182話 奪還作戦
肺が裂けそうなほど全力で走り、藍李の元へ戻る。
藍李に事情を伝えると、動揺を見せるものの取り乱すことはしなかった。
「…とりあえず理解したわ。その話だと警察には相談出来そうにはないわね…」
「俺が不甲斐ないせいでっ」
膝に拳をぶつける響に藍李は、優しく頭を撫でてくれる。
「あなたのせいなんかじゃないわ、体操服の件は初耳だったけど、その頃からあなたが守ってくれてたのね。本当にありがとう」
藍李の微笑む姿に少しだけ気持ちが落ち着く。
「でも…一体どうすれば…」
その時、スマホが立て続けに震える。
スマホに目をやると複数人からチャットが来ており、そのメンバーが揃っているグループの通話を開く。
『ねぇやっぱみんなも来たん?』
『天乃からの手紙だろ?ほんと趣味悪いよな』
響は直接会話をしたのだが、皆にも手紙が来ていたらしい。
だが、内容は少し違うものだった。
『『犠牲者を決めて』って…ちょっと怖いよね』
『っその手紙の内容とか時間とか色々教えてくれ!』
『っちょいちょい響っち!?やけに落ち着きないじゃんか』
皆は天乃から手紙は来ていたらしいが、菖蒲の件は話されていないらしい。
響は、菖蒲が最近人の気配がするという話から順々にしていく。
初めは、いつもの雑談の延長のようなテンションで聞いていた一同であったが、菖蒲が居なくなったことと天乃との電話の話をすると一変する。
『っは!?源さんが誘拐された!?っやばいじゃんか!どこにいるか分かんのか!?』
『夏目落ち着いて、道元だって分からないから何も動けてないんでしょ』
慌てる佑馬を宥める透子だが、声はいつもと違い真剣味を帯びている。
『っ菖蒲殿…この天乃とか言うやつ絶対にっ!』
この話を共有できたことは、気持ち的にもだいぶ助けになったが、状況は変わらない。
『…犠牲者って…私怖いよ…』
『安心してくれ一華、少し俺に考えがあるんだ。みんな、明日土曜日だから休みだよな?今から菖蒲の家に来れるか?』
アイコンタクトで藍李に確認すると、人数分のコップを用意し始めた。
「響っち、大丈夫?」
有咲は響を心配するように声を掛けてくれる。響は『大丈夫だ』と不安を伝染させないように、平然を装う。
「っなぁ響?何か作戦があるって言ってたよな?っそれってなんなんだっ!?」
響はノートを開き、作戦を皆にも分かりやすいように図解していく。