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囁き少女のシークレットボイス  作者: うみだぬき
バレタインデー
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179話 ストーカーかお化けか

 ホワイトデーまで残り三日。自分の気持ちをようやく伝えることができることに、響は今か今かと指折り数えていた。


「響さん聞いてますー?もしもーしっ」


 放課後、菖蒲の頼みで美術室に残っていた。

 実は美術部だった菖蒲なのだが、部活はとても緩くほとんど顔を出さなくても良いらしい。

 その代わりに定期的に作品を展示する必要があると、最後の調整の付き添いとして誘われた。


「すまん、考え事してた」

「もぉー、私の悩み話よりも大事なことなんですか?」


 菖蒲は絵の具で手を汚しながら、ジト目で見つめてくる。


「次はちゃんと聞くからもう一回頼む」


 チャプチャプと筆を洗いながら、もう一度口にする。


「最近ですね?買い物に行ったりすると何故か毎回人の気配がするんです。でも、振り返っても誰もいなくて…もしかしたらお化けとかストーカーかもしれなくて怖いんですよぉ」


 自分で言っていて怖くなったのか、しきりに辺りをキョロキョロ見渡す。


「それっていつぐらいからだ?」

「えぇーっと…確か、十二月ぐらいからですかね?ですが、その頃はたまーにという感じだったので、そこまで気にして無かったのですが、最近は頻度が多い気がして…」


 女の子からすれば当然の不安だ。色眼鏡を外したとしても菖蒲は、世間一般的にも可愛い部類だ。

 ストーカーのような人間がいたとしても、不思議では無い。


「それは怖いな。なら、今日からは家まで送るよ」

「さすがにそれは申し訳ない…と、言いたいところですがお願いしてもいいですか?」


 いつもは遠慮がちな菖蒲だが、心身ともに不安なのだろう。


「全然気にするな。それに買い物行くなら、多分最寄りのスーパーだろ?俺も買い物したりするし、一緒に行かないか?」

「ほんとですかっ?っふぅ…相談して良かったですっ」


 菖蒲は悩みが一つ減ったのか、自分のキャンパスに視線を戻す。



「だいたい、ここら辺に来ると気配がするんですっ」


 夕方の五時頃。菖蒲と二人で買い物に来ていた。

 二人並んで歩いては、ストーカーがいたとしたら勘づかれてしまうため、そこそこ距離を取って歩く。


「着いて来てる人いますか?」


 響はポケットに手を突っ込んだまま、菖蒲に犬のスタンプを送る。

 犬のスタンプはNO、猫のスタンプはYESとしての意味を持っている。


「なら、引き続きよろしくお願いしますっ」


 菖蒲はスーパーに着き、しばらく辺りを見張っていたが特にそれらしき人物は見られなかった。


「お嬢ちゃん一人かな?」

「っきゃぁぁ!って響さんじゃないですか!!」


 ちょっとしたイタズラ心で菖蒲に声をかけると、菖蒲からは絶叫と共にカーフキックが飛んできた。


「それっぽい人は居なかったぞ」


 菖蒲は息を整え、キャベツの目利きをしながら深くため息をつく。


「…やっぱり私の勘違いだったんですかね。少し神経質になっていたようですね」


 その後、菖蒲と買い物をし終え、次は二人並んで帰路に着く。



「あれ、今日は道元一人なん?」


 今週は菖蒲が家に迎えに来る日なのだが、時間を過ぎてもやって来なかった。

 電話も何度かしたが、全て不在着信だった。


「今日は多分休みなのかもしれないな。連絡が来ないのは心配だが」


 菖蒲の心配をしていたが、一時間目の終わり頃にチャットが来ていた。


『すみません、体調が優れないので今日は休みます』


 ひとまず連絡があったことに安堵する。



 帰りにお見舞いついでに、フルーツでも持っていこうかとスーパーに寄った。



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