()


 言葉の意味が分からず、黙っていると蓮央は近づいて来る。

 すると、写真を何枚か見せてきた。


「これはこの前撮ったやつね。響君もこういうの好きだったりする?冥土の土産にあげようか?」


 蓮央の見せてきた写真には、まだ中学生ぐらいの女子の顔写真と名前。裏には法外な値段も書かれていた。


「この子たちはまだ売れてないけど、そろそろ買い手が見つかりそうなんだよねっ」

「…お前これ」


 蓮央はニヤッと笑ってみせると、写真を床にばらまく。


()()()()()


 学生の域を超えた非人道的な行動に、響はただ蓮央の顔を見つめていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ