第七話「日本本土初空襲」
【1943年4月・大豚鬼帝国本土】
「旅順はどうなったブヒか?」
大豚鬼帝国皇帝・豚鬼が、執務室で陸軍大臣に低く尋ねた。太い指が机を叩き、鋭い目が大臣を射抜く。
「り…旅順の攻略は失敗し、公将軍も戦死なされたとのことです…」
大臣が震える声で答えると、豚鬼の拳がわなわなと震え始めた。
「何だとブヒ…」
一瞬の静寂の後、豚鬼が怒号を上げた。
「貴様ら陸軍は何をやっていたブヒか!この無能共がブヒ!」
「ひぃ!?」
大臣が後ずさると、豚鬼がさらに声を荒げた。
「お前や公将軍が腑抜けた指揮を取るから失敗したんだブヒ!」
「で、ですが…あの要塞の戦力は驚異的でした!航空機を中心とする兵力増強が必要かと!」
大臣が必死に弁明すると、豚鬼は黙り込んだ。
「確かにそうブヒね…」
しばらく考え込んだ後、豚鬼が目を光らせて言った。
「では、陸軍大臣よ。貴様に新たなる大作戦を与えるブヒ!」
「はっ!」
大臣が姿勢を正すと、豚鬼がニヤリと笑った。
「ソビエトから輸入した大型爆撃機『猪爆』を用い、日本本土を爆撃するブヒ!」
『猪爆』とは、ソビエト製戦略爆撃機Pe-8を豚鬼軍が改良したもので、重厚な装甲と爆弾搭載量を誇る。
「この『猪爆』の力なら容易いことですな…」
大臣が頷くと、豚鬼が鋭く言い放った。
「必ず成功させるブヒよ!これに失敗すれば、大豚鬼帝国の未来はないブヒ!」
「はっ!必ず日本軍に鉄槌を下してご覧に入れます!」
大臣が意気揚々と退出すると、豚鬼は満足げに頷いた。
「期待しているブヒよ。」
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【1943年9月・豚鬼陸軍飛行場】
「発進用意!目標、日本本土!」
豚鬼陸軍飛行場では、『猪爆』が発進準備を整えていた。エンジンの轟音が響き、整備員が慌ただしく動き回る。
「エンジン始動!」
点火とともに『猪爆』の巨体が震え、プロペラが唸りを上げた。やがて、機体が滑走路を離れ、大空へと舞い上がる。
「高度8000まで上昇後、日本まで一直線に向かえ!」
「了解!」
豚鬼軍『猪爆』隊は一路、日本本土を目指した。
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【日本本土】
「空襲警報発令!空襲警報発令!南西より日本本土へ近付く敵編隊を確認!」
突如、けたたましい警報が日本本土に鳴り響いた。防空司令部では、将校が慌てて状況を確認する。
「出せる戦闘機は!?」
「二式単座戦『鍾馗』が20機出せます!」
「よし!直ちに出撃せよ!」
「はっ!」
「エンジン回せ!」
20機の『鍾馗』がプロペラを回転させ、次々と滑走路を離陸。高度8500mまで上昇すると、編隊を組む『猪爆』隊を発見し、即座に攻撃を開始した。
「全機残らず叩き落とせ!」
「了解!」
『鍾馗』の12.7mm機銃が火を噴き、『猪爆』に次々と命中。一機がエンジンから火を噴き、墜落していく。
「よし、このまま全機で一網打尽にしてやれ!」
『鍾馗』が猛攻をかけ、たちまち十数機の『猪爆』が撃墜され、爆発と黒煙が空を覆った。
『猪爆』隊のパイロットたちは焦り始めた。
「馬鹿な!?日本の戦闘機はこんなにも性能が上がっているのか!?」
「狼狽えるな!敵は少数だ!落ち着いて迎撃しろ!」
「了解!」
だが、『鍾馗』の集中攻撃に耐えきれず、『猪爆』は一機、また一機と墜ちていき、ついに最後の一機が撃墜された。
「敵編隊の全滅を確認!」
「よし!全機帰還せよ!」
迎撃隊のパイロットたちは操縦桿を傾け、基地へ帰投した。
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【大豚鬼帝国本土】
「何!?『猪爆』隊が全滅したブヒか!?」
執務室で報告を受けた豚鬼が、怒りで身を震わせた。
「はっ…左様でございます。」
空軍大臣が恐る恐る答えると、豚鬼が目を血走らせて叫んだ。
「『猪爆』隊のパイロットは何をやっていたブヒか!?」
「それが…敵の新型戦闘機により、奮闘虚しく全滅したとのことです。」
「くっ…なんたる事だブヒ!」
豚鬼が拳を握りしめ、机を叩くと、空軍大臣が震え上がった。
「この無能共がブヒ!貴様らは『猪爆』隊に何を教育していたブヒか!」
「ひっ…ひぃぃぃっ!?」
「もういいブヒ!この大豚鬼帝国に貴様らのような無能は要らんブヒ!」
「まっ…待ってください!どうか命だけは!」
空軍大臣が土下座して命乞いするが、豚鬼は冷たく言い放った。
「ならんブヒ!貴様らのような無能はこの帝国に必要ないブヒ!連れて行けブヒ!」
「そっ…そんな!」
衛兵に引きずられ、空軍大臣が連行されると、軍の再編成が決定。新たに陸海軍総司令官として、海軍出身の拳将軍が就任した。
拳が豚鬼に進言する。
「豚鬼皇帝閣下、我々が日本に勝つには、フィリピンの奪還と日本本土への空襲が不可欠かと。」
「なるほど…確かにフィリピンを取れば、日本本土は袋の鼠ブヒね…」
「そこでご提案です。我々はフィリピンのレイテ島奪還作戦と同時に、日本本土への大規模空襲を行います。」
豚鬼が腕を組み、考え込んだ。
「確かにその作戦が成功すれば、日本本土侵攻は容易になるブヒね。だが、日本の航空兵力は侮れないと聞くブヒ。」
拳が自信満々に答えた。
「ご安心ください陛下。今度の空襲には、ソビエト製Yak-9を改良した新型護衛戦闘機『征空』を護衛に付けます。さらに『猪爆』には新たな技術を採用しております…」
「なるほど…それなら安心ブヒな。よし、その作戦を許可するブヒ!」
こうして大豚鬼帝国は、日本への大規模空襲を決定し、決戦の準備を着々と進めた。