181話 電話先での口論
菖蒲との通話に天乃の声が入り、響の怒りは止められないものとなる。
『声大きいよ、耳がキーンとしちゃった』
『黙れ!菖蒲は今どこにいるんだ!?』
天乃は数秒黙ったあと、声色を変えずに曖昧な答えをする。
『どこだと思うっ?』
天乃への怒りは変わらないが、菖蒲の身元の安否が心配になる。
『何が理由でこんなことをしてんだよ!菖蒲には何もしてないんだろうな!?』
天乃は作ったような気味の悪い声で笑いながら、遠回りに話し出す。
『僕ってね結構プライド高い方なんだよね。だから、一回でも鼻を折られると根を持っちゃう質でさ?だから、体育祭の件結構ショックと言うか…』
『っ御託はいいからさっさと答えろ』
『響君らしくないじゃないか』と残念そうにため息を付きながら答える。
『つまり、簡単な話僕に黒星を付けさせた君たちが癪なんだ』
『っは?』
まだ確定した訳では無いが、誘拐紛いのことをしている動悸としては見合わない理由に素の反応が出てしまう。
『今までずっーと成功ばかりの人生だったのに、それをいきなり崩されて…結構君たち酷いことをしたんだよ?』
響たちを悪者扱いし、ごちゃごちゃと言葉を並び立てる。
『…そんな理由で菖蒲を危ない目に…』
『まぁ、君からすればそうかもね』
電話の奥で何かが倒れるような鈍い音が響く。
今もこうして話している間に何をされるか分からず、情報を探るように会話を続ける。
『っ今どこにいる?他にも人はいるのか?菖蒲には何もしてないんだろうな!?』
天乃は椅子にでも腰を下ろしたのか『っよいしょっと』と、声を漏らす。
『そんなに沢山聞かれてもいっぺんには答えられないよ?とりあえず、菖蒲さんには何もしてないよっ』
その言葉に憎い相手だが、少し安堵する。
天乃は誰かと会話しているのか、声が少し遠くなる。
『あぁ分かった、とりあえず呼んでくれるかな?』
響は電話を繋いだまま、菖蒲の家に向かう。
藍李に事の重大さを伝え、警察に電話をかけることを提案したが、見透かしたように天乃は忠告をする。
『あ、そうだっちなみに警察には言わない方がいいよ?実は、警察にこっちの関係者がいるから、相談したらすぐに分かっちゃうんだ。僕だって、菖蒲さんに傷なんて付けたくないからね』
一番の最善策の道が閉じる。
『っなら、どうすれば…』
響の漏れた言葉に天乃は『簡単な話さ』と解決策を提示する。
『僕は菖蒲さんというよりも、君たちに腹が立っているんだ。だからといって、全員に復讐なんてしていたら疲れちゃうから、誰か一人が犠牲になってくれればいいんだ。もちろん、響君が嫌なら一華さんや透子さんでもいいけどね』
天乃は響との会話中も誰かと話をしているらしく、突然に電話を切られた。