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囁き少女のシークレットボイス  作者: うみだぬき
体育祭と一騒動
10/232

10話 友人?とギャルのコンビネーション

 次の日学校へ向かうと、案の定クラスメイトの響を見る目がいつもとは変わっていた。まるでゲスを見るようで、同じ空間にいることも憚られるような空気だった。しかしグループチャットで一華たちが響の味方をしてくれていたため、直接言ってくるような者はいなかった。菖蒲は今日は休んでおり、ほとんど誰とも喋らない日が過ぎていった。

 そんな響の元に有咲がやってきた。


「響っち元気だしなよー」

「元気出したぞ」

「今日ってこの後そのまま家に帰る感じ?」

「その予定だ」

「ならちょっとお茶してかない?」

「二人で行くのはちょっとな…」

「透子も来るって言ってたよ」

「尚更だ!」

「まぁまぁ、ここはうちが奢ってあげるからさっ」


 ギャルたちとお茶なんて、ハードルが高いことできるはずもないのだが、ギャルの頼みを断るというハードルも飛び越えらるほどの能力が無い響は渋々承諾した。

 玄関に着くと、髪の毛は染めて時間が経ったのか、金と茶のツートーンのプリン状態になっており、しかしそれすらファッションに昇華しているポニテギャルである透子が立っていた。


「お、有咲道元連れてきたんだ」

「響っちがギャルとお茶をしたくてしょうがないって言うから仕方なくね」

「そんなことは一切言ってない!」

「ままっ、ササッと行こっ」


 先に歩いていく透子に聞こえないように響は有咲に今置かれている状況を改めて話す。


「今は源さんの件について色々やらなきゃいけない事があるのにこんなことしてていいのか?」

「まぁ、こういう何気ないお茶会が事件解決に繋がることもあるかもじゃん?」

「ないと思うんだが」

「もー響っちは固すぎ!とりま透子追いかけよ」


 透子を追い、走り出す有咲に仕方なく着いていく。



「うわっこのパフェ可愛い!!透子も写真撮りなよ!」

「あたしはいいよ」

「で、なんでお茶をしに来たのか教えてくれないか?」

「理由を毎回決めてたら楽しくないっしょ!ほら響っち寄って!」

「写真ならパフェを撮ればいいだろ」

「こんな謎メンツでお茶なんて記念に撮らなきゃ一生後悔するよ、透子もそう思うっしょ?」

「思うー」

「えぇ」


 その後も理由を伝えられないまま、お茶会は午後七時まで続いた。



 カフェから出た後、佑馬から電話がかかってきたためギャル二人に一言言ったあと電話に出た。


「あ、響?俺だけど」

「詐欺はやめてくれ」

「スマホの画面にガッツリ名前出てるだろ、そんなことはどうでも良くて!響のカバンと俺のカバン取り違ったぽいんだけど響俺の持ってない?」

「――あ…持ってた、今から返しに行った方がいいか?」

「いや明日でいいや、明日学校来たらホームルームが終わった後に返してくれ」

「ホームルームの後?まぁ分かった」

「じゃそういうことでー」


 そう言うと佑馬は電話を切った。その後ギャルたちと別れ、いつもよりも遅い時間に帰宅した。



 翌日、登校すると相も変わらず響を睨む生徒が大半だったが、昨日とは違い数人が響の元に来ると机を蹴り飛ばした。


「道元お前いい加減にしろよ!」

「いい加減にしろと言われてもなんの事やら」

「しらばっくれるなよ!源さんを恐喝してんだろ?」

「それはどこ情報なんだ」

「笹倉が源さんが欠席する前日の放課後に、道元が源さんを恐喝してるの見たって言ってんだよ!」

「そんなことはしてない」

「じゃあ、アリバイとかあんのかよ?」

「そ、それは無いが…」


 クラスメイトたちの疑念が響の態度によって確信的に変わったのか、今までは黙っていた者も口々にあることないことを響に投げかける。響の元に恐喝していた現場を見たという洋太がやってくる。


「道元君、そろそろ認めなよ?アリバイもなければ、言い訳すらない。つまりそういうことだろ?」

「笹倉…お前が見たって言う証拠もないだろ」

「言い逃れが過ぎるよ道元君。なんなら昨日の七時前に道元君が学校に遅くまで残って、源さんの教科書をゴミ捨て場に捨ててる証拠を収めているしね」


 そう言うと洋太は、ゴミ捨て場に教科書を捨てている人物が映っている動画をみんなに見せた。顔は映っていなかったが、拡大すると靴には『道元響』とハッキリ書いてあった。その後動画に映っている人物が居なくなった後、ゴミ捨て場の中を映した動画には確かに菖蒲の教科書が捨ててあった。


 響は有り得ない状況に言葉が出なかった。


「黙る気持ちも分かるさ、でも君が学校に残っていたことは吹奏楽部の人が証明してくれるよ。そうだよね?」


 そう言うとクラスの吹奏楽部が口を開く。


「昨日の放課後に楽器をする場所を探して教室に入ったんだけど、響君が自分の席でカバンを枕にして寝ていたの」

「その後起こすのも悪いから、別の場所で六時半頃まで練習して、帰りに教室に寄ったらまだ道元君がいたの、その後は分からないけどね」

「聞いたかい?道元君には学校にいたという証拠もある、もう認めたらどうだい?」


 その言葉を聞くと洋太は、もう言い逃れ出来ないぞとでも言いたげな顔で響の顔を見る。すると突然、佑馬とその友人が近づいてくる。


「吹奏楽部が見たって言う響は多分俺の事だぞ?昨日、放課後にあまりにも眠いから日当たりが良い響の席で寝てたんだよ」

「でも私たちが見た時は顔は見えなかったけどカバンには道元君の名前が書いてあったよ?」

「それは響が俺のカバンを持って帰っちゃったから仕方なく使ってたんだ。響、カバンみんなに見してみ?」


 佑馬に言われるようにカバンを見せると確かに『夏目佑馬』の文字が書いてあった。それを見た洋太は再び口を開く。


「吹奏楽部が見たのが夏目さんだとしても、ゴミ捨て場に捨ててるのは動画に映ってるじゃないか!」


 すると今度は透子がコホンと喉を鳴らし注目を集める。


「教科書捨ててる時間は、道元私たちとカフェにいたよ?」

「カ、カフェ?馬鹿も休み休み言えよ?しっかり動画に映ってるんだぞ?」

「うちらの投稿見てみ?数分ごとに写真あげてるからその時間に道元が学校にいるのは有り得ないんだけど?」


 わざわざ昨日、お茶会をした理由がわかった響は二人の方を見ると、ウィンクをしながら口パクで『次は奢って』と口を動かしていた。





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