第六話「第二次旅順攻略作戦」後編
【空母機動部隊】
「提督、要塞より緊急入電です。」
空母艦橋で、通信士が緊張した声で報告した。
「内容は?」
南雲が鋭く問うと、通信士が電文を読み上げた。
「はっ…『我レ既ニ抵抗スル戦闘能力無シ、至急海軍航空隊ノ支援ヲ求ム』とのことです。」
「何だと!?それは本当か!?」
「はい、間違いありません。」
南雲が拳を握り、即座に命令を下した。
「直ちに航空隊の発艦準備に移れ!」
「はっ!了解しました!」
海軍は支援のため、九七艦攻144機、九九艦爆135機、零戦60機を出撃させることを決定。甲板では轟音が響き、艦載機が次々と発艦した。
「敵巨大戦車は要塞に接近中!艦載機は準備完了次第発艦せよ!」
「了解!」
「全機発艦完了!これより敵巨大戦車の迎撃に向かう!」
攻撃隊が旅順へ急行する中、空母艦橋は緊迫した空気に包まれた。
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【旅順要塞・最終防衛線】
要塞では、15cm砲や高射砲を駆使して徹底抗戦が続いていた。
「要塞の火力を奴に集中させろ!」
司令官の声が響くが、圧倒的な装甲を持つ『亜寓』にはその攻撃すら脅威にならず、主砲が再び動き出すと、砲撃が要塞を襲った。
「敵巨大戦車、またも攻撃を開始!後数十分で最終防衛線に到達します!」
見張り員の叫びに、司令官が歯噛みして命令を下した。
「防衛線に爆薬を仕掛け、奴が通過次第爆破しろ!何としても要塞に近づけるな!」
「はっ!」
工兵隊が最終防衛線に急行し、大急ぎで爆薬を設置した。
「急げ!奴が来る前に終わらせろ!」
設置を終えた工兵隊長が無線で報告する。
「爆薬の設置を完了しました!」
「よし…奴が防衛線に到着するまで、塹壕で待機せよ!」
「了解!」
やがて、地響きとともに『亜寓』が姿を現した。
「奴が来たぞ!」
「爆薬に点火しろ!」
『亜寓』が防衛線に到達した瞬間、爆薬が一斉に起爆。轟音とともに炎と煙に包まれた『亜寓』が動きを止めた。
「やったか!?」
だが、次の瞬間、主砲が再び動き出し、砲撃が再開された。
「馬鹿な!?奴はまだ動けるのか!?」
「小隊長!これ以上ここにいるのは危険です!退避を!」
「全員退避だ!急げ!」
「はっ!」
工兵隊が塹壕から撤退する中、燃え盛る『亜寓』が要塞へ迫り続けた。
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【陸上戦艦『亜寓』・艦内】
「まだだ…まだ倒れん!」
公将軍は燃え盛る艦橋内で、血走った目で指揮を執っていた。
「砲撃を続けろ!道連れにしてでも要塞を陥落させる!」
「り…了解!」
乗組員が震える声で応じ、主砲が火を噴く。その時、防空指揮所から報告が飛び込んできた。
「上空より敵の大編隊が接近中!数およそ300!」
「何だと!?」
公が顔を上げると、窓の外に無数の機影が迫っていた。
「対空戦闘用意!」
「対空戦闘!敵航空機を近づけさせるな!」
「了解!」
『亜寓』の対空砲が火を噴き、日本軍機を迎え撃つが、約300機の大編隊を前に次第に押されていく。
「敵機直上!急降下!」
「何としてでも撃ち落とせ!」
公が叫ぶが、時すでに遅し。九九艦爆から投下された250キロ爆弾が次々と命中した。
「効かぬ!効かぬわ!」
上部装甲は厚く、爆弾ではビクともしないが、対空砲が次々と破壊されていく。そしてさらなる危機が訪れた。
「敵機、更に爆弾を投下!」
九七艦攻から放たれた800キロ徹甲爆弾が装甲を貫き、燃料タンクで爆発。『亜寓』は猛火に包まれた。
「おのれ…!これで勝ったと思うなよ…!我が大豚鬼帝国は不滅だ!」
公が最後の叫びを上げると、乗組員が応じた。
「大豚鬼帝国に栄光あれ!」
次の瞬間、弾薬庫に火が回り、『亜寓』は大爆発を起こして消滅した。
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【旅順要塞司令部】
「敵巨大戦車消滅!繰り返す、敵巨大戦車消滅!」
見張り員の声に、要塞司令部が歓声に沸いた。総司令官を失った豚鬼陸軍は混乱に陥り、降伏を余儀なくされた。
こうして旅順要塞の防衛は成功し、戦いは日本軍の勝利に終わった。しかし、この戦いで多くの将兵が命を落とし、勝利の代償は決して小さくなかった。